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家に帰るまでがダンジョンだと思います



デイジーが魔剣エッケザックス…もといレーヴァテイン・ノヴァを手にすると、ドラゴンの亡骸はあたりの炎とともに空気中に霧散するように消え始めた。最終的に、ドラゴンの頭にあった魔石だけが残された。


「これだけでもかなりの価値がありそうですよねぇ…今日で貧乏暮らしとは、さよならですぅ」

リリカはその頭ほどある魔石を軽々と片手で持ち上げる。

「とはいっても、今まで通りお金の管理は私がやらせてもらうわ。冒険に必要な物はまだまだ揃ってないから、考えなしに使うのは良くないわ。デイジーのその鞄だって、無ければ収入がぐっと減るところだったわ」

高そうで丈夫な鞄はルーティさんが買わせたものらしい。なんでもこの人に任せちゃって心配は無さそうだなとカノンは思う。

「油断せずに帰りましょう。せっかくの宝も、持ち帰れなければ無いに等しいわ」

一行は破壊された扉をくぐり、部屋を後にする。石が擦れるような音が聞こえたが、扉を閉めようとして閉まらなかった音だろう。




帰りは、デイジーの独壇場だった。ルーティに魔法を使うのは様子見するように言われていたが、他に有効な攻撃手段が無いので仕方がない。時速100km程度の推進力を持って放たれていたはずの赤と青の螺旋レーザーは、100m程を一瞬のうちにして貫くものとなった。魔物は、リリカの光に照らされたかと思うと蒸発させられるというような理不尽な倒され方をしていた。

ステータス画面を見ると、残り4710と書いてあるデイジーのMPの欄の横に+5000と表示されていた。レーヴァテイン・ノヴァは、先程とのドラゴンとの戦いでの消耗を、気にならないくらいにさせていた。休憩を挟みながらそうこうしていくうちに、あっという間に出口にたどり着いてしまった。




帰り道でも、デイジーは門番二人をもののついでというようにレーザーで吹き飛ばしていた。デイジーは、よっぽど追い返されたことを根に持っているらしい。

よく見たら入場料50ドゥカ、などと書いてあったので、カノンは横になっている門番の顔の近くに100ドゥカ硬貨を置いておいた。




「う〜ん、久しぶりの外の空気はおいしいですねえ」

「さっそく馬車を取って、ネプテュヌス共和国に帰りましょう。もう深夜だわ」

時刻は27:32を指していた。帰りの馬車は、10セットほどが待機していた。もしかしたら、この中に入って助からなかった人が大勢いるのかも知れない、とカノンは考える。彼らとは全くすれ違わなかったが、そこかしこに配置されたモンスターの密度の高い方に行ってしまったのだろうか…。

「ハァーッハッハ!面白い!小娘共、エッケザックスを手に入れ、このベス火山から生きて帰ってきたか!先程の非礼を詫びるとしよう、英雄の誕生を讃えてタダで共和国まで送ってやろうではないか!!」

行きでお世話になったデュラハンも、そこで待機していた。お言葉に甘えて、帰りもこのデュラハン馬車に乗せてもらうことにした。



「これ、どうしましょうかねぇ。ギルドで換金するのもありですしぃ、魔道具にするのもありですよねぇ」

リリカはデイジーの鞄を指差し、ニコニコしながらそう言った。

「そうね…考えてみれば私達、魔力を増強するアイテムを一つも持ってないわね。ほとんどは換金するとして、残った魔石は『ベティの魔道具店』で魔石を提供して、加工してもらうのはどうかしら」

クエスト中に獲得した魔石は、全てギルドに提出し買い取ってもらうことになっている。明記されていないが結構手数料を取られているらしく、それらは国庫に突っ込まれていると専らの噂だ。彼女達が安く魔道具を手に入れる方法は今までなかったが、ダンジョンであれば獲得したものは全部自分のものである。

「あのインチキババアに頼むの~?信用できないの!」

「私から声をかけた方が良いかもしれません。たぶん、ですけど…」

「そうかしら…心配だから、その時は私も付いていくわ」

「はい!ぜひ、お願いします」






「そろそろ街につくぞ、英雄の諸君!支度をするが良い!」

そうしてこれからのことを話し合っているうちに、共和国の町並みが見えてきた。カノンは疲れてしまったのか、1時間ほどルーティの太腿を枕にして寝ていた。

心なしか、行きよりも馬車の揺れが少ない気がした。馬車でどうやってこんな安定感を出しているのだろうか…プロの技ってやつなのかな、とカノンは思う。


「ハァーッハッハ!今日は英雄の誕生に立ち会えて気分が良いぞ!では、さらばだ!」

一行は馬車から降りると、今晩の宿に向かう。馬車の中で話し合って、「ブルネルスキの家」の四人部屋に泊まることにした。

今まで「雪解けレーヴァテイン」は別々の宿に泊まっていたが、その理由はルーティの管理する「お小遣い制」である。クエストで稼いだお金は、これからパーティの為に使う分をルーティが管理し、一日分の生活費を残った所から三等分していたのだ。

