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ボスを攻略しようと思います


「これだけあれば二年くらいは遊んで暮らせそうなの!ちまちまクエストやってる奴なんて全員バカなの!」

鞄の中でパンパンになった魔石を眺めながら、デイジーはそう言ってはしゃぐ。しかし、ルーティは、光を照らし照準を合わせる光魔法使い、敵の塊を検知する探知魔法使い、下の階に続く道を探す人、道中の一筋縄ではいかないモンスターを処理する人が揃わなければ、並の冒険者であれば2Fに進んだ時点で消し炭にされているだろうと考えた。

カノンが加入したことによって、このパーティーの死角はほとんどなくなった。あとは私がどう三人を指揮するかにかかっている…とルーティは若干の責任を感じていた。

「油断せずに進みましょう。さっきから頻繁に来るマグマが急に吹き出すトラップ、あれでカノンの魔法がなかったら全滅してるわよ」

そして5Fまで行った先には、意味深な扉があった。何やら、古代文字のようなものが書かれている。



「6つの玉を集めしものよ、この先の偉大なる龍に挑まれよ…さすれば、我が力を授けよう」



カノンにはそう"聞こえ"てきたが、他の三人はぽかんとしている。しばらくするとデイジーが扉に向かって、それをこじ開けようとしていた。カノンにも、その他の三人にも、6つの玉とやらに心当たりがなかった。扉には、その6つの玉とやらをはめる穴のようなものがあった。

カノンはゲーム的に考えると、その6つの玉はこのダンジョンのそこかしこに散らばっているのでないか、と推測する。敵の少ない最短ルートで来てしまったので、それっぽいのは一つも見当たらなかったのであろうか…。たぶん、モンスターが群がっている先の部屋に、中ボスみたいなのが居るのであろう。そう、カノンは予想する。

「なにこれ、開かないの…邪魔なの。思いっきりふっ飛ばしてやるの」

言うとデイジーは、先程までの5倍ほどの太さをした赤と青のレーザーで、溶接工事をするような要領で扉を破壊してしまった。

「デイジー…ダンジョンの中ではね、魔力は控えめにね」

「こうでもしないと開かない気がしたの。先に進むの!」

6つの玉作った人かわいそう…と思いながら、カノンは少し離れながら一行についていく。念の為、既に5回重ねがけしてあるプリセット7「雪が踊っている」を、もう一回重ねがけした。




「わぁ、おっきぃトカゲみたいなのが居るの!もしかしてこいつをぶっ飛ばせば、一生遊んで暮らせるの!?」

扉の先の部屋の中央には、禍々しい炎を纏った赤いドラゴンが居た。ドラゴンは首をぐるぐる回しながら、こちらを敵意の"音"で威嚇していた。

扉の中は、正方形のような部屋であった。後ろの扉がゴゴゴ…と音を立てるが、音を立てただけだった。たぶん、デイジーが扉を破壊しなければ、後ろの扉が閉まって、逃げられなくなる仕組みだったのだろう。

カノンは、敵の情報を確認すべく、急いでキーボードの蓋を開け、"ステータス"を参照する。


ベス・レッド・ヘル・ドラゴン



HP 70000/70000

MP 5180/5200

SP 2000/2000


スキル

火魔法LV9

咆哮LV4




マスターとどっこいの強さであるように見えた。一人であれば即座に逃げ出す相手であるが、今日はみんなが居る。みんなの体調も万全だ。全力で、行こう…!と、カノンは決意を新たにする。

カノンはキーボードをデイジーのそばに移動させ、プリセット2をデイジーの耳元で聴かせる。プリセット2は、鼓舞をし、高揚するようにもう一回弾き直していた。


ドラゴンはこちらに向けて、火の"音"を増幅させている。反撃しなければ、やられる…!

「カノンちゃん、ありがとうなの!ぶっ飛ばしてやるの!レーヴァテイン…災いを起こすの!」


デイジーは先程扉を破壊したレーザーより四倍は太い赤と青の螺旋を、二組ドラゴンに飛ばした。光のような速さで向かったそれは、ドラゴンの吐いた炎を蹴散らし、ドラゴンを貫いていった。


「まだ息があるわ、デイジー。さっきと同じようなのを、もう4発ほど撃てるかしら」

「任せるの!レーヴァテイン…これが、最後なの!」

次々と赤と青の螺旋が、ドラゴンに襲いかかる。次第にドラゴンのHPが0に近づいていくのが、カノンのステータス画面に表示される…と、ドラゴンは最後の力を振り絞り、火の玉をめちゃくちゃに吐き出した。


「みんな!部屋の外に避難して!」

「わかったの!…あぁ、レーヴァテインが!」

デイジーが持っていた木の枝…レーヴァテインに、ドラゴンの火の玉が引火してしまった。魔力を帯びてないそれは、一瞬で黒焦げになってしまった。

「ここは危険ですよぉ、早く逃げましょおぉ」

リリカはデイジーの手を引っ張る。どこにそんな力が、というくらい強い力であった。

「──"The snow is dancing"!!」

カノンは走りながら、本来弱い打鍵音で展開させる「雪が踊っている」を、激情的なメロディで演奏する。すると、一同の周りに強い氷のベールが貼られた。

「ありがとう、カノンちゃん。しばらくここで、休んでいましょう…」



一行は部屋の外に出ると、火の玉の雨が収まるまで待った。これ、デイジーが扉を破壊してなかったら倒してもこっちがやられてたんじゃ…とカノンは恐怖した。




カノンは、ドラゴンのHPが0になったのを確認すると、「あの、終わったみたいです」と一同に告げる。



まだそこかしこに火の手が及ぶ部屋の中に入ると…ドラゴンの腹の中から、一本の豪勢な剣が強い光とともに現れた。


「我こそは魔剣、エッケザックス。数々の試練を乗り越え、ドラゴンを倒した強き者よ。我が力を授けよう───」

カノンには、そう"聞こえ"てきた。私達、数々の試練なんて乗り越えてないんだけどなあ…とカノンは思う。



「ルーティ。あれ、なんか言ってるの。わかる?」

「いや、私にもよく…多分、古語か何かだと思う。ちょっと、分析してみるわ」

「あれ、すっごく高そうですぅ。売れば、10回くらいは人生が満喫できますよぉ」

一行は部屋の中心にある、エッケザックスとやらに近づく。見れば見るほどあたりの炎に反射し輝いていて、豪華な剣である。柄には、宝石が散りばめられている。


「…近づいたら、こいつの喋ってる意味がだんだんわかってきたわ。デイジー、これはレーヴァテインが生まれ変わった姿……"レーヴァテイン・ノヴァ"よ」

「おおぉ!?やったの~。レーヴァテイン、お前、帰ってきたの~~~」

「えぇ!?ルーティさんぐぐぐぐ」

カノンは喋ろうとすると、ルーティに口を塞がれてしまった。



(あの木の枝をレーヴァテインだと信じ込ませてたの、ルーティさんだったんですか…)



「レーヴァテイン・ノヴァ、お前めちゃくちゃ強くなったの~。なんだか、力がみなぎってくるみたいなの~」

「生まれ変わったレーヴァテインは力がまだ安定してないみたい。しばらく、魔法を使うのは様子見しておいた方がいいわね」

デイジーはレーヴァテイン・ノヴァをぶるんぶるんと振り回していた。


(この人達がそう言うのなら、この剣"魔剣エッケザックス"は今日から"伝説に伝わる禁じられた封印の杖"で、"レーヴァテイン・ノヴァ"なんじゃないかな…うん、きっと、そう)



カノンは、すっかり一行に毒されてしまっていたのであった。





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