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こういうストーリーは唐突にはじまるもの

「親父、一体何があったんだ!」


ボロアパート一階の奥の部屋、玄関の戸を勢いよく開けた。


「母さんが誘拐されたって――」


 狭い玄関兼台所から二間しかない部屋に入り、固まった。

 そりゃそうだろう。母さんが誘拐されたって聞いたんだ。なのに、そう泣きながら電話してきた親父が母さんのパンティストッキングをクンクンと鼻にあてて嗅いでいるんだ。そりゃ固まるよ。正常な反応だよ。


「洗濯はしたがまだ微かに残る香り、今のうちに嗅いでおかねば……」


 息子が帰宅したことにも気がつかずパンティストッキングを嗅ぎ続ける親父の姿を、切なげに見つめる。

 放課後、教室で仲の良い友人たちと談笑しているとスマートフォンに電話が入った。発信先が親父だったので最初は無視していたのだが、あまりにもしつこかったため友人たちに断りを入れて電話に出た。すすり泣きが聞こえる。


『ハルが誘拐された』


 ハルは母さんの名前だ。一瞬言葉に詰まり、どういうことかと尋ねようとしたが、


『お前は大丈夫か? 全然電話に出てくれないから心配したんだぞ。いや無事ならそれでいい。無事ならそれでいいんだ。おお、愛しい我が息子、我が息子よ!』


 と段々煩くなってきたので、通話停止ボタンを押した。

 通っている高校から自転車で20分程度で自宅に着く。急げば15分ほど。興奮状態の親父が心配になり、家に帰ることにした。


「親父、何やってるんだ」

 

 肩を叩き声をかけると、


「帰ってきてくれたんだな、一郎(いちろう)


 親父は、ストッキングを握りしめたままこちらに振り向く。鼻水がストッキングに粘りついている。汚い。あとで母さんに怒られること間違いなしだ。

 部屋を見渡すと確かに母さんは不在のようだ。この時間帯は大抵家にいるのに。親父の戯言に真実味が帯びてくる。


「母さんが誘拐って。……まさか! 犯人から何か要求があったか。身代金……でもうちにそんな金ないよな。どうするんだよ、マジで」


「誘拐した奴は分かっている。『()()』だ」


「は?」


 驚いて目を見張る。今、なんて言った? リアリティーのない言葉に唖然としていると親父は矢継ぎ早に言う。


「今だから言うが、実はお父さんたちは駆け落ちしたんだ。ハルは魔王の一人娘。魔王(やつ)は娘を溺愛していた。お父さんがハルと一緒になれる居場所はあそこにはない。だから私たちは逃げ出したんだ。あの世界から!」


「え、ちょっと何言ってるか分からないデス」


「つまりだ。お前のお祖父ちゃんがハルを連れ戻してしまったんだよ、異世界に」


「異世界?」


 異世界というとあれか。今、流行のファンタジー? な世界に転生とかしちゃって魔物とかとバンバン戦うゲーム的なアレのことか。

 面白いよな。アニメとか漫画とかラノベとか。自分もアプリのゲームでいくつかやってるけど、キャラ育成とか戦闘モーションとか、それぞれの作品にこだわりがあって。

 ……え、どういうことだ。


「ハルの気配がこの世界から消えてしまったんだよ。お父さんたちはこちらの人間じゃないせいか、お互い離れていても気配を感じることが出来るんだ」


 何、その厨二的な設定。

 呆然としていると、親父は勢いよく立ち上がり、部屋の隅に置いてあるタンスの引き出しを開けた。


「お前も帰ってきたことだし、今からハルを迎えに行こう」


「行くって、どこへ?」


「勿論、あちらの世界さ」


 そう言って親父は引き出しから青い珠が連なった数珠を取り出す。


「この珠に願えばあちらに行けるんだ。さあ、手を出して」


 混乱しているまま、言われた通り手を差し出すと数珠と一緒にぎゅっと握られる。反対の手にはストッキング。


「私たちを元の世界へ――」


 親父の声とともに珠が光りはじめる。辺り一面を光が包む。その眩しさに目を閉じた。耳鳴りがしはじめて頭が痛くなる。脳みそを鷲掴みされたように揺らされている気分だ。


(酔っている気分だ)


 何が何だかよく分からなくなり、いつの間にか意識を失っていた。  

色々な異世界ものが流行しているので、流行に乗りたい! …でも、ラブとかロマンスとか書けないし。試行錯誤しながらのんびり更新しますね。

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