踊る蝙蝠。
近ごろは厳重過ぎていて―――飯にありつくことすら困難になりつつある。
先ず、だいたいカギがかけられていて。
窓越しに見えた艶かしい身体がその向きを変える度に苛立ち、地団駄を踏むばかりなのであった。
特に御札などや、口にするのも忌まわしいニンニクの飾り付けなんてのはなく、なのにお預けを食らうという状況。
十字架も見当たらない。
そんなセキュリティの完璧さに、お手上げ状態で―――
「はぁ……もう、潮時なのかなァ……」
漆黒のマントが項垂れる。
痩けた頬と白髪が目立ち、額に寄せた皺。
唯一、煌めく牙か、八重歯の行方に戸惑う。
時代遅れの吸血鬼。
ノーライフキングとされていた頃が懐かしい。