駄神-02
魔法気配のマッピングが終了した。
極めて限定された1つの地域にだけ存在しており、ブラックナイトの偵察映像から推測すると世代を超えて受け継いでいる可能性が高い事が判明した。
魔法については我々にもよく分かっていない事が多いのだが、遺伝的要因の可能性があるのならば、この系統を保護してやれば戦力化できる可能性が高まるだろう。
もっとも、その可能性はほぼ0%ではあるが。
「では、この地域の原住民に文明を伝える方針としましょう。」
「分かった。でも、素直に僕達の言う事を聞いてくれるかな?」
「そうだよねー、いきなり宇宙人が来たら警戒しちゃうよねぇ。」
「じゃあ、神様のふりでもすればいいかな?フツ、どう思う?」
「相手は未開な原始人です。魔法でも見せつければ、神と思わせるのは簡単でしょう。」
「で、でも、逆に悪魔だとか思われたら・・・」
確かにこのアホどもなら何かやらかして敵と思われかねない。
何か小細工をしておいた方がいいだろう。
「では、こうしましょう。この地では石や骨を使った占いが判断の重要な要素となっています。」
「スメラも原始時代はそんな感じだったらしいね。」
「ですから、あなた達が神であると信じるように占いの結果を操作して下さい。何がどういう意味を持つかは情報収集済みですから、わたしの指示した通りの配置にしてもらえれば大丈夫です。」
「抜かりないね。言われた通りにするよ。」
「りょーかーーい!」
「おそらく、降下直後に占う筈ですから、そのタイミングでお願いします。」
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降下完了だ。
見張りの一人が慌てて馬に乗って街に戻って行った。
すぐに占いが始まるだろう。
もう一人はこちらに向かってきているようだ。
「原住民がこちらに向かっています。生体調査を行いたいので気絶させてください。」
「あたしがやるー!」
「慎重にやれよ?」
「くれぐれも殺さないようにお願いします。慈悲深い神という設定ですので。」
「なによー!ちょっとは信じなさいよー!えいっ!」
原住民が倒れて痙攣している。
死んではいないようだ。
早速、生体調査に取り掛かろう。
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原住民の軍隊が警戒している。
彼らにしてみれば得体の知れないものなので、無理もないだろう。
問答無用で攻めて来ず、占いの結果を待つという点は評価していい。
「よしっ、操作完了だ!」
「お疲れ様です。」
「言われた通りにしたけど、どういう意味なんだ?」
「神が天の浮舟に乗ってやって来たという意味になります。」
「そのまんまだけど分かり易くていいね。これで僕達も歓迎・・・ってうわぁっ!」
「おや?」
「え?なんで?」
原住民が攻めて来た。
あぁ、なるほど、不幸な勘違いか。
「彼らは原始的な狼煙で指示を出していますが、火事で生じた白煙を狼煙と勘違いしたようです。」
「え?勘違い?」
「そうですね。放っておけば原油を燃やした黒煙が上がって攻撃を止めるでしょう。」
「そうか、じゃあそれまで待って・・・ん?あれって鉄剣じゃないよね?」
「おや?これは興味深いですね。サンプルとして回収したいので、気絶させてもらえますか?」
「えー!攻撃したらまずいんじゃないの?」
「神に刃を向けたのですから、多少のお仕置きは問題ないでしょう。」
「じゃあ、またあたしがやるーー!えいっ!あれ?しぶといな・・・ええいっ!」
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「分析が終わりました。」
「これは・・・アダマント?」
「そのようです。」
「えーっ!せいぜい鉄器までしか作れないんじゃなかったの?」
「まさか、超古代文明とか?」
「いえ、大気圏突入の痕跡がありました。そして付近には古いクレーター跡と思しき地形もあります。」
「という事は他の星からやって来たって事か・・・」
「でも、これって何なんだろうねぇ?」
「アダマントが製造できる文明レベルの世界で剣で戦うとは考えにくいですが、儀礼用の可能性もあります。興味深いのでもう少し調査をしてみます。」
「何か面白い事が分かったら教えて・・・あっ!」
「どうしました?」
「また占いをするみたいだ。」
「なるほど、誤解とは言え神に刃を向けた事に対する善後策を占うのでしょう。」
「今度はどうすればいい?」
「ではこのようにして下さい。」
モニターに石や骨の配置を映した。
「分かった。これってどういう意味になるんだ?」
「”高貴な血の三人の子を捧げよ”です。予定より早いですが、文明を伝える対象を差し出すように仕向けます。」
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日が暮れた。
宇宙船の周りは篝火がたかれ、様々な料理や飲み物が用意されていた。
