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コロシアムを観戦しようと思います



「コロシアム、面白そうなの!わたしも参加してみたいの!」

宿に着くなりデイジーはそう言った。カノンから伝え聞いた、フェーベの三倍くらいの体積のある大男を軽々と串刺しにしたとか、高名な賢者の魔法を剣で弾き飛ばした後に喉元に剣を突き当てて降参させたとか、そういう話のおかげもあってデイジーはかなりコロシアムというものに興味を示していた。

「良いんじゃないですかぁ。ほら、あたし達、ゼノビアの連中を追い返せるくらい強くならなくきゃですしぃ」

「確かに…私達、人との戦闘はあまりやって来なかった方ね。魔物の単調な動きを止めるのはカノンちゃんの魔法があれば容易くなったみたいだけど、人間が相手だとカノンちゃんが先にやられちゃうかもしれないわ。そういった意味でも、デイジーが後衛を守りながら戦えるくらい強くなってもらった方が良いわ」

「任せるの~。全員まとめてこの"レーヴァテイン・ノヴァ"でぶっ飛ばしてやるの!」

「デイジーさんなら、フェーベさんともいい勝負ができそうですよね!」

「相手が誰だろうと全力でやるだけなの!」

「くれぐれも無茶をしないでね、デイジー。いくらプロテクターが全身を守ってるとはいえ、それを一発で貫くほどのダメージを受けないとは限らないもの。私達は魔法使いなんだから、一発が命取りになるわ」

「わかってるの!」

「デイジーさんが強い人と戦ってるのを見るの、楽しみです!」


デイジーがコロシアムに参加するということは、満場一致で決まった。コロシアムは当日に参加申請をしてもよいということは聞いていたので、その時に詳細を聞くことにした。


カノンは、寝る前にドビュッシーの「霧」と「広野を渡る風」を練習していた。「霧」を選曲した理由は、味方の周りに「霧」が出せれば魔法使いである自分達は敵を撹乱しながら安全に遠距離から魔法を撃つことが可能であることだ。こちらはルーティの正確無比な探知魔法で、敵の照準はぴったり合うため、相手が直接見えていなくても問題は無さそうであった。「広野を渡る風」を選んだ理由は、カノンにもそろそろ明確な攻撃手段が欲しいと考えていて、一番攻撃のイメージがしやすかったのがこの楽曲であったことだ。敵の目の前に突風を引き起こせるイメージをして、動きを封じられれば戦いを有利に進められるだろう。また、突風というのは避けづらいであろうことから、デイジーへのサポートとしても動きを封じるというのは優秀であるとカノンは考えた。

問題は、その二曲のどれもがカノンの実力よりも少し難しい楽曲となっていたことであった。「霧」は右手と左手のバランスがぴったり合わないと霧そのものを表現できないし、「広野を渡る風」は6連符の超高速のメロディを一定のリズムで弾き続けなければならない。カノンは左利きであるため、右手で6連符のうちの5個を弾くというのが大変に骨が折れた。

結局、この日のうちに二曲は納得いく出来にならず、明日も練習することにした。


デイジー、ルーティ、リリカの3人が明日の予定についての話合いを終え、カノンが「広野を渡る風」に右手をやられかけたあたりで一行は眠さの限界を覚えた。

「アラーム」の時刻は27:23であった。今朝の経験を踏まえると、四人で寝て起きる時は「アラーム」は無いほうが快適に起きられるだろうとカノンは考えた。設定から、「アラーム」をOFFにした。


明日は誰もベッドに入り込んでいないことを祈りつつ、カノンは眠りに就いた。





「基本的な戦い方はこうね。まず、氷属性と火属性の魔力レーザー。この両方を、できるだけ相手を撹乱させるような軌道を描いて撃つ。試合開始時の相手との距離にもよるけど…挟み撃ちにして、相手が空にしか逃げ場が無くなった所を撃ち落とすのもいいわね。このあたりの判断は戦いを重ねるに従ってだんだん慣れていくと思うわ。相手をしびれを切らして攻撃に転じた時、一気に氷炎の螺旋レーザーでとどめを刺す。…できそう?」

「う、う~ん…絵に描いて説明してほしいの」

「わかったわ。じゃあまずデイジーと相手がこれくらいの距離感だったとして…」



カノンが朝目覚めると、デイジーとルーティが今日のコロシアムに向けて作戦会議をしているのが聞こえてきた。何やらルーティはいつも以上に気合が入っているようだし、デイジーは珍しくルーティの言うことをよく聞いているようであるし、リリカは床に転がって寝ていた。

「わかったの!ルーティの教え方は、いつも参考になるの!」

「んん…おはようございます」

「あらカノンちゃん、おはよう。そろそろ朝食にしようかしら…ほらリリカ、起きて」

ルーティは地面で寝ているリリカをを抱き寄せ、ゆさゆさと揺さぶり起こそうとする。

「はわ…おはよぅございますぅ」

リリカはうつろうつろといった様子で起きると、とろけた表情でルーティの顔を見つめていた。

「それじゃあ、早速食堂に行きましょう。ここの食事もまあまあ美味しいから、食べ逃したら損だわ」



一行は食堂に向かった。そこでは、色々な肉が練られたものが挟まったサンドイッチのようなものが振る舞われた。いつものようにカノンは作業的にもぐもぐと平らげたが、他の三人は丁寧に食べていた。



