03 そんな恨み深い物語
「大体言われなくてもわかるでしょうが…」
「いや悪かったって、悪かったから今回だけ水に流してもらえへんやろか。」
「はあ、今回だけですよ。次はないですからね。」
「ふう、やっと帰ったか。GMが来るとはな。次から気を付けないとあかんな。」
「ところでテニカさん、いったいなにしたんですか。」
ノナさんが興味深そうに聞いていた。
まあ、返事が返ってくる前に、チョウに気を取られたのか全く目線があっていなかったのだが。
…ノナさん、現実世界でカウンセラーなのにそれは大丈夫か?
「何かと言われても、通信の最中に叫びすぎたぐらいやで。こんな状況だから仕方ないとかいう温情はないんかなあのGMは。」
「僕はこの状況だからこそ静かになるものだと思いますけどね。」
「まあいつも冷静なチェドにはわからへんやろうな。」
「いや僕だって…」
なんていう、たわいのない会話の中、まだノナさんはチョウを見続けている。
「ノナさん大丈夫ですか?」
「はっ、大丈夫ですよ。チョウに夢中になってました。」
「何かチョウに特別な思い出でもあるんですか。」
「あるにはありますけど、大したものじゃないです、チョウが好きなだけですよ。」
…この人、マイペースすぎませんかね。どちらかというと天然みたいだけど。
「にしてもあんたはな…」
「もう、わかりましたから。ダバルさん、助けてください。」
「がんばってください、女の人の小言は結構長いですから。」
「そんなのわかってますよ。」
「ちょっとそこの男二人ここに座ろか。」
「やらかしましたかね、これ。」
チェドの絶望に満ちた声が聞こえた。