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他の国と比べるとやっぱりここはきれいな街だなあと思います

「目を閉じてください。かなりの規模の空間を歪めるので、直視すれば三日は立てません」

アテーナが呪文のようなものを唱えると、ルーティとカノンの二人は柔らかな光に包まれる。

「そう言われると、なんだかちょっと怖いですね…ルーティさん、手をつないでくれませんか?」

「ええ。私もちょっと、怖くなってきたから…助かるわ」

二人は手を繋ぎ、転移の衝撃に備える。二人を包む光は次第に強烈になり、やがて目を閉じていても眩しいと感じるものになると…震度6強ほど地震が起きたようなグラグラと揺れる感覚とともに、5秒ほど、二人を包み込むような激しい風を感じる。風が収まると光も弱くなってきたので、目を開けると、先程までとは違う景色が広がっていた。地下室のような所であるのはアテーナとフェーベの家と変わらないのだが、部屋の隅に龍をかたどったガラス細工があった。それは「ブルネルスキの別荘」の廊下や部屋、そこかしこでよく見かけたものであったことから、カノンはここがネプテュヌス共和国のブルネルスキの別荘であることにすぐ気付いた。





「カノンちゃん見て、ここ…『ブルネルスキの別荘 地下転移魔法陣』ってはっきり書いてあるわ。どうやら、転移に成功したようね」

魔法陣の外に看板があり、そこにある文字はそう”聞こえ”てきた。文字はよく耳を傾けないと聞こえてこないし、なんだか神経を使うので、カノンはこの世界の文字にあまり関心がなかった。勉強するよりも”聞いた”方が早いので、文字の読み書きを学ぼうとも思っていなかった。

「はい。なんだか、ちょっと怖かったですけど、ぶわーってすごい速さでワープして、楽しかったです!魔法陣から聞こえる音も、なんだか整ってて、いい感じでした」

カノンが目を閉じている間は、スキルもありいっそう聴覚が鋭くなる。魔法陣から流れる音が、アリネスの言っていた”海に激流をもたらすドラゴン”そのもののように聞こえたため、カノンは一瞬のことにとても興奮していた。

「そう…?私は結構酔っちゃったかもしれないわね。頭がくらくらしちゃって…もうちょっと手を繋いだままでも構わないかしら」

「はい!なんか安心するので、このままでいきましょう」


階段から上に登ると、ブルネルスキの別荘の役員控え室らしきところに出た。「フォレンティーナ帝国の転移魔法陣から来ました」と言うと、「あら、久しぶりですね。こちらへどうぞ」と従業員専用出口に案内された。外に出ると、ネプテュヌス共和国の、見慣れた風景が広がっていた。


ルーティはカノンに引っ張られるまま、「血肉の宴」に向かっていく。時刻は10:27と昼ごはんにはまだ早い時間であったが、少し体調の悪そうなルーティを気遣い、落ち着ける場所が必要そうだなとカノンが判断したためである。



「こんにちは~。あの、今日はちょっと調子がよくなくって。ゆっくりしたいな~って思うんですけど、どうですか?」

重い扉をギギィと開け、二人は「血肉の宴」に入店した。


「なんだ、お前らか。フォレンティーナ帝国に旅立ったと聞いていたが、もう帰ってきたのか」

店に入ると、マスターは暇そうに腕を組んでいた。マスターの怖い顔にも大分慣れてきたカノンは、笑顔で返事をする。

「転移魔法陣っていう便利なものがあって、一瞬でここまで来れたんですよ!」

「ほう、お前らはあんな高価なものを使う余裕があったのか。勇者を討伐したと聞いたが、金は計画的に使わんと何かあった時に破綻するぞ」

そう言ったマスターは、初めて会った時に聞こえてきたこちらに完全に敵意を持った音とは違い、こちらを気遣うような音を放っていた。

「アテーナさんって優しい人が使わせてくれたんですよ!えっと、神様なんでしたっけ、あの人」

「ほう、お前らはアテーナと仲が良いのか。どうにも掴みどころがない奴だと聞くが」

「そうなんですか?すっごく優しくて、料理もおいしかったんですけど…」

「それはそうだろう。この世界の料理は、大体あいつが広めたものなのだからな」

「へぇ~……すごい人だったんですね、あの人」

「神を『すごい人』扱いとは、お前も中々悪魔らしくなってきたな。注文を聞こう」



落ち着きたいのでティーセットを頼むと、いつもよりシンプルなケーキが運ばれてきた。優しい味をしたそれは先程から一言も喋れないでいるルーティを少しずつ落ち着けていったようであり、食べ進めていくうちにみるみる顔色が良くなっていった。


「このチーズ?みたいなケーキ、すっごく美味しかったです!ごちそうさまでした」

「ああ、昨日は良質のチーズを安く手に入れることが出来たのでな。ふんだんに使用してある」

「戦争が一応停戦して物流も復活してくるから、食品の価格も落ち着いてくるのかしらね…カノンちゃん、もう大丈夫よ。行きましょう」

「はい!おじいちゃんの音、広場から聞こえてくるので、早速会って音楽のこと色々聞こうと思います」

そうして二人はアグリッピナ広場に向かっていく。二人の手は、繋がれたままであった。


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