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なんかすごいことに巻き込まれてるんだなあと思います

第二章、スタート!

カノンは朝目覚めると、そこではデイジー、ルーティ、リリカ、そしてフェーベの四人が、すやすやと気持ちよさそうに寝ていた。珍しくデイジーとリリカはベッドの上で普通に寝ている。ベッドはカノンが生前使っていた布団の4倍くらいの面積であるのに加え、夢のようにふかふかしていて寝心地の良いマットを使っているので、より眠りが深くなるようだ。アラームは昨晩OFFにしていたので、勇者と戦う緊張感と勇者の"音"から来る不快感を抱えながら目覚めた昨日とは、比べ物にならないほど気持ちの良い起床であった。

ここは、ネプテュヌス共和国の中でも最高級の宿、「ブルネルスキの別荘」である。六人部屋は、一泊1200ドゥカであった。ベッドが一個余っているので、その上は荷物置き場になっていた。

例えるなら、地域一帯を統治する貴族屋敷の一室のような所であった。



カノンは、昨日戦争が終わってから、「血肉の宴」で打ち上げをしたときのことを思い返す。



「昨日は、すっごく楽しかったなあ。ルーティさんがあんなにはしゃいでる所、初めて見ちゃった。これからは楽しくピアノを弾いて、ライブして、おいしいごはんを食べて寝るだけの生活……かなあ。うん、すっごくワクワクする」


アリネスからは、戦争で勝利できたのは半分以上「雪解けレーヴァテイン」の成果だとし、パーティに一千万ドゥカと格付けポイント二十万が与えられると聞いていた。その代わり、フォレンティーナ帝国で行われる戦争の講和会議に参加するという義務が発生するのはちょっとめんどくさいなあとカノンは思ったが、この国の通貨価値的におそらく一生遊んで暮らせそうなお金がもらえそうという話に、胸を踊らせていた。



なんでも、アリネスによるとゼノビア王国からは1億ドゥカの賠償金をせしめるつもりらしい。加えて、勇者召喚の魔法陣の撤去をすることや、タカシが引き連れていた魔術師の身柄をこちらで預かることなども講話条約に組み込むという話だ。


「ピアノの練習、しようっと。そろそろ、セカンドライブしたいし」


カノンには難しいことはわからなかったので、当面上はお金がいっぱい手に入ることで食べ物に困らないということ、ライブをする心の余裕ができることが重要事項であった。


カノンは日課である、ツェルニー練習曲30番、リスト12の練習曲を小さい音量で、四人を起こさないように演奏した。自分で奏でるメカニカルなリズムは、カノンのぼーっとした意識を少しずつ覚ましていく。



リスト12の練習曲が9番に差し掛かった頃、ピコン!という音とともにミケからメッセージが届いたのを確認した。カノンは曲が終わると、ミケからのメッセージを確認する。





「やほ、久しぶり。カノンちゃん、勇者倒しちゃったんだって?おめでと~。アレスとかいうやつが召喚する勇者、たいてい力でゴリ押しだからよわっちかったと思うけど、カノンちゃんが勇者を倒すまでに成長してくれたってのは、アタシも鼻が高いよ。実はさ、カノンちゃんをここに転生させたのはワケがあって…アタシ達、神と戦争……みたいなこと?してんだよね。神が召喚した勇者十二人と、死神が召喚した悪魔十二人を戦わせて、先に全員を殺したほうの勝ち!って感じ。あいや、必ずしも殺す必要はないか。負けを認めさせて、『イデア』を渡してもらっても勝ち。戦争に勝った方は、世界のルールをなんでも三つ変えられるんだよ。ヤバくね?

まそんな感じなんだけど、別に今すぐ勇者を探して皆殺しにしてこい~!ってワケじゃないからね。勇者がなんかしてきてカノンちゃんが危なくなったら、昨日みたいに容赦なくぶっ殺せばいいだけだから。今日は時間あるから、久しぶりにそっち行くね!じゃ、また」



いきなり大量の情報がカノンの脳に舞い込んできて、カノンは混乱した、え、戦争?私、そんなことのために召喚されたんだ…とカノンは一瞬思うも、まあ今が楽しければそれでいいか、前世よりは格段に楽しい人生だし、とカノンは自分を納得させた。



それよりも最後の一文にある、ミケに久しぶりに会えるという情報が、カノンには最重要事項であった。



(どこで会おうかな、やっぱり海が見える景色がいいかな……ここは海がきれいだし、海が見える所が良いかなあ。何着ていこう…なんかオシャレしたいな)



カノンは興奮していた。



カノンがニコニコ顔でキーボードの液晶画面を見つめていると、ルーティが目を覚ました。時刻は8:00を指しており、ルーティにしてはかなり遅起きであった。


「カノンちゃん、おはよう…昨日は、恥ずかしい所を見せちゃったかしら。幻滅しないでくれると、助かるのだけれど」

ルーティは昨晩、「血肉の宴」でヴァル酒を7杯ほど一気飲みし、酔った勢いでカノンの頬に顔を擦り付けるなどの醜態を晒していた。それに乗っかりデイジーもリリカもカノンをもみくちゃにし、カノンは自分では2杯くらいしか飲む余裕が無かった。

「あぁ、大丈夫です。昨日のルーティさん、なんだかかわいかったので」

「そうなの…?うん、それなら良かったわ。たまには何も考えずに騒ぐのも、楽しかったもの」

「はい!私もすっごく、楽しかったです」

事実カノンは生前、リアルで女の子とここまで騒ぐ機会が無く、昨晩が前世含めて一番楽しい瞬間だったなと回想していた。バーチャルアイドル同士でネット上で騒ぐことはあったが、それは「仕事」であったので相手の気遣いをするのが11歳のカノンには中々骨の折れることであった。


「あの、今日私、服を買いにショッピングに行こうと思うんです。付き合ってくれますか?」

「ええ、私達じゃファッションの参考にならないかもしれないけれど…そろそろ服を買おうと思っていた所だし、一緒に楽しんじゃおうかしら」

「ありがとうございます!嬉しいです」


ルーティは未だすやすやと寝ている三人を起こし、簡単に朝食を摂ると、「雪解けレーヴァテイン」の一行はショッピングに出かけた。どうやら、フェーベも同行してくれるようだ。


「そういえば…私、いっつも同じ服。何着か、買っていこうかな」

「はい!今日は一日、楽しんじゃいましょう」














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