第2話 騎士としての覚醒
ハーミット0(ゼロ)
全長:10m(スラスター含む)
全高:18m(頭頂高)
全幅:11m
欧州連合軍初の実戦型人型機動兵器として開発された。
小型核融合炉と第二世代量子コンピューターを搭載し、バッテリー駆動かつ第一世代量子コンピューター搭載型の人型機動兵器に比べ、段違いの性能を持っている。
万能型に設定されており、4機のハーミットの中で最もバランスが良い。バイオメトリクス登録によりヴェルドゥラ以外はメンテナンス稼働以外の実戦操縦は出来ない。
☆マインクラフト詳細☆
YASUDE氏が作っていた天狗という機体を、この小説用に私がプロトタイプという設定で小改造した機体です。元の天狗では組み込まれている当サーバー独特の稼働回路は組み込んでいない機体です。
緑色の機体に力がみなぎり、顔のモノアイに光がともり、人型機動兵器『ハーミット』が動き出した。
新型の量子コンピューター制御により、従来のコンピューターはもちろん、二世代前のマイクロプロセッサとは比べものにならない演算能力を持ち、その巨体をなめらかに制御している。
小型の核融合炉は動力を余すことなく全身に伝わせ、重々しさを感じさせることなくそれは歩き出した。
「操縦方法はゲームと同じだな・・・。早くこれで親父たちを探しに・・・。」
そう呟いたとき、更にミサイルが着弾したのか、機体に乗り込む前に車が爆発した向こう側のシャッターが爆発した。
「ちっ、まだやってやがるのか!どのみち外からじゃないとあそこには行けないな。」
レバーを引き、機体を爆発があったシャッターの方へ向かわせ様とした刹那・・・急激な加速により、全身を凄まじいGが襲った。
ック、何て加速だ!!もっとシビアに操縦しないと!と思っていると、予想以上に加速したため、大破したシャッターをぶち破り外へと一気に飛び出した。
外はまだ国軍とヴェネツィア共和国軍との戦闘の真っ最中らしく、至る所で砲弾やミサイルが飛び交っていた。というよりも国軍がほぼ掃討されている状態だった。
「何だあの機体は?あんなのがいるとは聞いていないぞ。」
ヴェネツィア共和国軍の人型機動兵器、A.B.C-Soldatoを駆る兵士の一人が、高台から飛び出してきた初めて見る機体を前にし、誰にいうでも無く呟いた。
「うおぉぉ!?」
思ったより高い位置に飛び出したらしく、俺は慌てて姿勢制御を試みた。ピーキーな挙動にてこずりながらも、無事に市街地の道路上へ着地することができた。
コクピットのモニターには味方を意味するIFF(味方識別信号)は極わずかで、勝敗は決しているようだった。その信号表示の向こうには、機体の前にいるGolem-Mk2(サイクロプス)が映し出されている。IFFは当然の如く「敵」を表していた。
「緑の機体のパイロットに告げる!貴公の所属と氏名を名乗られたい。私はヴェネツィア共和国軍、ノルド第1小隊ミリアム・サマンサ・パルマ中尉である。」
サイクロプスのパイロットであるミリアムは、IFFに正体不明を意味する「Unknown」が表示を美しい瞳で確認し、その機体に向かって、相手の動作に注意しながらそう伝えつつ思案する。
もし、敵軍の機体ならここで鹵獲、または破壊しなくてはならない。だが、相手の能力が未知数なので迂闊に手を出すのは危険だと。
ミリアムは飛び級で17歳の時に士官学校を首席で卒業したエリートであり、部隊へ配属されてからもその頭角をすぐに現した才女で容姿端麗ではあるが、軍規に忠実過ぎるきらいがあり、他を寄せ付けない雰囲気があった。しかし、その判断力や実力は一目置かれており、配属後1年足らずで小隊長を任されるほどになっていた。
ヴェルドゥラは外部スピーカーからとおぼしき、相手の声を聞きながらどうやって返事をしたらいいのかを考えていたが、モニターにそれらしき表示があったので、押してみるとビンゴだったようだ。
「どこの所属でもねぇ。俺はヴェルドゥラだ。どいてくれ、家族を捜しに行くだけだ。」
その返答を聞いたミリアムは更に思案と困惑した。
明らかに軍用機と思われる機体から返ってくる返答ではなく、おそらくその内容にも嘘は無いと直感的に感じたからだ。このタイミングで武装もせず、壁をぶち破ってこんな場所に出てくる敵がいるとも思えない。それに、操作に慣れていない様にも感じる。
しかし、一般人だとしてもなぜこんなものに乗っているのか?それに相手の機体には武装無さそうなので鹵獲は容易なのではないか。
「ではヴェルドゥラよ、軍属ではないのであれば即刻その機体を降りて投降せよ。それは明らかに軍用機であり、我が軍としてはこのまま見逃すわけには行かない。」
