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このまま平和な日がずっと続けば良いなあと思います

ライブを終えたカノンは、お立ち台に座って傾く日を眺めながら、余韻に浸っていた。


(アイドルって…こんなに、楽しかったっけなあ)


生前のカノンは与えられた仕事、楽曲、企画をそのままこなし、ファンに認めてもらえるように、聴いてもらえるように、という努力しかしていなかった。思えばそこに、クリエイティブな部分はなかった。

一から楽曲をリミックスしたり、果ては0から楽曲を作ったりして、それを認めてもらえたということはカノンにとって大きな収穫となった。




宿に戻ると、部屋にはリリカだけが居た。どうやら自慢の体を鍛えるべく、トレーニング中らしい。腕立て伏せを軽快なリズムで、41、42…とこなしていた。


「ただいま。トレーニングですか?頑張ってくださいね」

「50ぅ。…あ、カノンちゃん。おかえりなさい。やっぱりぃ、体を維持するためには一日50回をぉ、2セットしないと」

「はは…私は指の皮が固くなっちゃったら、仕事にならなくなっちゃうので。別の方法で、やりたいですね…」

「でしたらぁ、椅子に座ったままこうやってぇ…」


カノンはパーティメンバーが帰ってくるまで、リリカのトレーニングに付き合うことになった。筋肉に負担がかかる体勢を維持するというそれだけのもので、カノンは全身がバキバキになってしまうのを感じた。





「あ、あの。今日は…このへんにしときましょう」

「そうですかぁ?これぇ、あと3セットやると効果的なんですけどぉ…あ、ルーティせんぱいが帰ってきましたよぉ」

心なしかいつもよりリラックスした様子で、ルーティが帰ってきた。

「ただいま。やはり、セルゲイは未だ負けに納得していないみたいね…講和、うまくいくといいのだけれど」

「せるげい?って人が全部悪いんですか?」

カノンは聞き覚えのない人物に、疑問を投げかける。

「セルゲイは25歳になってから歴代のゼノビア王国の王全てに取り入って、宰相としてあの国を牛耳っているのよ。そうね、諸悪の根源と言えば、そうかも知れないわ。今の王は、14歳の頼りないお姫様だもの…セルゲイが歴代で一番調子に乗っている時期だからこそ、叩くなら今なのかもしれないわ。でもあんな奴、どうやって突き崩せばいいのかしら」

「講和会議であのおじさんが暴れたらぁ、それだけでおじさんの評判ガタ落ちですよねぇ。そこを叩けばいいんじゃないですかぁ」

「そう、できると良いのだけどね…セルゲイの放っている魔力は、私のように探知に優れていなくても圧倒されるようなものだったように記憶してるわ。あれを倒すだなんて…カノンちゃんの魔法が効かない可能性だって、あると思うわ」

「じゃあ、こう…暗殺者とか雇って、暗い夜道をずば!っとか、どうですか?」

「あの筋肉ダルマに、短剣が通るのかしら…」

カノンは筋肉ダルマで魔力も圧倒的、その上国を牛耳っているやべーオッサンというものを思い浮かべた。完全に化け物のような人物を想像していた。

「うーん…じゃあ、敵に回さないように気をつけるしかないですね。どう考えても勝てないので」

「そうかもね。今まで誰かが勝てていたのなら、30年もゼノビア王国がセルゲイの言いなりになるなんてことは無かったもの」


そういう話をしているうちに、デイジーとフェーベが帰ってきた。二人は新しい服を着ていた。リリカのコーディネートしたそれのようにすっきりまとまっていたものではなかったが、二人の印象そのままの服を着ていたようにカノンは感じた。



「今日は一日、楽しかったの!」

「うん……デイジーも結構、センス、あるのかも。この服、ふわっとしてるけど動きやすくて…良い」

どうやら、二人は一日服を買いに行っていたようだ。

「あぁ~、デイジーせんぱい、お人形さんみたいになってますぅ。かわい~」

リリカはデイジーの頭に着けられたヘッドドレスを眺めて、良い素材を使っているなと吸い込まれるようにそれを見ていた。


「フェーベもなかなか、センスあるの!」

「うん…リリカさんのセンスを吸収できるように…がんばった。昨日は」





そうして集合した一行は、宿の食堂に、遅めの夕食を摂りに向かった。ステーキや刺し身、色とりどりのオードブルが積まれた螺旋階段のような食器が、一人一人にあてがわれた。

カノンは少食だったはずだが、昼ごはんを食べていなかったこと、ライブと筋トレでかなりの体力を消耗したことが重なり、全てを平らげた。他のパーティメンバーもお腹が空いていたのか、皿に何かを残す人は誰も居なかった。



そうして何事もない、平和な日が過ぎていった。


カノンにとってはこの一日はかなり刺激の強いものとなり、また頑張ろう、曲、いっぱい作ろうと決意を新たにし、ネグリジェに着替え、広い広いベッドに体を預けた。そしてキーボードの「ステータス」を開くと、調律LVが9になっていた。12より高いレベルを見ていなかったので、スキルレベルはおそらく12がマックスだろうとカノンは予想していた。スキルマが見えてきたなと、カノンはニコニコが止まらなかった。

そうして「メッセージ」を開くと、こんな文章を書いた。

「ミケさん、今日は私、久しぶりにライブしました。色々考えて考えて、その過程はまあまあ辛かったんですけど、でもその全部がお客さんに受け入れられて、盛り上がって、それでうれしくて。あ、あと調律のスキルレベルも上がっちゃいました。何か変わったなーって感じはしないんですけど、スキルマになったら勇者みたいなチートスキルになるんですかね?ワクワクしちゃいます。これからも楽しい悪魔ライフが、ずっと続けば良いなあって思います」


そうしてカノンはメッセージを送信し、キーボードの電源を落とすと、すぅ…はぁ…と深呼吸をし、眠りに就いた。











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