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アイドルは変わらなければ成長しないんじゃないかなって思います

今回の「終末歌姫アポカリプス」は、カノンが少しジャズっぽいリミックスを加えていた。カノンは「ゴリウォーグのケークウォーク」で勇者を倒した楽しさ、快感を忘れられず、それを曲に加えようとしたのだ。「ケークウォーク」とはジャズ音楽の元になった黒人の踊りである。カノンはそのジャズ調のリズムから着想を得て、独自の解釈で大好きな「終末歌姫アポカリプス」を展開させていく…



「ありがとうございました!『終末歌姫アポカリプスjazz remix』でした!」

跳ねたリズムに合わせて客もジャンプを繰り返し、すでにこの曲をファーストライブや昼のミニライブで聴いていた客は合いの手を入れるなどして、1曲目からあたりは大盛りあがりであった。リズムが跳ねすぎていて、合いの手が全体でズレていたのも、「ゴリウォーグのケークウォーク」らしいなとカノンは思っていた。カノンのぼんやりとした予想通り、1000人ほどの人がそこに集まっているように見えた。



次の「1<4-non///////CΦDe~カノン・コード~」も、奏乃子なりの工夫が凝らされたものだった。ミケから貰ったキーボードは、地球でよく売られているそれと違い、「ディストーション」というシンセサイザーやギターアンプのようなエフェクトが備えられている。これは、ボタンを押している時だけ音を歪ませることができるため、コードの和音を押している時にそのボタンを押すと、丁度和音を奏でた重いキックが流れるという寸法であった。これは、勇者を倒すときに使ったエフェクトである。バッヘルベルのカノンに足されたオシャレなコードに、奏乃子は全てそのエフェクトを差し込んでいた。クラシックを基調とした曲に2分感覚で、重いハードスタイルのキックが流れるというその音は、異世界では全く馴染みのなく、しかし右腕を振り回して応援したくなるものであった。奏乃子の振り付けも、海外ハードスタイルアーティストのそれのように、右腕をガンガン振り回すように変えていた。




…以上のエフェクトを客に聴かせた場合、奏乃子は客がタカシのように頭がおかしくなって死んでしまうのでは、と予想している。なので今回のライブでは、「調律」ボタンを押さずに行っている。



(今の私に、スキルはいらない。だって──アイドルだった頃は、スキルなんて持ってなかったもの)



奏乃子そのものに備わった調律スキルは言語の壁を越えてくれるので、完全に奏乃子の実力だけで歌を歌えているというわけではなかったのだが、ライブにおいて「精神を自在に操る」のは食う種がどうしても欲しかったファーストライブの時だけで良い、と奏乃子は考えていた。


「ありがとうございました、1<4-non///////CΦDe~カノン・コード~Hardstyle Remixでした!次は新曲です。この国のことについて、色々考えて、周りの人にも意見を貰って、がんばって考えた曲です。聴いてください、『空と海がこんなにも青いから』!」





"

 空が青い時は みんなと 出かけよう

 あの海に光る お日様を 眺めて

 行こうよ ネプテュヌス!

                   "


カノンはこの詩を書く時、最初に思い浮かべたのは、ギリアムに起こされてネプテュヌス共和国の全貌を眺めていた時の感動であった。空と海が、こんなにも青かった。それは、地球に居た時には見たことのない、とてもとても美しい景色であった。


ツェルニー練習曲30番 6の優雅な旋律に乗せて送られたそのサビの歌詞は、小学生らしく、しかしカノンのこの国に対する印象をそのまま表現した、情緒的なものとなっていた。


ネプテュヌス!と言うところで、ピアノがダダダダン!と弾かれるそれは、曲中に何度もあるフレーズであった。それに合わせてカノンは右手をぶんぶんと振り回していた。曲の後半に行くに従って、客もダダダダン!に合わせて右手を上げてくれるようになった。それは客の一体感を高めるものであった。カノンは生前のアイドル活動を強く想起するものが、自分とその周りの着想をくれた人達の力でできたことに感動を覚えていた。


「ありがとうございました!『空と海がこんなにも青いから』でした!私がこの国に来て、一番最初に思ったことが、空と海がとぉっても綺麗で、青いなあってことです。この曲はそのすごいなあ、感動したなあってことを曲に乗せて、音楽にして、届けたいなっていう感じのことを歌ったものです!……どうですか?」


ウオオオオォォォォォォオオオ!!!!


客は、歓声によって応えてくれた。スキル「調律」も、何も使わなくても、この国ではみんなが優しく音楽を出迎えてくれる。それに、カノンは生前感じたことのなかった感動を覚える。カノンの目には、少し涙が浮かんでいた。カノンはライブでこんな感情を覚えたのは、初めてであった。



「あ、ありがとう、ございましたぁ!」


ワァアアアアアア!!!!!



ライブは、大盛況のうちに幕を閉じた。気付くとあたりには2000人近い、アグリッピナ広場一帯を埋め尽くす人だかりができていた。しかしその場に居合わせたアリネスは息をふぅ、と吹きかけると、不思議と列は一列に整理された。そのおかげで、カノンは全く苦労すること無く投げ銭を受け取ることができた。今日の収入は、35325ドゥカであった。おおよそ、ダンジョンに行ってきたのと同じような金額を、カノンは一晩のライブで稼いでしまったのであった。






https://youtu.be/NGJvmBLJR0A


曲のサビ部分です。小学生が作るのか、と思うとこれでよかったのかどうかは微妙ですが、聴いていただければ幸いです

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