もちろん宴会用では無く、神の怒りを解く為の供物だ。
「おぉっ、豪勢だな!」
「ずっと味気ない宇宙食だったからねぇ。まぁ、非常用保存食よりはマシだけどさぁ。」
「細菌、ウィルス、毒物は問題ないようですから、食べても大丈夫でしょう。ただ、お酒は止めておいた方がいいと思いますよ。」
「えぇっ!」
「なんでなんで?」
「こちらがこの地での酒造りです。」
二人ともアホガキのくせに酒が好きな事は知っている。
しかし、これを見れば飲む気は失せるだろう。
穀物を噛んでは壺に吐き出している映像を再生した。
「うわっ・・・」
「うげぇ・・・」
「飲みますか?」
「いや、いい・・・教えてくれてありがとう・・・」
「絶対飲まない・・・酒造り教えなくちゃ・・・」
「おやおや、物騒な事になりそうですよ。」
外の様子を映し出すモニターに二人の男が映った。
「何してるんだろう?」
「あ、さっきのしぶとかったオッサンじゃん!」
「おそらく斬首でしょう。」
「ちょ、ちょっと!」
もう一人の男が鉄剣を振りかぶる様子がモニターに映し出される。
「ダメェッ!」
鉄剣が微粒子レベルに分解された。
無駄に高い魔力を利用して、咄嗟に砕けろとでも念じたのだろう。
「ふぅ・・・間一髪だったな。」
「まったく!野蛮なんだからっ!」
「まぁ、寛大な神というイメージ作りには役立ったでしょう。」
モニターには何やら話し合っている様子が映し出されていた。
暫くすると料理と酒壺を持った三人の子供が見えた。
最初に文明を与える候補者だ。
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子供達が食堂へとやって来た。
「よく来たね、早速食事をもらおうか。」
「もうお腹ペコペコだよー。」
しかし子供達は跪いたままだ。
「言葉が通じないと不便だなぁ。」
「ちょっとぉー、早く頂戴よっ!」
待ちきれずに魔法で料理を手繰り寄せたようだ。
「ねぇ、この飲み物って・・・」
「匂いからすると・・・酒だな・・・」
「はい、例の製造方法の酒ですね。」
「・・・いらない。」
「わたしも・・・とにかく食べよう!」
品の無い食べ方だ。
まさに食い散らかしている。
「ねぇねぇ、なんかさ、このキノコって殆どの料理に入ってるよね?」
「言われてみればそうだな・・・特別美味しいわけでも無いのに何でだろ?」
「近くの洞窟にだけ自生する固有種です。採りに行くのはかなり大変なようですが、この国では特別な日の食事には欠かせない食材です。」
おや?
これはすごいですね。
「たった今、興味深い分析結果が出ました。」
「何だろう?」
「えー、なになに?」
「原住民とスメラ人の遺伝子構造が一致しました。同一種と言っていいでしょう。」
「は?」
「え?」
「原因は不明です。仮説はいくらでも立てられるでしょうが、現状では検証不可能です。今はその事実だけ認識しておけばいいでしょう。」
「驚いたな・・・」
「不思議な事もあるもんだねぇ。」
ようやく食べ終わったようだ。
途中で話しかけたのは間違いだったかもしれない。
話しながら食べ散らかす姿は見るに堪えないものだった。
「ふぅ、満腹だ。」
「くったくったぁ。」
「そう言えば、言葉が通じないのは不便だしなぁ・・・自動翻訳はすぐに出来ない?」
「サンプル数が少なすぎて完全には翻訳できません。」
「ちょっとくらい間違ってもいいじゃん!」
「いえ、神を名乗るからには、間違いがあってはまずいでしょう。」
「それもそうか・・・」
「うーん・・・」
「先ほどの話と関連するのですが、スメラ人と同一種という事は、原住民にスメラ語をインストールすれば通訳が可能になると思われます。」
「あ、なるほど!」
「いいじゃん、いいじゃん!」
「ではその方向で行きましょう。あのギガという名の女児は神官らしいですから、インストール対象は彼女でいいですか?」
「え?一人だけ?」
「ケチらなくてもいいじゃん!」
「いえ、こちらの言葉が分かるという事は情報漏洩のリスクが高まります。実は神では無いと知られた場合、スメラ文明の復興という目的が達成しにくくなります。」
「それもそうか、分かった。」
このアホどもの言葉が分かる人間は、少ない方がいいに決まっている。
それにギガ一人を御すればアホどもへの情報提供も上手くコントロールできる筈だ。
しばらくすれば翻訳も可能になるだろうから、わたしの方の情報収集には問題ないだろう。
「では、ギガだけを残してあの二人には退出してもらいましょう。」
「分かった。じゃあ食器を返しておこう。」
「そだねー。」
魔法を使って返された食器を受け取った3人が部屋を出た。
その瞬間、ギガだけが再び引き寄せられ、バリアが張られたようだ。
「よし、上手くいったな。」
「じぃーーーーー。」
「ん?どうしたんだ?」
「何かさぁ・・・女児を攫うの手慣れてない?」
「ば、ば、ば、馬鹿なこと言うな!」
やれやれ。




