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セカンドライブを開催しようと思います

一同は堅苦しい式典が終わると、各自行きたい場所に向かうことになった。リリカは趣味のウィンドウショッピングに、デイジーはフェーベとお菓子を食べに、ルーティはまたどこかとの戦争の気配がしないかの調査を行っていた。


そしてカノンは、セカンドライブを19時から行えるよう、準備を進めていた。

新曲の構成は、頭の中で固まっていた。あとはそれを、11歳という年齢からくる柔軟な頭で編集し、一曲に完成させるだけであった。まずは告知をしようと、12時頃にアグリッピナ広場でちょっとしたミニライブを開催した。「終末歌姫アポカリプス」一曲のみの披露だった。お昼時だったので人も少なく、50人程度の集まりだった。

「ありがとうございました!今日の19時、ここで新曲やります!がんばってつくるので、聴いてくれると嬉しいです!」

集まった客は大体満足して、5ドゥカ程度を置いていって帰った。このときの収入は、200ドゥカ程だった。

カノンは来る前にしたためたかわいらしい絵柄のポスターを、その場に居合わせたアリネスの許可をもらいアグリッピナ広場のまあまあ目立つところに貼り付けた。人気のスポットで演奏している人が居ると、少し視線を左にずらせばカノンの夏休み絵日記のようなライブの告知が目に入るといった具合だ。ネプテュヌス語は、アリネスから数字の書き方だけ教わったので、「19:00から!!!」というざっくりした情報がポスターに載せられていた。

カノンは、この客が19時には10倍、下手したら20倍になるというぼんやりとした確信があった。この界隈では、常に他の音楽家の噂が垂れ流されている。帰り道で、ここでカノンが久しぶりにライブを行い、今日の19時からここでライブをするという噂は、着実に広まっていったのが聞こえた。



さて、大事なのが新曲の仕込みである。

カノンは、まずおじいちゃんのテクノ音楽のような旋律を思い出す。

チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ、ドゥルルン、デン!

この一節には、ツェルニー練習曲30番と同じようなメカニカルさに加え、アリネスが言っていた「ドラゴンが暴れるような」激しさをカノンは感じていた。チャカポコ、チャカポコ、というリズムは、リスト12の練習曲1番にも含まれる。「超絶」では全く面影のなくなった一節であったが、ここから始めようとカノンは「メッセージ」を起動し、譜面を書き込んでいく…





「できた!うん、いい曲なんじゃないかな。タイトルは…」

カノンは出来上がった譜面を「保存」し、プリセットに登録すべく、一時間ほど練習する。カノンが無理なく弾ける難易度に調整してあるので、すぐに納得行く出来になった。そうしてそれに合った、ダンスの振り付けを考える。

全くの素人であるため、運動会のお遊戯のようなものしか出来なかったが、この国の人にとっては逆に新鮮なのでは…?とカノンはむしろプラスに考えていた。






アグリッピナ広場に到着すると、この前のおじいちゃんが演奏を披露していた。今日の楽器の構成は、前回と少し異なっていた。木材を釘でいびつに繋ぎ合わせたもの、テーブルや椅子などといった木製の家具をバスドラムにし、テーブルの上に置かれたお鍋のフタをひっくり返したようなものをシンバルにして、豪快なドラム演奏のようなものを披露していた。



(プロは、違うなあ…)


カノンは、そのような感想を抱いていた。手の動き、表情の動き、足で弄んでる缶のカンカラカンという音の一つ一つが、計算され尽くされていた。



「おじいちゃん、今回もすごかったです!今回は、何をイメージしたんですか?」

話をするためカノンは列の最後尾に並び、順番が回ってくると100ドゥカ硬貨をバケツの中に入れ、そう言った。

「そりゃおめぇ、戦争で勝って、めでてぇなってやつだよ。なんでも、勇者はなっさけなく地面に埋められて氷漬けって話じゃないか。勇者のマヌケな感じを表現するために、いい感じの空き缶が転がってねえか3時間ほど探し回ったぞ」

どうやら、さきほどの空き缶のカンカラカン、という音は勇者が屈服する様子を表現していたらしい。改めて、プロは凄いなとカノンは思うのだった。

「そうなんですか!実は勇者をなっさけなく埋めたの、私なんですよ!楽しかったなあ」

「おいおいおいおい、そりゃ冗談だろう。いっくらマヌケな勇者つうても、嬢ちゃんみたいなのにやられるようじゃ、タダの雑魚じゃないか」

おじいちゃんは解釈違いを表現してか、木材の塊をダララララダダダと叩いていた。

「はいっ!あの勇者、よわっちいやつだったみたいです。私の、えーと…大切な人が、そう言ってました」

「そうかいそうかい、貴重な話を聞けたよ。缶の音は、もう少し不揃いで良いかもしれんな」



そうして話しているうちに、時刻は18:43となっていた。カノンは急いでキーボードのセッティングと、プリセットの確認、エフェクターの調整を行った。新曲の評判にドキドキしながら、カノンはお立ち台の上に立ち、まずは一曲目「終末歌姫アポカリプス」を披露した──

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