「ああ?ハイ解りましたって降りるとでも思ってんのかよこの女は・・・」
外部スピーカーを入れていること忘れたままそうつぶやいたので、ミリアムにもそのまま耳にそのセリフが入った。
とりあえず力ずくで拘束するしかないか・・・とミリアムが思ったとき。ヴェルドゥラが動いた。
「とにかく俺は急いでるんだ!どいてくれる気がねぇなら俺は行くぜ。」
その言うと同時に廃坑の入口があった斜面迄の、最短距離上にいるミリアムの機体の方へハーミットを進ませた。
「速い!!?」
素手の状態でこちらへ突っ込んでくるハーミット見てミリアムは驚愕した。自軍の機体にここまでの速度を出せる機体が無かったからだ。だが、まだこの距離なら避けられる。そう思った時、ミリアムの危機と感じた友軍のA.B.C-Soldatoが、主武装である105mmライフル砲をハーミットに向けて発砲しようとしていた。
「よせ!」
ミリアムがそう言った時には、砲口から轟音とともに砲弾が発射された瞬間であった。
A.B.C-Soldatoはミリアムのやや後ろ方向に控えていたため、速度は出ているがこちらへ向かって突っ込んでくる捕捉した状態のハーミットを狙撃することは容易であった。
ゴォンという鈍い音と共にハーミットの動きが止まった。
「痛ってぇ!死ぬかと思ったじぇねーか!」
砲口初速約1.500mの砲弾を前進しながら受けて無事だと!?どんな装甲でできているんだ?ミリアムも砲撃したA.B.C-Soldatoの兵士も驚愕した。
「くそっ!戦わないと抜けられねぇか!何か武器は無いのか!?」
急いで武装の検索を行うと、シミュレーターと同様にモニター上へ剣のような近接武器が使用可能である表示が出たので、ヴェルドゥラは迷わずにそれを使用する操作を行った。
機体背部の左下から脇を通り、折り畳み式の直剣が現れ、右手でグリップを握ると、二つ折りだった刀身が展開され、プラズマソードがにぶくオレンジ色に輝いた。この一連の動作は操作決定ボタンを押すと自動で即座に行われた。
接近戦用の武器はヴェルドゥラにとっては、シミュレーターで最も得意な武器だったので、初めての実戦にも関わらず妙な自信があった。
一方のミリアムは初めて見る武装にどう対処すべきか考えていた。これまでヴェネツィア共和国にしか人型機動兵器はなく、それに対する接近戦用の武装など用意されていなかったのだ。
無傷で鹵獲するのは難しいかもしれない。そう考え、友軍間通信で部下に指示を出した。
「奴の近接武器の性能が解らぬゆえ、各自距離をとって攻撃せよ!BとCは私の両脇から砲撃を開始。戦車隊は遠巻きから脚を狙え!」
指示を受けた兵たちは即座に、その内容を実行した。ミリアムだけではなくノルド第1小隊は優秀な兵が多く配属されていた。
ヴェルドゥラは相手の照準器が、ハーミットに照射されることによる警告を的確に対処し、機動力を生かして砲撃を回避していた。その合間にまずは簡単に無力化できそうな戦車(TENGUHAMU)へ一気に近づき、砲身をプラズマソードで切断していく。ハーミットに対して機動力ではるかに劣る戦車では、回避する間も無く全5両が砲身を切られ無力化した。
「何て奴だ・・・。」
忌々し気に呟くミリアムのGolem-Mk2(サイクロプス)も、2機のA.B.C-Soldatoと、105mmライフル砲でハーミットを狙うが全く当たらない。それだけではなく、ハーミットは回避行動をとりつつ戦車5両を無力化するという芸当を見せつけた。
「シミュレーターの機体より動きがいいな・・・一気にかたをつける!」
3機の敵のうち、わずかに離れていたA.B.C-Soldatoへと一気に距離を詰め、自身の駆るハーミットよりも若干大きな機体の下半身を一振りで切り裂いた。立つことが出来なくなり、崩れ落ちる機体の向こうで、もう1機が砲撃しようと砲口を向けようとする。が、しかし、ヴェルドゥラは機体をその敵へ即座に正対させ、加速しつつ接近し、ライフル砲をもつ右腕と切断、振り向きざまに左足を切断して行動不能にする。
「は、速い!何てスピードの機体だ・・・」
片足を失い、崩れ落ちる機体の中でヴェネツィア共和国は驚いた。
倒れ行く友軍機をミリアムはモニター上で確認しながら、咄嗟にライフル砲をハーミットに発砲した。ミリアムのGolem-Mk2(サイクロプス)はA.B.C-Soldatoより小型だが、トータルの性能面は高く、取り回しも良い。
しかし、それでもヴェルドゥラは初めてハーミットを操縦するにも関わらず、その砲撃を華麗に躱し、その流れでサイクロプスへ急接近し斬りかかる。
