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暇なのでクエストに行こうと思います


「遅いの!待ちくたびれたの~!」

「ルーティさぁ~ん。魔石、いくらで売れましたかぁ?」

ギルドの前に行くと、デイジーとリリカの二人がそこに居た。デイジーは金色に輝くレーヴァテイン・ノヴァをぶるんぶるんと振り回しているが、周りの人はデイジーが如何な実力を持っているかを知っているので、誰も手を出そうとしない。

「格付けポイント」は個人、パーティ別でギルド掲示板にランキング形式で張り出されている。二千人あまりが登録するネプテュヌス共和国ギルドの中でも、デイジーは12位とかなりの実力者であったのだ。パーティ別の格付けポイントでも、「雪解けレーヴァテイン」は20位とそこそこの順位に居た。

「魔道具はなんとか作って貰えるみたい。なんでも、装着すれば私達の魔力が倍になるらしいわよ、信じられないわね。ただ、ドラゴンの魔石は全部あのインチキ婆さんの物になるみたいだけどね…魔石も、ギルドで売ってって言われちゃった」

「えぇ~。ルーティさんがそう言うなら仕方ないですけどぉ。ドラゴンの魔石で一攫千金の夢が…」

「でも、その魔道具でこの"レーヴァテイン・ノヴァ"の力を更に引き出せるのなら文句はないの!」

「ええ。今は自分達の身を守るために、少しでも強くなっておかなきゃ…一応私達は、ゼノビア王国から追われる身だからね」

ルーティは孤児院を脱出し、ゼノビア王国から逃げ出して以来、「雪解けレーヴァテイン」の三人が強くなることを常に意識していた。

孤児院の「先生」は、魔法をまともに使えるはずのなかったデイジーによる奇襲でなんとか脱出時は対処出来たものの、5人ほどが配置されたそのどれもが当時のルーティの実力を数倍上回っていた。

一介の先生でそれであるので、王に仕える魔道士など今でも敵わない程度の実力を持っているに違いないとルーティは推測している。

「確かにぃ…あのこわ~い人達がもう一回あたし達の元に来るとなるとぉ、お金どころじゃないですよねぇ」

「あんな奴ら、強くなったわたしとこのレーヴァテイン・ノヴァでぶっ飛ばしてやるの!」

「あら、頼もしいわね。となれば、勝率を上げるために一回でも多くの実戦を経験しておきたいところだけど…いい感じのクエストは見つかった?」

「森の奥の方にでっかい熊みたいなのが居るみたいだから、そいつをぶっ飛ばしに行くの!楽しみなの~」

「森で暴れてた大型のバルログの動きが落ち着いて、生態系がだいぶ変わっているようね。注意して動かないと」

たぶんギリアムさんのことだろうなあ、とカノンは思う。あれだけそこらじゅうを破壊して回れば、近くの生き物は押し出され、そのまた周辺の生き物もまた押し出されていくのである。

「はいっ!私も周りに気をつけながら、頑張って応援しようとおもいます」






一行はギルドで魔石を換金し、「ブルネルスキの家」に一旦預けると、馬車で森へと向かうのであった。魔石は全部で34010ドゥカであった。その金額に対しデイジーが、これだけ集めればもっと高いはずなの、とだだをこねていた。しかしルーティは、ギルドも商売でやっている上に、国の経営にも関わっているので仕方ないかな、と考えていた。

今回もあのデュラハンが居たので、お世話になることにした。馬車の運賃はギルドで負担される。デュラハンは、「ハァーッハッハ、英雄の諸君。暇つぶしか!?付き合ってやろう」などと言っていた。



「やっぱりあの金額には納得できないの!魔道具がだいたい1000ドゥカくらいで、一つの魔石で3個くらい作れるって聞いたの!わたしはかなり大きめの魔石を80個くらい持ってきたのに、あの金額はしょぼすぎるの!」

「デイジー、買い取りには手数料が発生するのだけれど、そこには税金が多く含まれるわ。税金が無いと国はやっていけないの。あなたもそのうち、わかるようになるわ」

「売れる場所があそこしか無いんなら仕方ないんですかねぇ。でも、あれだけお金があるとだいぶ暮らしが裕福になりますよぉ」

「そうね。一日に分配するお金も、もうちょっと増やそうと思うわ」

「やったぁ~。そろそろこの服、ぼろっちくなってきたから買い替えたかったんですよねえ」

「わたしはお菓子がいっぱい食べたいの!」

「それなら私、美味しい店しってますよ!今度、一緒に行きましょう」

「嬉しいの!一緒に行くの」




そうこうしていくうちに、目的地へとたどり着いたようだった。

「この辺りで巨大な熊が出たようであるな!英雄の諸君であれば遅れは取らんだろうが、油断はせぬようにな!では、我はここで待っていよう」



ルーティの探査魔法には、既に巨大な影が引っかかっていた。カノンの聴覚にも、大きな存在が敵意を向けて"聞こえて"くるのを感じていた。

「あっちの方角にそれらしいのが居るわね。どんな動きをするのかわからないから、注意して」

「あっちなの!今すぐぶっ飛ばしてやるの~」

ルーティが指を差してあっち、と言った方角に、デイジーが走り去ってしまった。

「デイジー、待って!注意してって言ってるのに」

「みなさん、走るのが速すぎますぅ~」

デイジーが突っ走るのを先頭に、ルーティが続き、50m走は8秒32とそこそこ速かったカノンがそこに続き、リリカが10mくらい離れたところで胸を揺らしながら追いかけていた。


走った先には、カノンの15倍くらいの背丈をした熊が、咆哮を上げながらこちらを睨んでいた。

「ぶっ飛ばしてやるの!これでイチコロなの!」

言うとデイジーは早速赤と青の螺旋レーザーで先制攻撃をする。しかし、その先に熊の姿はなく、その光の速さで駆け抜けるレーザーは、熊が居たはずの空を切りあたりの木を粉砕していった。

ルーティは熊が一瞬でデイジーの背後に回り、爪を振り上げていたのを知覚した。

「デイジー、後ろ!」

「えっわ、わぁあ」

ガキィン!とレーヴァテイン・ノヴァと熊の爪が衝突した。レーヴァテイン・ノヴァは、まるで意思があるようにデイジーの手を引っ張り、熊の一撃を受け止めていた。

熊は後ろに跳び、こちらの様子を伺っている。



(このままだと、みんなが危ない…)

そう思ったカノンは、プリセット4「象の子守歌」を「調律」ボタンとともに最大音量で流し、熊を眠らせようとした。

「眠っちゃってください、熊さん!"ぞうの子守歌"!」

「象の子守歌」というタイトルのように大きな獣にも効果はてきめんなようで、熊はすぐに体をふらふらとさせ、眠ってしまった。

…と、カノンはあることに気付く。

(みんなは眠ってなくて、熊だけが眠ってる?"調律"は、音を聴いた人に効果が及ぶはずなのに…)

「カノン、ありがとうなの!レーヴァテイン・ノヴァ、災いを起こすの!」

すぐさまレーヴァテイン・ノヴァを構えたデイジーは、熊に向けてその胴の太さほどの直径がある赤と青の螺旋レーザーを放つ。それは熊を貫き、一瞬で絶命させた。



「勝ったの~。やっぱりレーヴァテイン・ノヴァもみんなも、頼りになるの~。」

デイジーはぴょこぴょこしながら勝利を喜んでいた。

「もう、デイジーったら。一人で突っ走っちゃいけないって、何度言えば分かるのかしら…」



口ではそう言いながらも、ルーティは笑顔でデイジーの頭を撫でながら、勝利を喜んでいたのだった。




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