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戦争で死にたくはないかなあと思います



アリネスを連れた一行はカノンの案内の元、カフェ・デ・グラスへと向かった。大通りからちょっと外れたくらいのところにあるため、カノンとしては見たことはあるが、入ったことはないくらいの認識であった。

「"聞いた"感じだと、リリカさんずぅっとここでお菓子を食べて、ゆっくりしてるみたいです。居心地がよさそうで、たのしみです!」

「ずぅっと、ね…みんなでおしゃべりしながら食べるのならそれも悪くないけれど。一人で長い時間食べ続けるのは、なんだか寂しそうね…あのカフェには、何かあるのかしら」

ルーティも名前だけは知っているが、入ったことはない様子であった。ルーティの話を聞いて、食事といったら一人でコンビニ弁当や菓子パンを作業的に食べるのみであった生前を思い出していた。「雪解けレーヴァテイン」の一員となってからカノンは食事を四人以上で食べていたため、寂しい思いをここ最近していないというのは生前の現実世界とでは大きく異なる点であった。

「『カフェ・デ・グラス』はねぇ…心地よく長居できるような工夫が、いくつもあるって聞いてるわぁ。今日は時間が無いのが、残念だわぁ…」

アリネスは関わっている人間が多いからか、話は聞いたことがあるという様子であった。

「そうなんですか!なんだか、楽しみになってきましたっ」

「カノンちゃん。本題は作戦会議だから、一応忘れないようにね」

「はいっ!らくして勝てるように、頑張って作戦立てちゃいます!」






「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ」

「カフェ・デ・グラス」に入店すると、フリフリの布を豪勢に使った、ドレスのような制服を身に纏った女の子の店員に出迎えられた。広い店内には、老若男女幅広い客がくつろいでおり、手際のよい、所作の整った店員の手厚い給仕を受けていた。

リリカもまたカウンター席の一角で、お茶をすすりながらゆっくりしていた。


「リリカ、くつろいでるところ申し訳ないのだけれど、ちょっといいかしら」

「…あぁ、ルーティせんぱいですかぁ。みんなも揃って…偶然ですねぇ、せんぱいもここに興味があったんですかぁ?」

ルーティが柔らかそうな一人がけのリクライニングチェアに腰掛けているリリカに声をかけると、いつもに増してふわぁ…とした雰囲気でリリカは振り返り、ルーティにとろりとした視線をやった。

「カノンがここに居るって教えてくれたの!皆で話し合いをしたくてここに来たの」

「ゼノビア王国の軍が近く、この国に攻めてきそうっていう情報を入手したの。それで、アリネスさんと相談しようと思って…忙しい中、お時間を取らせてもらったわ」

ルーティは周囲を混乱させないよう意識して声を小さくし、リリカにそう告げる。もっとも店内は多くの客で賑わっているため、結構なボリュームで話しても周りには伝わらなさそうだった。

「そうなんですかぁ。でも、今回もまたアリネスさんがどうにかしてくれるんじゃないですかあ?」

「ごめんねぇ…今回は、私達だけじゃどうにもならないのぉ…協力、してくれるかしらぁ」

「…!アリネスさんがそう言うならあ…相当、まずいんですか」

「ええ。ともかく詳しいことを話したいから、テーブル席に移らせて貰いたいのだけど…」

言うとルーティは、近くの店員に目線を送る。

「はい、こちらの席が空いております」

それにすぐさま反応したのは、黒い髪を肩にかからないぎりぎりまできっちりと切りそろえた店員であった。彼女は無駄のない所作で五人分の食器を運び、テーブルに並べた。

「お嬢様方、ごゆっくりおくつろぎください」



「それで、本題に入るのだけど…アリネスさん、共和国軍の規模ってどれくらいだったかしら?」

お茶とお菓子が運ばれて来た後、五人があらかたお菓子を食べ終わるとルーティはそう切り出した。

「正規軍が500人とぉ、あとはギルドから派遣してもらう形になっているんだけどぉ…今回は一人の強力な勇者を相手にするわけだからぁ、あんまり数が居ても無駄になりそうなのよねぇ」


アリネスは相手の兵力を冷静に分析していた。これまでにゼノビア王国はネプテュヌス共和国にニ回派兵している。一回目はゼノビア王国兵を2千人用いた真っ向からの殴り合いであった。

ゼノビア王国は冒険者の魔法を中心とした攻撃に一網打尽にされてしまい、敗戦を喫することになった。ニ回目は暗殺者を用いて姫を誘拐しようと企て、城から近いアグリッピナ広場で召喚魔法を発動しようとしていたところをアリネス一人の手によって頓挫させられていたのであった。

一回目で王国の兵を大分消耗させ、搦め手を使う者も二回目の出兵で戦力を大分削ったはずである…三回目である今回は、勇者一人の能力頼みの戦闘となるだろう。一回目でネプテュヌス共和国側が行ったように、デイジーの氷炎魔法等といった強力な魔法を、勇者側が使ってくるかもしれない…そう考えると、アリネスとしては無駄な犠牲は避けたかった。


「私、と、カノンちゃんの魔法なら…師匠より弱い相手であれば、なんとかなるかな、って…思う」

フェーベはアリネスの「強力な勇者」という言葉を聞き、若干興奮気味に言った。

「フェーベさん…だったかしらぁ。コロシアムでの貴方の評判、聞いてるわよぉ…なんでも、誰も勝てる人が居ないから、チャンピオン扱いになっちゃったとかぁ?」

「うん…お金がたくさんもらえるのはいいけど……とっても、退屈だった。なによりお客さんをがっかりさせたくないから……すぐに倒しちゃわないように戦うのが、すっごくめんどくさかった」

「そう、そうなのぉ…ならぁ、最前線で頑張ってもらってもいいかしらぁ…ゼノビア王国の最終兵器なのだからぁ、絶対に油断出来ない相手なんだけどぉ」

「うん…やってみたい」

フェーベは強い勇者の存在を聞けば聞くほど、それへの興味が高まっていくのであった。

「私も頑張って…応援、します!」

カノンはそんな相手とは絶対に真正面から戦いたくはなかった。自殺した瞬間に意識を失っていた「奏乃子」に一切の恐怖はなかったが、転生して一度死にかけてから、カノンは命を大事にしようと強く思っていた。




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