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特訓-04

「よし、まずはMET魔法だ。」

「エネルギーを取り出すのですか?」

「いや、破壊魔法だな。MET弾頭の方だ。」


その名の通り、物質をエネルギーに変換して放出するという、かなりえげつない魔法だ。

投入した以上のエネルギーを開放できるのが最大のメリットだ。

もちろん物質が無いと発動は出来ないし、そのままでは指向性が無いので距離減衰が著しい事から、密集したザコ敵を殲滅するような使い方しかできないだろう。

なお、物質をエネルギーに変換する過程で必要な励起状態にするには莫大なエネルギーが必要となるので、変換する質量に応じて必要な魔法レベルが上がっていく事になる。

更に、複雑な演算を伴うイメージングが必要なので、発動までに時間が掛かるのが難点だ。


「とりあえずやってみよう。」

「はい。」


10mほど離れた地面から小石を1つ選んで宙に浮かせ、その周りをバリアで覆った。

それから苦労しながらイメージングを完了させMET魔法を発動させた。

可視光線だけを無害なレベルでバリアを透過させたが、内部はミニチュア版の宇宙誕生のようだった。

解放された膨大なエネルギーの一部は、再び素粒子を経て物質に戻っているのだろう。


「美しいですね。」

「中に入ったら黒焦げじゃ済まないけどな。」

「綺麗な花には棘があるものです。」

「ナホには無いぞ?」

「相変わらずですね。ところで、理論を完全に習得した状態とは言え、かなり複雑な理論をよく暗算で計算できますね?」

「あぁ、中級魔法にメモリー魔法ってのがあるんだよ。だから暗算っていうよりは紙に書き出しながら演算してるようなもんだな。」

「便利ですね。」

「逆にメモリー魔法が使えないと、よっぽど頭が良くない限りは複雑な魔法を使うのは難しいだろうな。」

「なるほど。そういう場合はMSを使うんでしょうね。」

「機械軍の残党相手にはそれで充分だしな。」


ある事に気付いて俺は青ざめた。


「この魔法・・・俺が的になったら、どうすりゃいいんだ?」

「そうですね、ロックオンレーダーのような前兆は無いのですか?」

「んー、励起過程があるにはあるが、一瞬だからな・・・」

「そういえば、離れた場所でも魔法は発動できるのですね。」

「そりゃ、目の前であんなもの発動させたくないからな。」

「ひょっとして・・・レーザーも遠隔発動可能ですか?」

「イメージすれば出来るんじゃないか?ちょっと試してみる。」


俺は丁度100m程離れた場所からレーザーを発射してみた。


「発動座標さえ指定すれば、離れてても特に問題ないみたいだな。」

「コウ、非常にまずいですよ。敵がコウの体内でレーザーを発射したら・・・」

「あ・・・」


気を付けているつもりでも、長年染み付いた通常戦闘の感覚で考えてしまう。

拳銃弾1発程度の運動エネルギー魔法ですら脳内で発動されれば即死だ。


「遠隔発動が可能な敵が相手では初級戦闘魔法のバリアでは対応できませんね。」

「未実証の魔法の中に対応できるのがあればいいんだが・・・」

「それらはルキフェル隊から供与された魔法なのですか?」

「スメラで考えたのと両方混じってるらしい。」

「なるほど、供与されたものが含まれているなら問題ないでしょう。」

「さすがにノーガードの打ち合いで早い者勝ちって事は無いだろうなぁ・・・とりあえず、続けてみよう。」

「はい。」

「次はMET魔法の逆、EMT魔法だな。」


EMT魔法は、Energy-Mass Translation、即ち、魔力エネルギーを物質に変換する魔法だ。


「物質創造ですか?」

「あぁ、せっかくだから金塊でも作ってみるか。」

「楽しみです。」


俺は金原子を魔法で作り出していった。


「うーん・・・」

「どうしました?」

「いや、作ってはいるんだが・・・数がな・・・」

「なるほど、相当な数を作らないと目視できるレベルになりませんね。同時に大量には作れないのですか?」

「大量に作ってるつもりなんだが、それでも時間が掛かるんだ。」

「MET魔法は一撃でできていましたが、EMT魔法はそうはいかないんですね。」

「あぁ、MET魔法は指定した空間に存在する質量をただエネルギーとして解放するだけだが、EMT魔法で特定の元素だけを作る場合にはそうはいかないからな。」

「イメージング力の限界ですね。」


「まぁ、できないものはしょうがない。次は通信魔法だ。」

「どのような魔法なのですか?」

「まず、大前提として魔法は発動と同時に発動するんだ。」

「そのままの意味としか思えませんが?」

「さっきの遠隔発動させたレーザーだが、俺が発動させた0秒後に発射した筈だ。」

「まさか、情報が光速以上のスピードで伝達したのですか?」

「実界から見るとそうなるな。厳密に言うと伝達じゃなくて、虚界の一点で繋がってるから虚界から見れば同じ座標で起きている現象になる・・・と言われている。」

「不思議なものですね。」

「理論はともかく、光年レベルで離れた場所同士での通信には必須らしい。」

「なるほど、電波通信では片道だけで年単位の時間がかかりますね。」

「だから、魔法で音波や電波、電気信号なんかを相手方に送り届けるんだ。とりあえず試してみよう。」


俺はキットを10km離れた場所まで魔法で移動させて、通信魔法を起動した。


『キット、聞こえるか?』

『はい、すぐそばで聞こえます。コウは聞こえていますか?』

『あぁ、問題ない。じゃあ戻すぞ。』

『はい。』


10km離れているので音速を秒速340mだとすると本来なら30秒程かかるが、通信魔法なら瞬時に伝わる事が確認できた。


「便利な魔法ですね。」

「戦闘に情報は欠かせないからな。」

「しかし、不思議です・・・」

「何がだ?」

「魔法が遠隔発動可能なら、どうしてルキフェル軍はヘヴ星を遠隔砲撃しないのでしょうか?」

「確かにな・・・」

「魔法理論にはその辺りの事は書かれていないのですか?」

「うーん、書いてないな・・・試してみるか。」

「それがいいでしょう。スメラでは未知の理論という事は高レベル魔法使い特有の現象かもしれません。」

「という事は魔力の多さに関係するのかもな。どう実験すればいい?」

「木星表面に魔力量を変数としてレーザーを撃ち込んで観察してみましょう。」

「いや、さすがに木星は見えないぞ?」

「遠隔砲撃の実験ですから、近くで試しても意味がありませんし、困りましたね・・・」

「ま、とりあえず次を試そう。」

「了解しました。」


「次は・・・すげぇな・・・」

「どんな魔法ですか?」

「思考加速魔法だ。人間の脳はニューロンやシナプスで構成されているだろ?」

「はい。イオンや神経伝達物質を信号として利用していますね。」

「よく出来てはいるんだが、伝達速度はせいぜい秒速100m程度だ。」

「それを魔法で加速させるのですか?」

「その通りだ。あんまり高速化すると脳にダメージがあるから、せいぜい数千倍くらい、1秒で1時間相当くらいらしい。」

「そう・・・ですか。」

「どうしたんだ?」

「いえ、何でもありません。早速試してみましょう!」

「・・・」

「?」

「・・・・・・」

「どうされました?」

「無茶苦茶速くなる。MET魔法もすぐ発動できる。ただ・・・」

「ただ?」

「喋ろうにも舌がまるでついてこないし、瞬きの間はしばらく視界が遮られて不安になるな。」

「処理速度と入出力速度のバランスが悪いのですね。」

「こりゃ、慣れるまで大変だぞ。」

「頑張ってください。」

「まぁ、やるしかないな。」


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