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変わったデザインだけどセンスがいいぬいぐるみだなって思います

翌朝、カノンとルーティの二人は8時に起きて食事をすませると、「ベティの魔道具店」の開店時間である10時まで今日演奏する予定である曲を練習することにした。



「…うん、完璧、だと思います!ルーティさん、昨日よりうんと上達してますね!」

「ありがとう、カノンちゃん。楽譜を見た時はどうなることかと思ったけれど、今はクロさんと合わせるのが楽しみになってきたわ」

「そうですね、クロさんも気分次第でアレンジとか入れてくるかもしれませんし、私達もうまくノリたいかなって思います。……あ、そろそろ10ティモになりそうなので、『ベティの魔道具店』に行きましょう」



カノンは宿に預けていたお金を下ろして、お気に入りのポーチに50000ドゥカを放り込むと、「ベティの魔道具店」へと通じる怪しげな裏通りへ向かっていく。



「その楽器で時間が確認できるのね。……それ、個人の情報も見れるみたいだし、若干怖くもあるんだけど」

ルーティはタカシと戦闘したときに見た、カノンのキーボードの画面を思い出す。

「やっぱり、そう思いますよね。人のことが全部数字で表示されるのって、たしかにちょっと怖いです。なんか失礼かなって思って、あんまり『ステータス』は開かないことにしてるんです。その、”聞こえ”ることだけで大体どんな人かわかりますし」

カノンは「血肉の宴」のマスターことシリウスのステータスを見たとき、見てはいけないものを見てしまった感じに襲われていた。その後はパーティーメンバーを決めるなど、大切なとき以外は使わないことにしていた。

「そうね、それがいいと思うわ。軽はずみに人の秘密を見るなんて、趣味が悪いもの」

「それもそうですね!自分の伸びていくステータスを見るのは、楽しいんですけど……あ、寝てる間にMP10000超えてました!死神になったら、どれくらい強くなるんだろうなあ」

「えむ、ぴー……?って何なのかしら。聞き覚えがないけど」

「えっと、魔力を数字で表したものです。デイジーさんは、今だと30000を超えるくらいですね!初めて見たとき、びっくりしちゃいました」

「魔力を数字で、ね…自分の魔力がどれくらいなのかか、具体的な程度を知っちゃうと自分の限界が見えてきちゃいそうで怖いわ。聞いた話によると、それでトラブルが起きたらしいから」

「うーん、MPは頑張れば伸びたりしたんですけど……数字で表すって、そんなに怖いものなんですかね」

「昔、ギルドでは魔力の量を水晶を使って測定していたらしいのよ。その頃はギルドで登録を済ませた後、自分の魔力の低さに絶望して一回もクエストを受けずに引退した、あるいはかつての仲間から引退させられた冒険者が多かったと聞くわ。冒険者の質は魔力だけで決まらないと、私は思うんだけどね」

「へ~…数字で示されるとわかりやすくていいなって思ってたんですけど、そんなこともあるんですね」

「ええ。数字は便利で、残酷なものよ──」



会話をしながらベティの魔道具店に入店したカノンとルーティの二人は、前に来たときにはなかった、大きな箱があるのに気付いた。



「おじゃましま~す。この箱、どうしたんですか?」

「なんだ、あんたらかい。勇者を倒して莫大な金を貰ったやつらにゃ、縁のない中身だよ」

「へぇ~……ちょっと見てみますね」



カノンが中を覗いてみると、古びた巻物や安っぽい木の杖などが、子供のおもちゃ箱のような乱雑さで詰め込まれていた。



「わぁ、なんだか漁ってるだけで楽しいですね、これ。ふん、ふん……あ、これ!これ、かわいくないですか、ルーティさん」

カノンは使い古してボロボロになった、犬のぬいぐるみのような物をその中からピックアップしてルーティに見せた。頭には五寸釘のようなものが刺さっており、パンクな見た目をしていた。

「けほ、ちょっとほこりっぽいわね、それ…でも、何らかの魔法的作用はあるようね」

「これ、いい感じに魔力の”音”が聞こえますよ!おばあさん、これ売ってくれますか?」

「なんだい、勇者を倒した吟遊詩人がそんなもんをお求めかい?その箱の中身は在庫一掃のためのもんなんだがね、一律10ドゥカだよ」

「え、安いですね!これ、とってもかわいいので、買いたいです!」

「へぇ、そうかい。こいつぁ魔法を溜め込んで放つだけの簡単な魔道具だが、強力なモンを入れると簡単に壊れちまうぞえ。デイジーと言ったかい、あいつの魔法を入れようもんなら、こいつが100回は壊れるぞい」

「私の魔法、あれほどは魔力を使わないので、大丈夫かなって思います!」



カノンは食い気味にぬいぐるみをベティの元へ持っていくと、支払いをすませた。



「これ、おばあさんが作ったんですよね!いいセンスだと思います!大事に使いますね」

「お、おう。毎度ありぃ…」

困惑気味に言うおばあさんの声には、最初カノンがおばあさんにクォルの穂を売ったときのような、海風の吹くような明るい”音”が乗せられていた。



こうしてカノンとルーティの二人は買い物をすませると、アグリッピナ広場へ向かった。

道中でカノンはぬいぐるみのほこりをぱふぱふと払うと、きらきらした目でそれを見つめ、きゅっと抱きしめた。足取りは軽く、カノンとしては久しぶりにスキップをしていた。


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