「そろそろコロシアムの参加受付に行きましょうか。先着64名だそうだから、早めに行くに越したことはないわ」

「全員ぶっ飛ばして優勝してやるの!」

「あたし達も応援、がんばりますねぇ」

「私が応援するのはルール的にあれかもなので、じーっと見守ってます!」



一行はコロシアムに到着すると、2-3000人はいるだろうかといったおびただしい人だかりがあった。



「す、すごい人ですね…」

「この国で最大の娯楽と言ってもいいくらいだから、当然だわ。私は今までは興味なかったけど…これほど活気があるとなると、やっぱり国の為になっているってことかしら」

「よくわからないけど、この時点で楽しそうなの!」

「さっそく参加申込みに行きましょうかぁ。あっちでやってるみたいですよぉ」

一行は参加申し込みを済ますと、そこで売っていた肉の串や魚の丸焼きを、弱めのお酒で流し込みながら食べ歩いていた。

コロシアムでの試合はトーナメント形式で、勝てば勝つほど賞金が支払われる。優勝者には10000ドゥカが支払われるらしかった。2位は2000ドゥカ、3位は1000ドゥカとかなり下がるので、やはりなんとしても優勝したいものであった。

ちなみに参加申し込みは、ギルドの「個人格付けポイントランキング」が5位以上であると出来ないようであった。そのような人達は国直属のクエストが与えられるし、何より実力差がありすぎて試合運びがつまらなくなるからだそうだ。

そういう話になると、個人格付けポイントランキングが11位のデイジーが参加するのはどうかという所であるが…早速誰が優勝するか、のオッズを見ると、デイジーは1.3倍とあまり得にならなさそうな倍率をしていた。だがカノンはデイジーが勝ちますように、と5ドゥカをデイジーが1位、フェーベが2位という複勝に賭けるのであった。こちらの倍率もあまり良くなく、3.2倍であった。「ごえんがありますように」という日本での願掛けは、三人には通じていないようだった。




コロシアム内の試合を見ると、フェーベが言っていたようにそれは筋肉と筋肉のぶつかり合いで、筋肉で相手の防御を吹き飛ばしたら勝ちというようなものが行われていた。カノンにはそれが味気なく見えたので、手元の豆を炒ったようなものに意識を集中させていたのだった。


すると、次の次の試合でデイジーが出場するというアナウンスが流れたため、デイジーが選手控室に向かった。

「いよいよね。デイジーなら大丈夫だと思うけど、万が一のことがあったらすぐに降参するのよ」

「負けないから安心してほしいの!行ってくるの」

「頑張ってきてくださいねえ」

「もぐもぐ…あ、応援してます!いってらっしゃい」


デイジーは控室で腕に魔道具をつけられると、体中が守られるような感覚があった。どうやら、これで重傷を回避するらしい。デイジーには、それがリリカの光魔法よりも弱そうな魔力であることを感じ取っていた。しかし、手加減しないと殺してしまうかも…などということは、デイジーの頭の中にはなかった。


初戦の相手はこれまた筋肉だるまのような男であった。

「こ~んなおチビさんが格付け11位だぁ?おいおいおい、ギルドも不正を見過ごすようになったのかなぁ?」

相手との距離は開始時点で20mほど離れており、魔法使いでも十分戦える間合いであった。

「口だけはよく回るみたいだけど、その口が二度と閉じないようにしてやるの!」

ルーティが対戦前に相手が挑発してくるかも、と言っていたので、デイジーは最低限の会話にとどめておいた。

「それではハインリヒ・ハンブルク選手対、デイジー・ティナト選手の試合を始めます。セット…ファイト!」

審判の開始の合図が始まったと同時に、デイジーは赤と青の螺旋レーザーを相手に放つ…と、それはハインリヒとやらのどてっ腹に光の速さで命中し、ハインリヒはコロシアムの壁にぶち当たり動かなくなってしまった。

「ハインリヒ選手、戦闘不能!勝者、デイジー・ティナト選手!」

観客はみな、ぽかん…としていた。フェーベが「観客を楽しませながら」と言っていたが、それはとても難しいことなのだなあとカノンは思った。

だが次の瞬間、ワァアアアア!!!と観客が湧き上がった。

「おい見ろよ、あのハインリヒの顔!なっさけねぇ~。さんざん試合前はイキってたくせにあんなチビ助の魔法にやられてやんの!」

「実はあいつめっちゃ弱かったんじゃね?相手にワイロ渡してたとかで勝ち上がってたんじゃね!」

どうやら口の悪いハインリヒという男は、観客からもまあまあ嫌われていたらしい。

「初戦は順調すぎるくらい順調ね。このまま、勝ち上がってくれれば良いんだけど」

「そうですねえ。またお金に余裕が出てくれればあ、嬉しいですしい」

「デイジーさんの魔法、やっぱりすごいです!」


デイジーのコロシアムでの初戦は、見事な初勝利となったのであった。





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