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なんだか旅行みたいで楽しみだなって思います

「ミュラーゲントゥム大森林といえば、フォレンティーナ帝国中央ギルドから開拓のクエストが数十年出され続けているにも関わらず、果てが見えない未開の森だと聞いているわ。行くとしたら、ダンジョンのそれと同じくらいの準備が必要なんじゃないかしら。今すぐにっていうのは、ちょっと。それに、リリカを置いてきちゃったわ。回復役が不在のまま長旅を強行するのは、自殺行為じゃないかしら」

ルーティはここからミュラーゲントゥム大森林までの距離と行軍にかかる装備とを計算し、慎重に動くよう提案をする。

「そ、それもそうだな、すまない」

クロッシュはルーティの説得に応じ、目を元の糸のような形に細めてしゅんとした。

「うー……未開の地って、なんだかワクワクするの!わたしは行ってみたいなって思うの」



雪解けレーヴァテイン一同がぽかんとしたり下を向いて考えていたりする中、デイジーだけは目をキラキラさせながら、ミュラーゲントゥム大森林というのがどんな場所であるのか想像を膨らませていた。



「そうだなぁ……私も、行ったほうがいいんじゃないかなって……そう、思う。なんとなく、だけど……」

フェーベもデイジーに乗っかり、賛成に一票を投じた。

「賛成多数、ね……カノンちゃんはどう思う?」

「たぶん、スーピアさんって私と同じようなスキルを使えると思うので、会って話してみたいですっ!今だったら、ひろーい森の中でもスーピアさんの楽器の音を聞き取って、探せる自信ありますよ!」

カノンは"調律"スキルLVが10になってから、聴覚に神経を集中させたことがない。勝手に”聞こえ”てくる情報で人の感情や魔物の行動などのほとんどが判断できてしまうからである。

「ふふっ、頼もしいわね。クロさん、一旦フォルトゥナに戻って準備をしたら、すぐにミュラーゲントゥム大森林に向かおうと思うわ。案内役は、お任せしていいかしら」

「ああ、ミュラーゲントゥムには何度か行ったことがあるからな。馬車の乗り継ぎも任せてくれ」

クロッシュは元の仙人然とした雰囲気に戻り、ニコニコ顔で言った。

「吾輩は一足先に翼で飛び、ミュラーゲントゥム大森林に戻るとしよう。悔しいが、道中でセルゲイに合った場合は……逃走するしかないだろう」

「セルゲイって人、やっぱりそう簡単には倒せなさそうですよね。私、どうやって倒すか、頑張って考えます」

「ああ、よろしく頼む。吾輩の力が必要になった時は、いつでも呼んでくれ」



ギリアムとはその場で別れ、行きよりは大分ゆるやかなスピードで、四時間ほどかけて馬車を走らせ、フォルトゥナへと向かった。





一行はフォルトゥナに到着すると、ルーティの指示のもと、道中で必要な魔物避けの魔道具や食料などの買うべきものを手分けして買い揃えていった。



一通り物を揃えた一行は、魔道具で”見た”限りだと未だに服を物色しているらしいリリカの所へ向かった。



「こんにちは!あの、私達色々あって、ここからけっこう南にあるミュラーゲントゥムっていうところに行くらしいです!」



リリカの花が踊っているような特徴のある”音”を聞いたカノンは、いち早くリリカの元へ駆けつけた。襟元や胸元、背中の細部に至るまでフリルでデコレーションされているゴスロリ風の服を着たリリカは、以前にも増して少女的であった。



「あぁ~カノンちゃん、ちょうどよかった。こっちの服とこっちの服、どっちがルーティせんぱいに似合いますかねぇ?大人な雰囲気を表現するには、セクシー系でいくか、ゆる系でいくかで悩んでてぇ」

「左の、ゆる系……?がいいんじゃないですかね!」

「私もそっちの方が好みね。ところでリリカ、あと1ティモもしたらここを出てミュラーゲントゥムへ向かうことにしたから、早くお会計を済ませましょう」

「わかりましたぁ。みんなの分はもう決めてありますから、行ってきますぅ」



リリカはお会計をすませると、持っていた大きめのショルダーバッグに買った服を丁寧に詰め込んでいく。それが済むまでの間、一行は買ったものを再度確認し、漏れがないかどうかをチェックした。



「干し肉に、乾燥野菜に、魔道具に……必要なものは全て揃っていそうね」

「なんだか新しい冒険が始まりそうで、ワクワクしますね!」



「橘奏乃子」は修学旅行に行くこともなく自分の人生を終えてしまったので、仲の良い友だちとの旅行に対する並々ならぬ憧れの気持ちがあった。カノンとしての人生では新しい場所に行くたびに、楽しみな気持ちが不安を押しのけていた。フォルトゥナ周辺は一面灰色の景色が広がっているため、期待していたほどの旅ではなかった。ミュラーゲントゥムはクロッシュから聞いた話によれば自然豊かな景色が人々を飽きさせないと言われているらしく、カノンはそこで流れる”音”を想像するだけでも曲を作ることができそうだなと思っていた。



「カノンもそう思うの?未開拓の森にはでっかい魔物がうじゃうじゃ居そうだし、楽しみなの!」

「はは、でっかいのに会ったら、私は頑張って応援しますね」



カノンは戦闘経験を積んでレベルを上げるという考えをまるでしていなかった。ここはゲームの世界ではないので、自分の30しかないHPでは大型の魔物の攻撃などかすったら即死、コンティニューは無いだろうとカノンは考えているので、積極的に魔物とは戦いたくないというのがカノンの本心であった。”霧”を完全に習得することで魔物に気づかれることなく、”広野を渡る風”で自分の移動速度を上げて相手の流れ弾をかわしながら、”ゴリウォーグのケークウォーク”で相手を狂わせて行動不能にする……というのが自分に合った戦闘スタイルだろうな、とカノンは考えていたが、これからの人生でそれを使うのはセルゲイと戦うときだけにしたいなとカノンは思っていた。カノンは前回の人生よりもずっと、生に固執していた。



「みなさぁん、お待たせしましたぁ。フェーベさんの家に着いてぇ、買ってきたこれに着替えたらミュラー…ええ、なんでしたっけぇ、そこに向かいましょう」

「リリカさんのセンスは私とっても好きなので、今回のコーディネートも楽しみにしてます!」

「そろそろデイジーせんぱいが新しいダンジョンに行きたいって言うかなって思ったのでぇ、今回は動きやすそうなのを選んできましたぁ。期待していいですよぉ」

「わぁ、そうなんですねっ!」


カノンは先程買ったらしいリリカが着ている服はスカートの部分にフリルが何重にも重なっているので、全員がこのようだと普通に動きづらそうだなと思っていた。なんともいえない表情になりそうだったので、満面の笑顔でごまかしていた。


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