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自分を慕ってくれる人は大事だなと思います

「考えすぎッスよ、多分。自由じゃないって考えにとらわれるのも、自由じゃないンで。ムズいんスよ、自由って。ウチもまぁ完全に自由かっていうと、そうでもないンで。やっぱアンちゃんには頭が上がらないっていうか?」



カノンを励まそうという自分の意図に反して落ち込むカノンを見てリサは、カノンの機嫌を取り戻そうと彼女なりのフォローを入れる。



「私……考えてみれば、色々なことから自由になるために、悪魔になったんだと思います。でも私、何も変われてなくて……今の、これが本当の私なんだって思うと……私って、何なんですかね、って……」



リサの意志に反して、カノンの思考は自由から遠ざかっていた。



「貴方は……カノンちゃんは、私達の仲間になったのよね」



”変化”の能力によって”調律”が付与されたリサの言葉は、雪解けレーヴァテイン一同にも”聞こえ”るようになっていた。会話の内容をメモしていたルーティは、カノンの精神がどす黒くなっていくのをヘル・シンパシー・チェーンの力で“見”て、黙っていられず口を挟む。



「そう、ですね」

「私達は孤児院の、ゼノビア王国のやり方に納得できなくて、自由を求めて脱出をしたパーティだということは、覚えてくれているかしら」

「あそこはヒドい場所だったの。何から何までジョセフがぜーんぶ管理してて、逆らったらとてもヒトがすることとは思えないような罰を受けてきたの」

「あんまり、思い出したくありませんけどねぇ」



デイジー、ルーティ、リリカの三人は孤児院に居た当時を想起しながら、真剣な表情になる。



「もう一度、言わせてもらうわ。私達は自由のために、力を合わせているの。その旅にカノンちゃんが加わって、更に自由に行動できる選択肢が増えたことは私にとって、私達の自由にとって、かけがえのない物なのよ」

「ルーティさん、達の……?」



カノンの表情が、少しずつ明るくなっていく。



「リーダーとしても言わせてもらうの。わたしは相手を動けなくする魔法なんて使えないし、その場に合わせて便利な魔法を思いついて使ったりなんてできないの。初めてカノンの曲を聴いたときから、これはカノンにしかできないことだってすぐにわかったの」

「確かに、カノンちゃんのできることってぇ、吟遊詩人としての範囲を超えてますよねぇ」

「みんなにはまだ説明していなかったけど、カノンちゃんにも色々あるみたいだから。音を使って様々な魔法を繰り出せるのも、カノンちゃんが……おそらく、そこのレヴィアタンと同族だからということみたい」



ルーティは二人の会話の内容を考察したメモを眺めながら、一行にそう説明する。メモには、以下のように書かれていた。


“アンちゃん=死神。カノンにとってのミケと同様?

レヴィアタン・リサ=悪魔。死神と契約している。カノンと同様?

よってカノンもレヴィアタンと同様の、人類を脅かしかねないポテンシャルがある?”


ルーティはリサとカノンの二人が会話している内容から、悪魔の世界には死神と契約して強力な個体が生まれるというシステムがあるらしいことを推測する。



「や、リサさんと一緒にするのは、それはどうなんですかね……悪魔としての格が違いすぎるというか、そんな感じがします」

「そうッスかね……カノンちゃんなら、ウチよりデケェ悪魔になれると思うンすけどね」

「いやいやいや、物理的に無理ですって……それに、リサさんの器の大きさに対して私、まだまだ子どもだと思いますし」



カノンは先程のステータスと自分のものを比較し、リサには一生勝てないだろうなと踏んでいた。もっとも、同じ悪魔という境遇やリサの敵意の無さを考慮すると、一生まともに戦うこともないだろうなとも思っていた。



「今の聞いて思ったンすけど、やっぱカノンちゃんは悪魔の才能あるンスよ。こんなに人間に慕われて、同時にアタシらみたいな悪魔や魔物にリスペクトされるヤツって、聞いたこと無いッスから……人間にも魔物にも馴染める悪魔なんて、それこそ最強じゃないスか」

「私の、才能?」

「さっきは失礼なこと言っちゃったスね、ごめんなさい。ヒトの思ってることを全部聞いて、それに合わせて話すなんてこと、ウチには無理ッスもん。アタマおかしくなりそうで」

「あ、それは私も結構おかしくなりそうな時ありますね。男のヒトの声は意識的に遮るようにしてて……」



カノンはタカシと戦って以来、自分の感情がコントロールできるよう男性的な欲望にまみれた”音”を意図的に遮断するようにしていた。あまりにも危険な音が聞こえた時はその音量の大きさから気付くことが出来るので、カノンとしては身を守るにはこれで大丈夫だろうと自分の聴覚を信じていた。



「ハハ、そんなんでいいンすよ、人生。聞きたくないことは聞かなくていいし、やりたくないことはやらなくていいンす」

「そうですよね!もうあんな”音”、二度と聞きたくなくて。でも、みんなが傷つくところは見たくないので、いざっていう時はみんなを守れるように、リサさんみたいに強い悪魔になりたいなって思って、ます!」



カノンはリサのような友達を守ることの出来る悪魔になるという一つの大きな目標が見えたことで、やる気を表明するように語気を強める。



「んー、良いダチに恵まれてるしさ。強くなりたかったら、このコらにも頼ったほうが良いと思うッス……特にそこでぽけーっと海眺めてるコ、フェーベちゃん?あのコと秘密の特訓!とかしたらソートーヤベェ悪魔になれるンじゃないスか」

「あはは……そうかも、しれませんね」




カノンは自分がピアノの練習やライブ以外で修行する姿など想像もしていなかった。デイジーのようにボロボロになりながら強さを勝ち取っていく人に憧れはするけれども、自身に至近距離で剣を向けられたら即座にギブアップをする気がしているので、どこから始めればいいものかとリサから視線をそらしながら考えていた。



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