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条約-05

「さて、諸君。さっきの話が事実だとすれば、わたしとしては同盟を結ぶべき、いや、結ばざるを得ないと考えている。異論がある者は挙手してくれ給え。」

「・・・・・・・・・」

「異論は無しか・・・」

「大統領。」

「情報局長か、何だね?」

「わたしも異論はありませんが、大統領が仰ったように”彼らの話が事実だとすれば”という条件が付きます。」

「やはり、そこか。」

「はい。ですが、確かめる術はありません。出来る事と言えば、彼らの話に矛盾点が無いかどうかを検証する程度でしょう。」

「そうだな。とりあえず彼らの話を纏めてみよう。首席補佐官、書き出してくれないか?」


背景

・神が側近のデヴィに封じられた

・デヴィは神になりすまし神軍に全ての知的生命体を虐殺させている

・神軍は神の詔には逆らわない

・ルキフェルだけは特定の条件を満たした場合だけ神の詔に逆らえる

・ルキフェルは虐殺を止めさせる為に戦力を増強している

・ルキフェル隊と神軍の戦力比は10:7であり、神軍に勝つ事は可能

・デヴィは少なくとも神の力の一部は使えるので勝算は不明

・神軍との戦いは約1万年後の予定


ルキフェル隊の義務

・コールドスリープ、完全ステルス技術、瞬間移動用ユニット、高性能コンピューターなどの科学技術の供与


スメラの義務

・高レベル魔法使いが誕生した場合にはコールドスリープで延命させる

・神軍との戦いに高レベル魔法使いを戦力として提供する


「ふむ、1つ訂正があるな。」

「失礼しました。どこでしょうか?」

「彼らの目的は、神の救出であって虐殺を止める事では無かったはずだ。」

「あ・・・そうでした。」


切れ者で知られる首席補佐官だが、無意識の内に都合よく記憶を改竄してしまったようだ。

その後、様々な観点で検証してみたが矛盾点は見いだせなかった。


「こうして見てみると、軍事同盟というよりも傭兵契約といった感じだな。」

「はい。彼らにスメラ防衛の義務はありません。もし襲われたら供与した技術を使って自分たちで何とかしろというスタンスでしたから。」

「何とかしてスメラ防衛義務を課したいところだが・・・」

「釣り合うだけの見返りが・・・用意できませんね・・・」

「ではせめて、なるべく早期に自力避難が出来るように技術供与の内容を詰めるべきか?」

「それが精一杯でしょう。」


「では我々の方の義務について検討しよう。単刀直入に聞くが、可能かね?」

「”安全装置”を・・・掛け続ける限りは可能でしょう。」

「あの忌まわしい行いを1万年も続けなければならないのか・・・」

「しかし、ルキフェル隊の戦力足りえる程の者が拒否してしまった場合に、強制する術はありません。」

「それはそうだが・・・仮に数百、数千年後の政府が”安全装置”の廃止を決めたらどうなる?」

「最悪の場合は、同盟破棄と捉えられて軍事的報復を受けるでしょう。」

「それは何としても避けなければならん。自由意志による拒否は対象外にしたい。」

「では、”政府は対象者に対して可能な限り働きかけるが、最終的には対象者の意思により決定する。結果的に拒否した場合でも条約違反にはならない。”というような文面を入れるよう交渉しましょう。」

「そうだな、そんな都合のいい条件を飲んでくれればいいのだが・・・」


「主な交渉内容はこれくらいだろう。他に気が付いた事があったら言ってくれ給え。」

「条約を締結したとして、内容は公表されますか?」

「まず、無理だろう、パニックが起きる。政府高官以外に知られる訳にはいかん。」

「しかし、そうなると議会やマスコミが騒ぎ出します。」

「となると、ルキフェル隊にデモンストレーションをしてもらうしかないか?」

「そうですね、我々の常識外の事が起こっている事だけは実感してもらいましょう。」


------------------------------


「お待たせしました。」

「話し合いはまとまったのか?」

「はい、こちらがその結果です。」


閣僚の会議後に、同席していた高級官僚がまとめた資料をルキフェル達に配った。

もちろんスメラ語で書かれスメラ星で一般的に使われているプレゼン用ソフトのフォーマットの資料なのだが、ルキフェル隊の方で既に自動変換ができるように準備されているので問題ないという事だった。


「・・・良かろう。全て承諾しよう。」

「よろしい・・・のですか?」

「うむ、我らとて嫌がる者を無理やり戦わせるつもりは無い。それに出来る事なら貴星を守ってやりたいのだが、神軍との戦いが控えている以上、それも出来ぬ。」

「ありがとうございます。」

「いや、美味い飲み物の礼だとでも思ってくれ。」

「えぇ、たいへん美味しかったですよ。」

「いい肉でした。」


思わず笑いが起きた。

しかし、これはルキフェルの演技である。

相手の条件を丸飲みする事で後に引けなくしただけの事だ。

いざとなれば、あらゆる手段を講じてこちらに引き込むつもりだ。


「それでは締結合意に至ったという事で、わたしは全国民に向けた記者会見を開きます。その際に、貴軍の威容を示していただきたいのですが・・・」

「うむ、分かった。」


------------------------------


その日の夜遅く、緊急記者会見が開かれた。

内容は非公開のまま異星人と条約を結ぶという内容に、世界中で大ブーイングが起きた。

しかし、それもすぐにかき消された。

ルキフェル隊が兵卒、部隊長、そしてルキフェルの順に魔法気配遮断を解いたのだ。


一兵卒ですらスメラ全軍をもってしても勝てないレベルだ。

それが合計100万名。

そして、更に強力な部隊長が1,000名。

最後に圧倒的な強さを誇るルキフェル。


スメラの魔法使い達は全員が失神するか幼児退行してしまう有様だった。

もちろん、魔法レベル0の者は魔法気配を感じる事は出来ない。

しかし、普段は圧倒的な力を持つ魔法使い達が絶望的なまでの恐怖を感じている様を見せつけられれば、それがどれ程の事かを理解できたのだ。




そして、条約締結が完了すると、ルキフェル達はスメラから飛び立ち長い旅を再開した。


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