第8話 若いのが好き?
ハーミット3(ドライ)
全長:10m(情報管制装置含む)
全高:18m(頭頂高)
全幅:11m
欧州連合軍初の実戦型人型機動兵器として開発された。
小型核融合炉と第二世代量子コンピューターを搭載し、バッテリー駆動かつ第一世代量子コンピューター搭載型の人型機動兵器に比べ、段違いの性能を持っている。
格闘型に設定されており、4機のハーミットの中で最も情報管制能力が高い。背部にレーダーと大型の情報管制用のコンピューターを搭載しており、ハーミットのみならず友軍全体の情報管制を行う事が出来る。実質ワカバ専用機
☆マインクラフト詳細☆
YASUDE氏が作っていた天狗という機体を、この小説用に私がプロトタイプという設定で小改造した機体です。元の天狗では組み込まれている当サーバー独特の稼働回路は組み込んでいない機体です。
俺たちがフランス(レンヌ)からアルスター基地へ戻って数日間、欧州戦線は主立った戦闘は行われずにいた。欧州連合内に落ちていた隕石はヴェネツィア共和国よりも遠い内陸部にあったので、彼の国でも大戦力を投入するには難しい場所ばかりだった。また、レンヌの隕石解析後に各国が連携して迅速に回収が行われたので、彼の国が侵略する大義名分もあまりなかった。
そんな状況でも手つかずで残された隕石が一つあった。欧州連合東部のヴェラルーシに広がるペレコープ平原の隕石だ。ここは元々は平原ではない。大災厄の中でも一際大きな隕石が落ちたことにより、小国一つが吹き飛んで平原と化した地域だった。汚染範囲が広範囲かつ荒れ果てた僻地なので、隕石の価値に気づくまでは完全に放置されていた。現在は欧州連合が急ピッチでクレーターまでの除染作業を行い、隕石の回収を急いでいる。
次の作戦の指示があるまでの間、俺はドイチェス・ライヒ(ドイツ)語の習熟に励んでいた。俺がいる時は皆が合わせてくれるが、いつまでも甘えているのは嫌だったし、何より街へ出たときが不便だった。今はVRラーニング器機という日常に写る全ての物が外国語と指定した言語の同時表示されるゴーグルがあり、一昔前とは比べものにならないほど単語などの習熟は簡単になった。この調子ならあと半月ほどで日常会話はマスターできそうな感じだった。
=アルスター基地内演習場=
金属と金属が激しくぶつかり合う衝撃音が響く。ハーミット0(ゼロ)とハーミット2(ツヴァイ)が模擬近接戦を行っていた。
ヴェルドゥラがプラズマソードで袈裟斬りしにかかる。それをロジャーが表面にプラズマを纏わせた右手で弾いた。音の正体はこのときのものであった。
「今のを弾かれるとは思わなかったぜ!」
「まだまだ懐が甘いぜ!」
実際、先の攻撃で決まると思っていた俺はロジャーの反応に感嘆した。ハーミット0(ゼロ)の装備しているプラズマソードの出力よりも、ハーミット2(ツヴァイ)の簡易マニピュレーターの方が、本体動力と直結の分、高出力で当たり負けするのだった。
「ようし、だったらこれならどうだ!」
左手に装備した40mmライジヌガンをマウントに戻し、もう1本のプラズマソードを装備した。
「ほう、二刀流か。でも意味ないと思うぜ!」
数回の斬撃をロジャーが両手で巧みに捌ききっていた。驚くべき格闘センスだが、その操作についてくる機体も凄いものだ。
『よし、そろそろだな。』
最後の斬撃をしたあと少し後退した。その瞬間に右手のプラズマソードのをハーミット2(ツヴァイ)の顔面に向けて投擲した。
「それも甘いぜ・・・。ん!?」
俺は投擲したと同時に、左手に残ったプラズマソードを突き立てる姿勢で一気に加速していた。それと同時にマウントに納めていた40mmライジヌガンを右手に装備し連射する。
「っぐ、間に合わない!」
ロジャーがそう言い、飛んできたプラズマソードを弾き、連射された模擬弾をシールドで防いだ瞬間に、俺はプラズマソードをロジャーの機体胴体直前で止めた。
「一本だな!」
「やれやれ、接近戦で負けるとは思わなかったぜ。」
「最後は40mmライジヌガンを使ったけどね。」
「いや、あの距離ならあれも接近戦の内だ。」
「多分あのまま斬りつけていたらプラズマソードが保たなそうだったからなぁ。」
2体とも非戦闘モードに切り替えた瞬間に、プラズマを帯びていたソードと簡易マニピュレーターが、オレンジ色に輝いていた状態から本来の鈍い金属色に戻った。ソードには弾かれた時によるものと思われる損傷部分が目立ち、実際あともう少しで完全に使用不可能になりそうな状態だった。
「ま、次は負けねーからな!」
潔く負けを認め、ロジャーは次の勝利を宣言した。
「あいつが2(ツヴァイ)に乗った方が強そうな気がしてきた。」
少し離れていた場所でモニタリングしていたワカバが呟いた。
「いや、あいつは射撃も出来る万能タイプなのであのままの方がベストだろう。実機での射撃も俺に次いで点数が高い。」
同じくモニタリングしていたギルベルトは、ワカバの呟きにブラックコーヒーを飲みながら返した。
「うむむ、家にハーミットのシミュレーターがあって、ゲーム代わりにずっとやっていたって言うからズルいわ。」
「まあそれもあるだろうが、シミュレーターと実機ではやはり違うから、あいつの天賦の才もあるんだろう。」
「悔しい・・・。」
「さあさあ、皆さん訓練の時間は終了ですわよ。お茶にいたしましょう。」
ギルベルト少佐の横で何かを悔しがっているワカバと、機体から下りてきた俺とロジャーを後目に、リリアが場違いなティーセットを準備しだした。初めて見たときは驚いたが、この部隊では普通の事らしい。すげえなドイチェス・ライヒの軍隊。
数日後、俺たちはブリーフィングルームにいた。
「我々が回収作業を進めているペレコープ平原のクレーターに向けて敵の進軍が確認された。欧州連合内に残された未回収の隕石を狙って、我々が除染したこのタイミングで進軍してきたと思われる。」
「環境改善装置を待っていたのか。」
室内にいた誰かが呟いた。
「うむ。敵も各所に展開しているから、こちらへ自分たちの物を持ってくるより我々が除染するのを待っていたのだろう。」
忌々しげに作戦をする将校が答えて続ける。
「今回の作戦は、何としてもこちらの回収作業を死守することだ。クレーターより約20km離れた敵の進路上に防衛部隊を展開してこれをたたく。以上だ。」
この数時間後、俺たちはペレコープへ出発した。
=ペレコープ平原 欧州連合総合駐屯地=
欧州連合にとって負けられない作戦であるため、各国からかなりの部隊が集まっていた。戦車大隊、戦闘車両もかなりいる上に今回は味方にヘリもいた。大災厄前でもこれだけの部隊が揃っているのはなかなか無かったのではないだろうか?
