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セカンドライブには新しい何かを用意しようと思います


カノンは帰路についている最中、セカンドライブのことを考えていた。一度ファンになってくれた人のためにも、ヘタなパフォーマンスはできないな、とカノンは思った。それに、新しいものをファンに届けたい…とも、カノンは考えていた。いつも同じものを見せていては、ファンは飽きてしまうだろう。

(そういえばフェーベさんのあの踊るような剣さばき…たぶん、ステージ上でも映えるんだろうなあ…)

カノンは、コロシアムでのフェーベの剣舞を思い出していた。共演すれば、盛り上がること間違いなしだ、とカノンは考えた。カノンは歌いながら踊ることは出来なくはないが、踊っている間にすぐ疲れてしまう。コロシアムでの連戦をいとも簡単に、踊るようにこなすことのできたフェーベにダンスを任せれば、カノンが踊ることなく歌に専念できる。しかも、フェーベの身のこなしであれば、カノンよりも映える、キレのあるダンスを披露してくれるだろう…とカノンは予想した。

こうなるとさっきのうちにオファーを申し込んでおけばよかったとカノンは少し後悔したが、さっきはあまり言い出せる雰囲気ではなかったのでどちらにしろ仕方ないか、と思った。明日、ギルドの訓練場に立ち寄って、その時にオファーしよう…そう考えた。



一行は宿に着きチェックインをすませると、軽い食事をとった。施設は閉まっていたが、食堂の入り口にご自由にお取りくださいという具合でサンドイッチのようなものが置いてあった。


「明日からのフェーベさんとの訓練…これ以上ないくらいにいい経験になりそうね。これまでデイジーは自分の身を守りながら戦う経験が少なかったもの…魔物との戦闘ではそうなる前に、私達が敵を発見して、仕留める体勢に入っていたし」

「わたしも、人との戦いがこんなに難しいとは知らなかったの!フェーベと稽古すれば、もっともっと強くなれる気がするの」

デイジーは自慢のレーヴァテイン・ノヴァの切っ先をじっと見つめる。今までよりもずっと強くなったそれに、自分はついていけていない…デイジーはそう強く感じていた。

「デイジーせんぱいとまともに相手できる人も貴重そうですしねえ」

「フェーベさんより強い人なんて見たことないですし、そんな人に剣を…レーヴァテイン・ノヴァの使い方を教えて貰えば、すごいことになりそうです!」

「ええ。明日からの練習のために、今日はしっかりと休息を取りましょう」

「いっぱい寝ないと力が出ないから、時間いっぱいまで休むの!」


「雪解けレーヴァテイン」の四人は明日の予定を各自確認すると、眠りにつくのであった。

寝付くまでの間、カノンはセカンドライブで弾く曲の構想を考えていた。

ここのきれいな景色と、活気ある人々をそのまま曲にできたらなあ、とカノンは思い浮かべる。

しかしカノンは作曲といっても、簡単な進行と展開を教わったのみであったので、複雑な曲作りは出来なかった。

ならば歌詞の乗せやすい簡単なメロディに乗せて、ネプテュヌス共和国の風景と人々を描写すれば…と思い浮かべるが、なかなかキャッチーなメロディは思いつかなかった。

あれこれ考えを巡らせているうちに、カノンは眠りに就いた。





翌朝カノンは、「雪解けレーヴァテイン」の三人が今日の予定を話し合っている声で目覚めた。

「今日はぁ、前々から気になっていた『カフェ・デ・グラス』と『ウィンドボナ・ハウス』に行こうと思うんですよぉ」

「ちょっと前まで食費につぎ込むことは浪費でしかなかったけれど、今は心に余裕をもたせるのも悪くないわね。ここのところダンジョンとクエストでかなり押し気味のスケジュールだったから、私もたまには羽を伸ばそうかしら…良さそうな所があったら、教えて貰える?」

ダンジョンに行く前よりも格段に柔らかな表情になったルーティは、そうリリカに頼んだ。お金に余裕が無いと心に余裕がなくなり、その余裕がなくなったことを自分でも気づけなくなるのだと、「血肉の宴」での食事の後にルーティは気付かされたのだ。

「わたしもフェーベとの稽古が終わったら、美味しいお菓子を食べたいの!」

「他にも良さそうなところを見つけたらぁ、みんなで一緒に行きたいですねぇ」

「ふぁ…おはよう、ございます」

「あらカノンちゃん、お目覚めかしら。顔を洗ったら、食堂で朝ごはんにしましょうか」

このネプテュヌス共和国では、手や顔を洗うのに不自由しない程度の上下水道が整っていた。なんでも、ネプチューン姫が多大な水を操る力を有しており、その力で国民全員分の水を工面しているらしい。

「はい!行ってきます」



食堂では、昨晩食堂の入り口に置いてあったものと同じようなサンドイッチと、スープが振る舞われた。食べながらカノンは曲の構想を練ろうとしたが、うまくいかなかった。

鍵盤に手を置き、色々弾いてみてから考えよう…と思った。




「それじゃあ、私は情勢の調査に向かうわ。何かあったらカノンちゃんに協力をお願いするかもしれないから、しばらくこの宿に居てくれる?」

「はいっ!私はここで、セカンドライブの構想をじっくり練ろうと思います」

カノンは一日「ブルネルスキの家」で缶詰になる決心を固め、やる気まんまんという表情だった。カノンが今までやってきた作曲は単純な進行だけの曲であったが、そんなものを客に聞かせるのはカノンの「使命感」が許さなかった。新曲は、ある程度は練ったものにしようと思っていたのだ。

「あたしはぁ、まずウィンドボナ・ハウスから行ってみようと思いますう。ビタナ・クラッシュってお菓子が美味しいらしいんですよぉ」

「みんなでまたカフェに行けるのが楽しみね。デイジー、フェーベさんとの稽古に行くための体調は万全かしら。昨日の疲れは残ってない?」

「ばっちり9ティモ寝たから大丈夫なの!」

デイジーは満面の笑顔を浮かべて、両手をぱっと上げる。

「その様子だと、今日は充実した稽古になりそうね。じゃあ各自、解散にしましょう」

「何かあったら、ここに戻ってきてください。私がみんなだけに聞こえる音で、呼び出そうと思います!」

カノンは調律LV5の力で人をびっくりさせるプリセット4「リスト12の練習曲 1」を再生すれば、遠くの人を呼べそうだなと思った。熊を眠らせたときの逆パターンで出来そうだなと判断したのだ。

「よーし、今日はフェーベの剣をふっ飛ばしてやるまで、頑張るの!」


一行はそれぞれの目標に向け、やる気に満ち溢れた表情を浮かべて解散した。



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