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挙式-02

「ところで、オモさん。」

「なんでしょう?」

「人工授精とか穏便に済ます手は無いかな?」

「条件を満たせば可能です。」

「おぉっ!じゃあ、是非それで!」

「コウさんを完全に不能にすれば人工授精処置の条件が満たせます。」

「「ダメ、ゼッタイ!」」


俺とナホが見事にハモった。


「では、通常の子作りでお願いします。」

「ナホ、どうしようもないみたいだ。」

「うん・・・しょうがないね・・・」

「でもオモさん、彼女たちの意思は尊重してくれるんだろうね?」

「もちろんです。希望しない人は対象から外します。ただ、生存候補者の選抜条件の1つが”子供を沢山欲しがる傾向の人”でしたから、ほぼ全員希望すると考えていいでしょう。」


まぁ、考えてみればその通りだろう。

人類の復興を託す相手に子供嫌いを選ぶという事は無いよな・・・


「一応、聞いておくけど、人間の生殖細胞を製造する事はできないの?」

「コウ、さすがに人工生命は気持ち悪いよ。」


ナホが物凄く嫌そうな顔をした。


「おそらく皆さんもナホさんと同意見でしょう。一応、条件を満たせば製造可能ですが。」

「あぁ、分かった。条件は”俺が死んだら”とかなんでしょ・・・」

「ご名答です。人間の製造は、それ以外の手段が全く存在しない場合以外は禁止されています。」

「抜け道は無いの?」

「人機大戦の反省から、わたしのような人工知能にはソフト・ハード共に厳重な多重チェック機能が組み込まれています。無理やり回避しようとすればわたしの機能が完全に破壊されてしまうのです。」

「そうなんだ・・・諦めるしか無いか。」

「みんなもそんなのに頼るくらいなら絶滅した方がマシだって言うと思うよ。」


しかし疑問が残る。

父親が俺一人だと避けて通れない問題がある。


「子供世代はいいとしてさ・・・孫世代はどうするんだ?」

「必然的に異母兄弟間で、となります。一世代のみの特例ですね。」

「遺伝的な問題は出ないの?」

「10世代先までの全ての可能な交配パターンでシミュレーション済みです。それに、もともとスメラの文化では優れた男性の遺伝子が残りやすいですから。」

「私たちが思いつくような事は全部お見通しなんだねぇ・・・」

「まったくだ。それにしてもいつの間に俺の遺伝子なんか手に入れたの?」

「ナホさんの部屋から回収された廃棄物に大量に付着していましたので、それを解析しました。」

「「こらーーーーーーーーーーー!!!」」

「しかし、あらゆる資源をリサイクルしないと、すぐにシェルターは破綻してしまいます。皆さんの健康管理チェックも必要です。これらはシェルター入所前の契約書に明記されていますが?」

「そ、そうなのか、ナホ?」

「そう言えば・・・」


クッ、理由はもっともだし契約済みなら文句は言えないか・・・


「あと1つお願いがあるのですがよろしいですか?」

「はいはい、何ですか?どうせ断れないんでしょ?」

「いえ、飽くまでもお願いです。」

「本当でしょうね?」

「もちろんです。」

「じゃあ、一応聞くだけは聞いてみます。」


俺はすっかり投げやりな気持ちになっていた。

ナホもすっかり諦め顔だ。


「彼女たち全員を愛してあげて欲しいのです。」

「えっ!」

「いや、俺が愛しているのは・・・」

「お願いです、最後まで聞いて下さい。」

「「・・・」」

「彼女たちに絶滅回避の為の只の”産む機械”になれと言うのはあまりにも不憫です。」


オモさんの頬を涙が伝う。

コンピューターが操作していると頭では分かっているが、心にぐっとくる。


「それに彼女たちは皆、コウさんに好意を抱いているのです。既に殆どの子がわたしの元に訪れて相談しています。」

「「えっ!」」

「コウさん、あなたはヒーローなのですよ?どこからともなく颯爽と現れて、彼女たちが奴隷にされる寸前で救い出し、同級生を虐殺した極悪人を一瞬で倒し、更に身を挺してナホさんを庇った。そんな事を彼女たちの目の前で行ったのです。吊り橋効果も確かにあったのでしょうけれど、恋する年頃の彼女たちが憧れるのは当然でしょう。」

「「・・・」」

「ましてや、コウさん程の絶世の美男子ともなれば、好きになるなというのは無理難題にも程があります。」

「へ?」


俺はオモさんの突飛な発言に一瞬思考が止まった。


「いや、ちょっと待って。俺が絶世の美男子っていうのは無理がありすぎるでしょ?」

「いえ、初めてコウさんを見た時は衝撃的でした。一時的にわたしの全リソースを使用してコウさん以上の美男子のモデリングを試みましたが、それは不可能でした。」

「そうだよー!みんな、初めてコウの顔見た時は思わず悲鳴上げたりしてたでしょ?最初の頃は、わたしみたいな平凡な子がコウに相手してもらえる訳ないって落ち込んでたんだもん。」

