大戦-17
舞台は再びシェルター談話室に戻る。
フジさんは人機大戦のレクチャーを終えた。
「っていう事があったのよ。まぁ、わたしが知らない機密情報とかもいっぱいあるんだろうけどね。」
「驚いたな。ぎりぎりで魔法が使えるようにならなかったら、今頃はスメラは機械が支配する星になってたって事か。」
「結構危なかったと思うよ。」
「そう言えば、さっき”機械軍の残党処理”って言ってなかった?」
「うん。中型以上のは大戦後に魔法軍が処理したんだけど、小型機はまだ潰しきれてないから未だに動き出す事があったんだ。」
「げっ!じゃあ、開拓してたら出てくるかもしれないってことか?」
「その可能性があったからわたしがここに派遣されたんだけど、1万年も経ってるから流石にどんなMETでももう動いてないでしょ。」
「いや・・・俺はここに来る前に襲撃された。」
フジさんが椅子からガタッと立ち上がった。
「そんな!1万年も機械軍がスリープできるなんて・・・聞いてない・・・」
「全部で6機いたな。問答無用で連携を取って仕掛けて来た。」
「まさか・・・どんな機体だった?」
「人型の2mくらいの大きさだったよ。中には十代半ばの女性型アンドロイドが入ってた。」
「そんな機体聞いた事が無い・・・コウ、詳しく聞かせて!」
「あぁ、戦闘記録を再生しよう。キット、プロジェクターに頼む。」
「了解しました。」
壁に謎の襲撃者との戦闘記録の映像が映し出された。
「これは、人類軍のかなり古い・・・人機大戦の頃のパワードスーツだよ。」
「え?機械軍じゃなかったのか?」
「少なくとも今映ってる機体は人類軍の装備ね。目や耳の部分が剥き出しになってるでしょ。ハッキング防止の為に単純な回路でパワー増幅だけして五感は人間が担当してたんだよ。」
「人類軍が俺を問答無用で襲ったって事?」
「うーん、操縦してたのはアンドロイドなんでしょ?」
「キット、映してくれ。」
「了解しました。」
アンドロイドの四肢を撃ち抜いたシーンが映し出された。
談話室に妙な空気が流れた。
「・・・ねぇ、コウって変態?」
「は?何言って・・・」
素っ裸の十代半ばの少女の手足を撃ち抜いた映像が映っている。
これでは俺が服を脱がせた後に銃で撃ったかのようではないか!
「キット!」
「はい。」
機体のハッチが開くシーンが再生された。
詳しく言わずともキットは俺の言いたい事を理解してくれた。
「見てくれ!こいつは最初から裸族だったんだ!」
「あー、なるほど。さっきのシーンだけだと誤解しちゃうよねぇ。」
なんとか俺の汚名は返上できたようだ。
キットが撃ち抜いた部位を拡大した映像をウィンドウに表示した。
「な、アンドロイドだろ?」
「だねぇ・・・」
「このアンドロイドって人類軍の装備なの?」
「・・・アンドロイドの兵器化なんて、わたしは聞いた事無いなぁ。」
「人類軍の秘密兵器だったのか、機械軍の残党が人型アンドロイドを操ったのか・・・」
「決め手に欠けるわね。」
「あぁ・・・」
談話室に沈黙が流れる。
「どっちにしても、1万年も経っているのにこのシェルター以外でMETを起動してコウを襲わせた存在が居るって事だね。」
「機械軍の残党の可能性も考えると、しばらくは警戒が必要だな・・・ん???」
「どうしたの?」
「いや、フジさんは魔法使えるのか?」
「え?なんで?」
「なんでって、機械軍は一般兵じゃ倒すの厳しいんだろ?」
「あぁ、開発の中心は魔法になったけど、それでも普通の武器も発達したからね。大戦直後の頃とは違って、一般兵でも携行型レーザーキャノンがあれば小型のやつなら何とかなるんだ!」
「そうなんだ。そういえば他の皆は武装しなくていいの?」
「このシェルターにはわたし用の装備しか無いしねぇ。この前の事件のは対人武器だから機械軍には効かないんだ。」
まだ疑問が残る。
どうしてこのシェルターに居るのは単一民族なのか?。
しかし、限界だ。
ナホが俯いて足をブラブラさせている。
あれは”ほったらかしで寂しいなぁ”の仕草だ。
「色々参考になった、ありがとう。」
「どういたしまして。今度、機械軍についてレクチャーしてあげるよ。」
「その時はよろしく。さっ、ナホ、そろそろ行こうか?」
「うん!」
「では、わたしはWoWモードに移行します。」
WoWはWake on Warningの略であり、センサー類が警報を発するか、俺が明示的に指示しない限り、疑似人格は停止する。
WoW中もデータ類は蓄積されているが、俺が許可しない限りは疑似人格からはアクセス出来ない。
それでもナホが気にするので、夜はシャットダウンする事になるが・・・
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休日とは言ってもデートスポットがある訳ではない。
娯楽というと、散歩かシェルターの娯楽室で過ごすくらいだ。
ちなみに、娯楽室で提供されるのは過去の作品の他に、新作の映画、ドラマ、アニメ、小説、ラノベ、漫画、ゲームもある。
それらの新作はオモさんの空きリソースを使って製作されている。
実写にしか見えない映画もフルCGで作られているのだ。
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今はナホと手を繋いで、あても無くブラブラと歩いている。
「ナホ、今日はどう過ごそうか?」
「お天気も良さそうだし外行こっかなぁ。」
俺たちはよく外に出かける。
目の前に広がるのは文明の崩壊した草一本すら生えていない荒涼とした無人の大地だ。
それでも俺はナホと共に前に進んでいこうと誓った。
誓いか・・・