「そんなに操縦が出来て、軍属でないはずがないだろう!?」
プラズマソードを持つハーミットの右腕を、ライフル砲の砲身で払いのけながら、外部スピーカーを使い、ヴェルドゥラに対して問い詰めるが・・・。
「さっきも言ったが、俺は軍属じゃねぇし、今年就職するところだっての!操縦は家にあったゲームと同じだから、たまたま出来てただけだ!」
「ゲーム!?」
ミリアムは驚きながらも砲撃を行うため間合いを取ろうとするが、うまく懐に入ってくるハーミットに発砲できずにいた。しかし、模擬戦闘でもトップレベルの技量を持っていたミリアムは、繊細な操作でフェイントを行い、それにかかったハーミットと、砲撃可能な距離を一瞬作ることができた。
「そういつまでもうまくいくほど実戦は甘くないのよ!!」
ハーミットを照準にとらえた瞬間に、間髪入れずに引き金を引いた。この距離で当てれば完全に仕留められる!そう思い勝利を確信したとき、ヴェルドゥラはフルスロットルで加速し、砲弾の真横をすり抜け、サイクロプスの右腕を水平に斬り抜いたのち、ミリアムが機体を振り向かせるのより早く、サイクロプスの左腕を縦斬りで肩から切断した。
「信じられない・・・」
それがミリアムを含めたその場にいたヴェネツィア共和国兵士全員の気持ちだった。今まで自分たち以外に人型機動兵器を持つ軍隊もなく、絶対的優位性の元で戦ってきた自分たちが、運用も熟練の域に到達していたと、そう思っていたのに1機の敵国の見知らぬ兵器により、短時間で1個小隊を無力化されてしまったのだから。
「やっと片付いたな、早くおやじたちの所へ・・・」
戦闘の緊張から解放され、家族を捜しに廃坑へ向かおうとしたその時。
『予期せぬエネルギーダウンを確認。操縦系統のシステムを維持できません。』
コックピット内が赤い非常灯のみになり、画面上にと同じ文言がアナウンスされる。
「おい!動いてくれ!」
ガチャガチャと操縦桿を動かしたり、解決策が無いかコックピット内の操作類やモニターを確認するが、ハーミットは完全に沈黙したままになった。
ミリアムも何が起きたのか解らぬまま、モニター越しにハーミットをしばらく見ていると、レーダー表示に敵航空機の表示が現れた。
「こんなタイミングで敵の増援?」
脚部の破損は無かったので、警戒しながらもハーミットから距離を取り、大破して動けなくなっている友軍機のそばまで移動し、部下の安否確認をする。
間もなくして欧州連合軍のエンブレムが入った高速輸送機が飛来し、ハーミットの上空で静止したかと思った瞬間、数本のワイヤーアンカーを射出し、ヴェルドゥラが乗ったままのハーミットを吊り上げていく。
「なんだ!?」
吊り上げられているヴェルドゥラは、現状を把握できていなかったが、地面が遠くなっていくモニターに映る景色を見て、自分が空輸されようとしていることに気づく。
「待て!誰だか知らねぇが、俺は家族を捜しに行かないとダメなんだ!待ってくれ!!」
外部スピーカーを使用し大声でそう頼むが、輸送機からは何の応答も無く、どんどんとその場を離れていくのであった。
小さくなって見えなくなっていく、輸送機とハーミットをコックピットから降りたミリアムは地上から無言で見つめていた。
その後、この地での戦闘はヴェネツィア共和国の勝利に終わり、マイリンゲンは占領された。詳細不明の緑の機体により、局地的に大きな被害を被ったことは、ヴェネツィア共和国内で大きな話題となった。
=登場人物=
【ヴェルドゥラ・Y・ベラルディ】
身長:189㎝
体重:100㎏
年齢:18歳
髪色:ライトブラウン
特技:格闘技全般
趣味:機械いじり・アウトドア全般
堀の深い顔で筋骨隆々の脳筋系の見た目だが、本来なら国立トップの大学へも進学できるほどの頭脳を持つ文武両道な男である。年下などへの面倒見も良く、インドア・アウトドアのどちらも趣味である欠点の少ないように見えるが、熱血過ぎることがたまに瑕。空手部の後輩からは熱血王と呼ばれ、部内では厳しい先輩の一人として恐れられていた。
年の離れた6歳の弟マウロを溺愛している。
【ミリアム・サマンサ・パルマ】
身長:175㎝
体重:??
年齢:18歳
髪色:ブロンド
特技:バレエ・バイオリン・機械操縦
趣味:読書
位の高い貴族の令嬢だが、家柄だけでなく自分で努力して、名声を上げたいと言い、家を飛び出して士官学校へ入った。もともと才女であり何の問題も無く過ごしてきたが、本人は意識していないが他人を寄せ付けにくい雰囲気がある。
上記の経緯や学生時代にモデルの仕事もしてみたりと、自己顕示欲が強い節は見られる。