「凄いなヨーロッパ中の兵器の見本市みたいだ。」
指定された待機場所にハーミットや機材を置いたあと、食事場所へ向かう道中でヴィクターが周囲を見ながら口にした。俺もマニアでは無いが、兵器の種類などはある程度理解していたので同感だった。
「ハーミットの量産機が開発されているという噂があったのだが、この作戦には間に合わなかったようだな。」
「我々のハーミットでさえ急ピッチでやっと運用状態にもってこれたらしいですものね。」
先頭を歩いていたギルベルト少佐とリリアのやり取りを聞き、俺も周囲を見渡したが人型機動兵器は他には見あたらなかった。
「お!あいつ強そうだな。勝負してみてぇ!」
何やらロジャーが各国の兵士たちの品定めをしているようだが聞こえない振りをする。お互い敬語も使わない関係になっていい兄貴分なんだが、この人はこういう時って子供っぽいんだよなぁ。
「本当脳筋なんだから。」
「んだよ!強い奴と勝負してみたいのは男なら誰でも少しはあるだろうよ!な、ヴェルドゥラ!」
呆れるワカバにロジャーが持論を展開し、俺に同意を求めてきた。
「まあ試合の時とかは特にあるかな・・・。」
「ほら見ろよ!普通はそんなもんなんだよ!」
当たり障りのない返答のつもりだったが、ロジャーにとっては完全同意と受け取ったようだ。
「同じく脳筋だしこいつに聞いても説得力ないわよ。」
やれやれといった仕草のワカバに、どう言い返してやろうかと思った時、夕食が用意されているドイチェス・ライヒの大型テントに到着した。
広さは移動サーカスが用いるようなテントくらいだろうか、思っていた以上に中は広かった。
中には俺たち以外にも本国から来た様々な部隊の人間が大勢いて異様な活気があった。
「テントに戻るのも面倒だしここで食事をとるか。」
ギルベルト少佐が全員が座れる場所を発見しそう言うと、俺たちは頷いて答えた。
「じゃあ俺飯とってきます。」
「俺たちも手伝うぜ。」
ロジャーとヴィクターも手伝ってくれたので、一度で全員の分を運ぶ事が出来た。席に戻ると隊長たちが横の座席の陽気そうな連中と話していた。
「マジ羨ましいです!こんな美人と可愛い娘ちゃんが部隊にいるなんて!うちなんて男しかいなくてむさ苦しいですからね!」
「フランツ・・・お前には綺麗な奥さんがいるだろうがよ!」
「純粋に職場で華があるのは羨ましいじゃねーかよ!」
部隊章で確認すると戦車部隊らしき連中で、リリアとワカバがいることを羨ましがっていた。しかし、リリアはともかくとして、ワカバがねぇ・・・。
「お待たせしました~。」
俺とロジャーたちは皆の食事をテーブルの上に並べた。
「でもこいつに興味あるならロリコンになっちゃいますよ?」
ワカバの前の席に腰をかけながらフランツという戦車兵に声をかけた。
間髪入れずにテーブルの下でワカバに脛を蹴られた。
「いてぇっ!!」
「あんたより年上だっつうの!」
「マジで!?君何歳?」
俺たちのやり取りを面白そうに笑いながら、軽そうな男が質問した。
「初対面のレディーにいきなり年齢を聞くなんて失礼よ、あたしは気にしないから教えてあげるけど19よ。」
「19?そこの悶絶してる彼の言うとおり、もっと若いかと思ったぜ。ってヨアヒム、何残念そうな顔してんだよ(笑)」
「してねぇっての!俺はロリコンじゃない!」
「俺は第15戦車隊所属のフランツだ。既婚者だけどよろしくな!こいつはロリコンのヨアヒム。毛嫌いしないでやってくれ。」
「違うっての!」
俺たちはノリの良い彼らと意気投合し、休養班の隊員に片づけでどかされるまでテント内で盛り上がったのだった。
この時は翌日の激しい戦闘があることなど皆知らないのであった。
下書きは2月時点で出来ていたのですが、体調不良やその他諸々で更新が遅れました(汗)
地図やハーミットの機体画像なども現在編集中で、近日中に載せれたらと思っています。