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この力も捨てたもんじゃないと思います

「へぇ~、さっきみたいに歌とそのキーボードで何かやる感じなんスね。やろうと思えばなんでも出来そうスね、ソレ……フフ〜」


そんなカノンの心境を察してか、リサはカノンの方にぐっと距離を詰め、デイジーとカノン二人の”銀輪”を解除しながら、緊張をほぐそうとしていた。


「そうなんですよ、はい。ミケさんは、精神を自在に操る、みたいなこと言ってたんですけど、実際やってみると、最初は全然できないなってなって、騙された~って思いました。だけど、だんだん音楽に合わせて、自分の思い通りになるようになってきて。最近では楽しくなってきちゃってます!」

「ふむふむ、ふんふん。何が起きるかワカんなくて、面白そうッスね!じゃあ今回も、楽しみに待ってるッス」



リサはギザギザの歯を見せてニィと笑った。カノンはキーボードの音をミュートにしながら、感覚でL.I.S.Aの使われた楽曲、『Peace Cake』をプリセットに登録する。リズム隊さえまとまっていれば簡単な曲であったので、高難易度の楽曲を日々弾きこなしているカノンにとって即興でプリセットに登録することは容易であった。



「はい、がんばります……あのっ!この曲、音が少ない上に、リズムが取りづらくて。よければ、皆さんに手拍子をお願いしたいんですけど……これくらいの、テンポで!くらっぴゅあはんず!」



そう言うとカノンは手を上に掲げ、パンパンとリズミカルに手を叩き始める。カノンの手によってプリセットが再生され、オクターブ奏法の簡単なベースラインに、少しのコードだけで展開する単調な曲が始まった。



「お、『Peace Cake』スか、いいっスね。ッハイ!ッハイ!ッハイ!ッハイ!」


リサは自分の知っている曲だとわかると、クラブで曲が流されている時と同じように手を挙げて、カノンと同じように手を叩き始めた。


「これ、私達もやる流れなのかしら……」


カノンをアグリッピナ広場で初めて見た時、腕を組みながら心の中でカノンのライブを応援していたルーティは、困惑しながら膝元でパン、パンと手を叩く。


「なんだかよくわからないけど、楽しそうなの!」


対照的にデイジーは、リサが知らない言語でノリノリになっているのを真似して、ハイ、ハイと腕をめいっぱい使いながら手を叩き、合いの手を入れていた。


「せんぱいがやるならぁ、あたしもぉ……」


リリカは三人につられるまま、機械的な動きで手をパンパンと叩いた。



「ありがとうございます!それではいきますよ、『peace cake』!」


カノンはそれぞれの反応を楽しみながら、曲の開始を宣言する。


「……」


フェーベはオーケストラでも鑑賞するかのように、その場にぼう……と佇んでいた。カノンは今この地蔵となっているフェーベもノリノリにしてやろうという決意のもと、リズミカルでメロディのないラップ調の歌詞を紡いでいく。



「黒い空に止まらない争い 平和な対話にケーキはいかが?

 私にとって簡単な語らい 果たして今日はイチゴかスイカ?」



カノンは平和のことを歌っているようでそうでもないような、意味がありそうでなさそうな歌詞を紡いでいく。電子音声を用いたラップ調の滑舌とL.I.S.A.の声のかわいさを両立できるよう、あえて中身のない歌詞にしているという作曲者の意図をくんだカノンは、語尾を伸ばしてあざとくかわいさアピールをしていた。



「これって……何を言っているのかは、よくわからないけど」

「聞いてると、楽しくなってくるの!」



ヒップホップ調の音楽に触れたことのない一同は、とまどいながらもカノンの紡ぐリズミカルな歌詞に誘われ、叩く手に力がこもっていく。



「すげェドープじゃないスか。これ、リアルにウチがやろうとしても雰囲気に合わないツゥか、ハズくてなんか違ったンスけど、カノンちゃんがやるとサマになってるッスね……お、なんか不思議な感じになってきたッス」



リサはカノンの演奏・歌唱する『Peace Cake』を褒め殺しにする。カノンの全身を使ったテンポの良い表現に魅了されながらもリサは、自分の姿がだんだんと小さくなり、尾ヒレや背ヒレといった魚人的な特徴が失われていくのを知覚していた。



「女王になって戦争止めて 今こそケンカだ平和のために

 私の武器はクリームスイーツ イカれた頭にスイーツトリップ!

オーバーキルなオーバードーズ 一騎当千もピースオブケイク!」



カノンはチェケラ!というようなポーズを取り、結局平和とはなんだったのかという締め方をした歌詞でフェードアウトしていく曲が終わるまで、リサの方に視線を向けていく。だんだんとリサの体は小さくなり、ルーティよりも10cm程度高かった身長はカノンと同程度の高さになった。



「おォ、目線の高さがガキの頃くらいになってるスね!ちょっと、”水鏡”で見た目確認していいスか?……おお、コレコレ!たは、”変化”、スゲェすね!」



リサはくるりと回転して、自分の作り出した”水鏡”に姿を映し出す。薄桃色の髪に目にはハートがあしらわれた眼帯をつけ、ロリータ系のドレスにうさぎがモチーフになったソックスを履いた、L.I.S.A.の特徴的なデザインが360°そのまま再現されていた。



カノンは照れ笑いを浮かべながら、リサのその嬉しそうな表情と、「スゲェ」という言葉から、タカシという気に入らない人から奪った”変化”という能力も案外捨てたものではないと思っていた。


慣れないこと(ラップ韻律)をしたので少し投稿が遅れました。今週中には次話投稿します。

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