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会議はむずかしくてよくわかんないなあと思います

一同は講和会議の会場となる、フォルトゥナ大聖堂に向かった。灰色の淡泊な街の中にいっそうきらびやかでかつ荘厳に構えたその建造物は、高い石垣で囲まれており、まるで要塞のようであった。



「講和会議、仲良くいくといいですね」

カノンは小声でそう言った。体には、既に「霧」を五重にかけてある。このままだと「ヘル・シンパシー・チェーン」を装着していないフェーベ等はどこに居るのかわからない状態であるので、ルーティと手を繋いでいる。「霧」は実力に見合っていないためかMPを一回使うごとに100消費していたが、命には替えられないかなとカノンは思っていた。カノンは強大な存在、権力を持った存在というものに先天的な──あるいは前世で負った後天的な──恐怖感というものがあった。


「仲良くは…いかないと思うわ。セルゲイの性格を考えると、どう考えても譲らないだろうもの…アテーナさん、そちらの皇帝様は、どれほどやってくれるのかしら」

「ハドゥスケス四世ですか…あまり期待できませんね。父、ハドゥスケス三世に頼り切りだった上に、父が亡くなると何かに付けては私を頼るようになってしまいました。どうにも、世襲制というものはやりきれないですね」

「じゃあ今回の会議もぉ、アテーナさんが頑張ることになっちゃうんですかねぇ」

リリカはデイジーに貰ったアイスキャンデーのようなものをぺろぺろと舐めながらアテーナにそう言った。ルーティ以外の「雪解けレーヴァテイン」のメンバーにとって、この会議は完全に他人事であった。

「大変そうだし、応援してるの。よかったらこれ、一本あげるの」

デイジーは鞄からアイスキャンデーを一本取り出し、アテーナに差し出した。赤と青の螺旋で彩られ、フルーツの香りが漂っていた。

「これは、どうも…私は確かにここを守る神ではありますが、直接統治をしては民の存在意義が失われてしまいます。フェーベ、お願いできますか」

「えぇ……面倒くさい。私、コロシアム・チャンピオンの仕事があと6ティモほどで始まっちゃうんだけど……」

「何か皇帝に不備があれば助言するだけでいいのです。皇帝の左隣、任されてはくれませんか」

「まあ……それくらいなら」

「ありがとう、フェーベ。違和感があれば、それとなく皇帝に伝えてもらえると助かります」

「うーん……さっきからそれらしいのはあるけど、複雑すぎて……ちょっとむずかしいかな。やれるだけやってみる」






そうして一同は、フォルトゥナ大聖堂の中に入り、大学の講義室のようなところで腰を落ち着けた。講義室の左側の一番前の席に、先日勲章授与式で会ったばっかりのネプチューンとアリネスが座っていた。


「こんにちは!今日の会議、うまくいくといいですね」

カノンはネプチューンの方を見て深くお辞儀をし、アリネスに挨拶をした。

「うーん……どうなのかしらねぇ。第一回、第二回の講和会議の内容、一方的にぶん投げられた後の今回だからぁ…念には念を、入れてるつもりだけどぉ」

「へぇ~、政治って大変なんですね。騙したり、騙されたりって感じですかね」

カノンは政治経済の勉強はあまり得意ではなかったが、テレビでなんとか党となんとか党がいつも喧嘩をしているのを見て、この人達何と戦ってるんだろうなぁというようなことを思っていた。たぶんアリネスもこれからそういうことをするのかと思うと、ちょっと心配になったのであった。

「そうなのよぉ。…もっともあっちはもう後がないからぁ、流石に折れてくれるとは思うけどぉ…今回はぁ、神が3柱もお揃いだからねぇ」

「神様がいると、なんか違うんですか?」

「約束を破るとぉ、国が潰されちゃうのぉ…ふふふ」

「ふふふって…えぇ」





「せ、静粛にー!これより、第三回フォルトゥナ会議を始める!」

講義室の先生が立つようなところに20代半ばくらいの男性が立ち、会議の開始を宣言した。右隣にはアテーナがおり、左隣にはフェーベが居た。

「なんか、頼りなさそうな人ですね…あ、私もう一言も喋らないので…」

そう言うとカノンはアリネスの元を離れ、「雪解けレーヴァテイン」の一同が居る4列後ろの席に戻り、着席した。周りには、戦争の時にタカシの周りに居た魔道士がずらりと、まるでこれから死刑になるかのように生気を失った様子で着席していた。



会議が始まると、まず三回にわたる戦争の概要についてハドゥスケス四世という皇帝が述べた。カノンにはアリネスのざっくりとした説明のほうがわかりやすく感じたので、皇帝の迂遠な言い回しにうんざりし、ぼけーっと次の曲の構想を考えていた。




「それではぁ、私アリネスがぁ、ネプテュヌス共和国側の要求を述べますぅ。賠償金1億ドゥカの支払いと、こちらの魔道士の方々の身柄をこちらで預かること…元々育ての親であったジョセフ氏もこちらに亡命してますのでぇ、話が早いですよねぇ?それからぁ、軍隊の派遣の禁止…私達の国の半径5000万ドゥケイトに武装したゼノビア王国の集団が入り込んだらぁ、無条件でこちらは攻撃して良いことにしますぅ」

聞き覚えのない単位が聞こえてきた気がしたが、カノンはサードライブで披露する歌のリズム隊を考えるのに集中していた。考えても、アリネスの言っている意味が全く分からなかったからだ。カノンは会議の進行とは全く関係なく、フェーベとアテーナが稽古していた時の音が、曲にできそうだなぁと考えていた。



「ほう。聞くがアリネスとやら、ゼノビア王国の国家予算はいくらかご存知か?年間6000万ドゥカだ。そのような法外な賠償金を、何十年かけて払わせる気だね?ふん……そんなものを払い続けていたら、俺達はまた総攻撃を仕掛けるしか生き延びる手段が無くなる訳だが。まあ豊かなネプテュヌス共和国のことだ、1億ドゥカなど端金なのだろうな…今は魔道士は一人でも欠けてはならん状況だ。ジョセフの事は仕方ないが、ゼノビア王国の国家直属魔道士は国家の存亡に関わる。彼女らがおらぬと、こちらのインフラが整わないのでな…だから、こうしないか。彼女らの身柄一人につき、300万ドゥカでこの戦争を終わりにする。それで手を打とうじゃないか」

アリネスの予想通り、セルゲイという男は先に攻撃してきてしかも負けたにもかかわらず、全くこの要求を飲む様子は無かった。ハドゥスケス四世という皇帝も、セルゲイの意見をなるほどなるほどもっともらしいと聞いてしまっている。このぶんだと、セルゲイに流されて全く旨味のない条約を締結されそうである…












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