「いやいやいや、俺は平凡だよ?それにナホは宇宙で一番可愛いぞ?他の皆だって美女揃いだし・・・」

「いえ、選抜者はなるべく平凡な外見となるように調整されています。」

「うん、みんな普通の子だよ?」


どうも話が噛みあわない。

謙遜しているだけとは思えないな。


「という事は、地星の美意識ではスメラの平凡は美女で、スメラの美意識では地星の平凡が美男子って事か?」

「どうやら、そのようですね。」

「へー、面白いね!」


遺伝子が同じでも、美意識ってのは場所と時代で変わるもんなんだな・・・


「話が逸れてしまいましたね。ともかく、そんな彼女たちの気持ちに応えて下さいとは言いません。ただ、踏みにじるような事はして欲しくないのです。せめて、せめて褥を共にする間だけでも、女として接してあげて下さい。お願いします!」


オモさんはいきなり土下座をし、額を床に擦り付けた。


「「あ、頭を上げて下さい。分かりました、分かりましたから!」」

「では、彼女たちを決して産む機械のように扱わず、ちゃんと一人の女性として接すると約束して頂けますか?」

「はい!約束します!」


オモさんはようやく立ち上がり、深々と頭を下げながらこう言った。


「それでは彼女たちの事を、よろしくお願いします。」

「・・・はい。」


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オモさんの思惑通りに事が進んでしまった。

論理やデータだけじゃなく心理面でも操られた感じがする。

前にキットが言っていたのはこういう事だろうか?

きっと人機大戦の前にはこういう風に人間が操られて、気が付けば手遅れになっていたのだろう。

人工知能恐るべし。


------------------------------


前日のオモさん


今後の気象条件や労働力を考えると、次世代の人数は2,000人まで対応可能ですか。

という事は、1人当たり4人の子供ですね。


皆さんには思考誘導でコウさんに好意を持つようにしていますから、受け入れる事に問題は無いでしょう。


高齢出産リスクを考えると35歳までには産み終わる必要があるでしょう。

彼女たちは現在18歳ですから、17年で4人ですね。

しかし多少の余裕は必要ですから、3年に1人を産んでもらう事にしましょう。

28日に1回の割合で妊娠好適日が来ますから、3年で39回です。


コウさんの生殖細胞との妊娠確率から計算すると、4回に1回でいいでしょう。

500人÷28日÷4≒4.5人/日ですか。

コウさんには1日あたり4~5人のお相手をして頂ければいいようですね。

休日無しになるのは仕方ないでしょう。


しかし、このペースですとコウさんの体がもつかどうか怪しいですね。

薬物投与で対応しましょう。

その手の薬は昔から需要が旺盛でしたから種類は豊富です。

コウさんに飲む事を強要する事になりますが、スメラ星籍を持っていませんから、人権に配慮する必要が無いので助かります。


揉めないようにナホさんも巻き込んで了承してもらわなければなりませんね。

コウさんに呼んでもらえるように誘導しましょう。


さて、お二人に対する心理操作の方法を考えないと。


------------------------------


翌日の朝礼でオモさんが皆に事情を説明した。

回収されたアンケートでは499名全員が子作り希望という事だった・・・


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数日後


キセルで紅葉草を燻らせながら休憩していると足音が聞こえた。


「やっほー!」

「なんだフジさんか・・・」

「なんだとは失礼ねぇ・・・なんか疲れてる?」

「そりゃ疲れるよ。」

「1日5人だっけ?」


平均は平均でしかない。

しかも相手は生物だから、ばらつきも大きいのだ。


「昨日は7人だったよ・・・」

「おぉっ!絶倫だねぇー!」

「オモさんから渡された薬で無理やりだよ。」

「ハーレムは男の夢なんだしいいじゃん!酒池肉林万歳!」

「500人はいくらなんでも多すぎるよ・・・しかも予定表を渡されるんだぞ・・・」


びっしりと時間帯まで指定された予定表を死んだ魚のような目で見つめた。

500人のハーレムは確かに酒池肉林だろう。

ただし、二日酔いで死にそうな時でも酒の池に投げ込まれ、吐き気と下痢に苛まれていてもギトギト霜降り肉を口に押し込まれる酒池肉林地獄なのだ。


「まぁ、でもみんな幸せそうだし頑張ってちょうだい。」

「くそ・・・他人事だと思って・・・」

「あらぁ?他人事じゃない方が良かったぁ?」


フジさんが体をくねらせて妙なポーズをとった。


「いや、是非、他人事でいてくれ・・・」

「ノリが悪いわねぇ。ま、わたしは戦傷で子供ができなくなったからね。」


やばい、地雷を踏んだかもしれん。


「えっ!あ、あぁ、ごめん。」

「いやいや、気にしなくていいよ。」

「コウ、休憩時間終了です。薬の服用をお願いします。」


俺の体内時計ではまだ数分の余裕がある。

キットがフォローしてくれたようだ。


「はぁ・・・分かった。じゃあフジさんまたね。」

「がんばれー!」


フジさんは手を振りながら自室へと戻って行った。


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