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大戦-10

まだ初日の夕方だが、予定していた実験は全て完了した。

念の為に3日間借りてもらったのだが、明日の朝、砂漠の日の出と共に非常用保存食を楽しんだら帰る事にしよう。


トスには早めに連絡しておこうと考えていると、1台の車が猛スピードで近付いてきた。

そしてわたしの前で急停車すると核防護服に身を包んだ者達が慌てて降りてきた。


「閣下、放射線検出できません!」

「なに?」

「核爆発では無いようです。」

「いや、ありえないだろ?MET弾頭の在庫は我が軍には無いぞ!」

「しかし、全く検出できないのです。」

「故障じゃないのか?」

「5台とも反応がありません。」

「分かった。お前たちは車に戻って待機しておけ。」

「はっ!」


やがてトスが核防護服のヘルメットを外しながらわたしの方にやってきた。


「おい、キユ!お前何した!」

「いや、ただの実験だ。なんで核防護服なんか着てるんだ?」

「史上最大の戦略核の何倍もの地震波が来たんだ、そりゃ着るだろ!」

「いや、強力な実験だと言っておいただろ?」

「強力にも程があるわぁっ!!!」

「まぁ、これでも食って落ち着け。」


わたしは非常用保存食を差し出した。


「お前は・・・」


わたしの気遣いに感動して言葉にならないようだ。


「そんなもの砂漠で着てたら暑いだろ?核じゃないから安心しろ。」

「説明しろ!」

「あぁ、後でちゃんと見せてやるから、あいつら帰してくれ。」

「・・・分かった。」


トスは頭を振りながら核防護車に戻り、帰投の指示を出した。

今の内にレールガンに砲弾を装填しておこう。


トスは戻って来た時には制服姿になっていた。


「説明してもらおうか。まさかMET弾頭じゃないだろうな?」

「あぁ、百聞は一見に如かずだ。こっちだ。」


わたしは戦車の残骸のところにトスを案内した。


「特に変わったところは・・・貫通孔が2つ増えただけじゃないか?」

「いや、そっちはどうでもいい。まず見てもらいたいのはあっちだ。」


わたしはレールガンとレーザーキャノンの方を指さした。


「ん?妙に静かになったな。」

「じゃあ、行くぞ。」

「ん?」


魔法でレールガンとレーザーキャノンの発射スイッチを押した。

音こそ聞こえないが、目の前で成形炸薬弾が爆発し、レーザーキャノンは無害な程度まで弱められた閃光を放っている。


「のわっ!殺す気か!」

「あぁ、大丈夫だから安心しろ。」


レーザーキャノンのスイッチをオフにするとバリアを解いた。


「一体何をしたんだ?」

「バリアを張ったんだ。」

「凄い・・・な。いつの間にこんなもの作ったんだ?」

「あぁ、さっき出来るようになった。次は攻撃の方だ。」


トスごと加速して飛んだ。


「おい、ちょっと待て!なんだこれは?」

「飛んでるんだが?」

「それは分かっている!」

「着いたぞ。じゃあ見ててくれ。」

「え?」


本日2回目の200メガトン級レーザーを撃った。

2発くらいなら惑星環境は変わらないだろう。

トスが見やすいようにキノコ雲が斜め下に見える位置まで飛んだ。


「トス、どうだ?」

「あぁ、分かった。俺は夢を見てるんだな。」

「おいおい、これでも食ってしっかりしろ。」


わたしは非常用保存食を渡した。


「あぁ・・・夢なら平気だよな・・・げぼぉ!」

「むせたのか?もったいない・・・」

「何しやがる!・・・夢じゃないのか?」

「”上手くいけば1日かからずに機械軍を全滅させられる”って言っておいただろうが。」

「い、いや、確かに強力だが、戦いは数だぞ?」

「あれを秒間100発で無尽蔵に撃てるから安心しろ。威力も調整できる。」

「あぁ・・・すまんがもう1つくれ。」

「おぉ!お前もやっとこの美味さが分かったか!」

「すまんな・・・げぼぉ!」


------------------------------


すっかり夜になった。

砂漠の空に星が美しく輝いている。

その頃になって、トスはようやく現実だと理解したようだ。


「とりあえず、現実なのは理解した。で、どういう原理なんだ?」

「あぁ、魔法だ。」

「ふざけんな!」

「いや、本当に魔法なんだ。」

「お前なぁ・・・」

「逆に聞くが、魔法じゃなかったらどうやってあんな事できるんだ?」

「確かに俺は研究者じゃない。分かりやすく説明されても分からんかもしれん。だが理論を教えてくれ。」


わたしは知り得る限り魔法について教えた。

トスは最初は怒っているような表情だったが、やがて能面のようになった。


「お・ま・え・は!!!じゃあ、この砂漠の砂を全部持ち上げろ!そしたら信じてやる。」

「分かった。」


わたしは砂漠の砂を見える範囲で全て持ち上げた。


「これでいいか?」

「・・・マジか?」

「物理法則には反していないからな。そりゃ出来るさ。」

「信じる・・・しか・・・ないか・・・」

「まぁ、魔法使いじゃないとなかなか信じられないだろうなぁ。」

「当たり前だろうが!お前以外に魔法使いなんか居るか!」

「いや、意外にいるぞ?覚醒前だが。」

「は?お前以外にもいるのか?」


トスは呆けたような表情になった。


「あぁ、それで魔法部隊を編成したくてな。お前に相談しようと思ってたんだ。」

「ちょっと待て。どれくらい居るんだ?なんで分かるんだ?」

「ちょっとでも才能のある奴をカウントするなら若い連中で5%くらいだな。何故かは分からんが、魔法に覚醒したら才能の有無は気配で分かる。」

「そんなに居るのか・・・しかしどうやって覚醒させるんだ?」

「それは分からんが、わたしが覚醒した時と同じように、近くで魔法を使えば覚醒するかもしれないとは思っている。」

「そう言えば、お前はどうやって覚醒したんだ?」

「MET製造工場の時の少佐が報告したはずだろ?異形の者が機械軍を魔法で殲滅したと。その時に覚醒した。」

「恐怖で頭がいかれたと思っていたが・・・」

「いや、正常だろう。今は精神病院に強制入院中だったよな?」


トスは物凄く申し訳なさそうな表情になった。


「あぁ、すぐに退院させる。」

「あの分隊は全員才能があったから、秘密裏にこっちに回してくれないか?」

「いや、こういうのは正攻法で攻める方がいい。将官全員に緊急会議を要請するから、お前はお歴々に魔法を披露してくれ。」

「わたしには政治は分からんから任せるよ。今日みたいにすればいいか?」

「・・・爆心地でキノコ雲の中を見るのは俺だけでいい。」

「迫力があって分かりやすいと思ったんだがな。」

「俺がデモンストレーションのやり方を書くからそれに従ってくれ・・・」

「いいぞ。今日の内容で足りないものはあるか?」

「そうだな・・・突っ込まれるとしたら連射能力の証明くらいか?」

「あぁ、じゃあ宇宙まで連れて行って連射しよう。今日もお前が来る前に試した。」

「・・・・・・・・・」


トスを家まで送って行ったが、ずっと虚空を見つめてぶつぶつと呟いていた。

大丈夫だろうか?


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