それぞれの宿に求める価値観は少しずつずれているので、全員が違う宿に泊まっていたのだった。ちなみに、一番宿に使うお金が多かったのはリリカであった。

「ここが『ブルネルスキの家』の四人部屋ですかぁ~。すっごく広いですぅ」

リリカはきょろきょろしながらそう言った。部屋を見回すたびにおっぱいがぼよんぼよんと揺れている。

四人部屋は、ホテルのスイートルームのようであった。調度品は高価そうな布を使っており、広い机の中央には「ネプテュヌシアン・グラス」と呼ばれるガラス細工が置いてあった。それは水面上で荒れ狂う、龍のような形をしていた。ネプテュヌシアン・グラスは、繊細な作りをしていて、それでいて頑丈であることから、ネプテュヌス共和国の主要輸出品の一つであった。

「防犯上の理由でも、今は高い宿に泊まるに越したことは無いわね。ここは警備員がいつも見回ってるイメージがあるから安心だわ。金に光る剣…禁じられた封印の杖、なんて、いつ盗まれてもおかしくないもの。カノンちゃん、お金建て替えてもらってありがとうね。この借りは、きっと返すから」

「いえいえそんな…みなさんの協力のおかげで、ダンジョンも攻略できたことですし」

「カノンのすっごい支援魔法が無かったらドラゴンを倒せてたかどうかわからなかったの!あれは今までで一番手強かったの」

全然手強そうにしていなかったけど、とカノンは思う。こんなに強い子だと、普通のクエストはさぞ退屈するだろう。

「デイジーさんの魔法もとんでもないですよね。あんなのにやられたら大抵の魔物は一撃じゃないですか」

「このレーヴァテイン・ノヴァのおかげなの!生まれ変わる前のレーヴァテインは、ルーティに貰ったの。わたしの、人生で一番の友だちなの!」

やっぱりルーティさんがデイジーにそう言い聞かせてたらしい。でも、ただの木の枝でどうやって魔法を出せるようになったんだろう…?とカノンは疑問を覚えるのだが、そこまで聞く気にはならなかった。

二人だけの秘密なのだろう。

「もう、デイジーったら…そういうのは、あまり口に出すものではないのよ」

「うーん、よくわからないの。ルーティはわたしと友達だって言われると、嫌なの?」

「はぁ…。デイジー、あなたとはその、ずっと離れたくないなって、思ってるから。リリカ、貴方もよ」

「は、はいいぃ…嬉しいですう」

「皆さん、本当に仲が良いんですね」

「カノンちゃん、これからもお願いできるかしら。私達、雪解けレーヴァテイン…ふふっ…のために」

(今ルーティさん、ちょっと笑った?ルーティさん、このパーティ名ちょっと面白いって思ってるんだ…。)

「はい!よろしくおねがいしますっ」


そうしてお互いの身の上話をした後、一同は寝る運びになった。デイジーはよっぽどふかふかのベッドが嬉しいのか、ぼふんぼふんと跳ねてはルーティに怒られていた。



カノンは今日まであったことを、ミケに「メッセージ」で報告することにした。

「昨日、なんだかすごい人達とパーティを組まされて、今日はダンジョンに行ってきました。お姉さんたちすっごく強くて、私が応援してるだけででっかいドラゴンをビームみたいなのでずどーん!ってやっつけちゃいました。そしたら、ドラゴンからぴかぴか光る剣が出てきて。デイジーさん、それ剣なのに、"伝説に伝わる禁じられた封印の杖"が帰ってきたーって、言ってて、それがおっかしくて。今日みんなと話した感じだと、これからも仲良くやっていけそうです。おやすみなさい、ミケさん。」



カノンは疲れで体が限界だった。三人も、すやすやと眠りについていた。私も、寝るとしよう…


カノンは寝間着に着替え、すぅ……はぁ…と深呼吸をすると、眠りに就くのであった。


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