大戦-08
「さて、始めよう。」
まず攻撃系の魔法のテストだ。
わたしの目の前には機械軍の戦車の残骸がある。
都合のいいことにオリハルコン製の前面装甲が無傷で残っていた。
それに向かって右手を伸ばし掌を向けると、次の瞬間には装甲に貫通孔が開いていた。
ちょうど貫通するのに必要なだけの魔力を込めてレーザーを発射したのだ。
掌からしかレーザーが出ない訳ではなく、何となくイメージしやすいのでやっただけだ。
計算通りの結果に思わず笑みがこぼれる。
今度は白衣のポケットからコイルガンの弾を取り出し、掌の上に乗せた。
コイルガンの弾が空中に浮き、次の瞬間、凄まじい勢いで装甲に突入した。
こちらも計算通りにちょうど貫通したところで止まった。
当たり前のように貫通させているが短銃弾で戦車の装甲を撃ち抜いたようなものだ。
なお、短銃弾をどんなに速い速度で打ち出しても塑性流動を起こしてしまうので、銃弾の長さが足りずに貫通できないのだが、今回は銃弾全体を押し続けたので変形せずに貫通できたのだ。
------------------------------
さて、次はあの異形の者の真似をして空を飛んでみよう。
靴底に重力加速度よりもやや大きい力を上向きに加えてみた。
どべしっ!
思い切りこけてしまった。
なかなか難しい。
何度も挑戦したが上手くいかない。
しかし、仮に浮かべたとしても上空でバランスを崩すと大変そうだ。
もしそうなったら上半身に・・・いや、待てよ・・・
どうやら勘違いしていたようだ。
全身を、いや、周りの空気ごと等しく加速すれば良かったのだ。
そしてこの方法だと上手く飛べた。
また、この飛行方法には大きなメリットがあった。
全身に同時に同じだけの加速度が掛かるので、ブラックアウト等とは無縁なのだ。
そのおかげで機動力がまるで違う。
原理的には、十分な魔力さえあれば亜光速飛行中でも、進行方向をいきなり逆向きにする事もできる筈だ。
次の実験に取り掛かろう。
リュックからコイルガンを取り出し、初速を秒速10cmに設定した。
これなら当たっても痛くはない。
そして銃口を自分に向けると引き金を引いた。
身体に当たる前に魔法が発動し、弾丸はそのまま下に落ちた。
次は秒速30cmだ。
同じようにしてみたが、なかなか難しい。
魔法発動前に体に当たってしまう。
これではあの異形の者のように超高速のレールガンを止める事はできない。
それに、どうも違和感がある。
あの時の事をよく思い出してみよう。
レールガンの砲弾はひしゃげて落ちていた筈だ。
つまり、砲弾全体を止めたのでは無く、ある一定のエリアには侵入できないような壁があったという事だろう。
そう言えばレーザーも無効化していたが、視認してから着弾するまでに魔法を発動させるのは無理ではないか?
という事は、何らかの方法で自動迎撃をしているという事か・・・
SFで言うところのバリアのイメージだな。
------------------------------
まずは、広義の質量兵器について検討しよう。
広義のと言うのは、隕石落としやライフル弾だけでなく、高速中性子など質量を持った物体による攻撃という意味だ。
一番簡単な方法は、”自分から一定の距離にある全ての物質の速さを0にする”だな。
高速中性子だろうがレールガンだろうが運動エネルギー系は全て防げる。
この方法で問題点はあるだろうか?
まず思い浮かぶのは、”自分が放った質量兵器まで無効化されてしまう”だな。
砲をバリア外で携行すればいいが、敵の攻撃ですぐに破壊されてしまうだろう。
しかし、機械軍の殲滅の際には関係ない。
敵の数は膨大なのだから、いくら大量の砲弾を持って行っても足りない事は明白だ。
それならば、敵の機体同士をぶつけてやればいい。
他の問題点は空気の入れ替えが無いという点だ。
気体分子もバリアで止まってしまうからだ。
しかしこれは解決可能だ。
魔法で二酸化炭素を酸素に戻してやればいいだけだ。
面倒なら潜水艦用の装置を使えばいい。
そして、空気を閉じ込められる事にはメリットもある。
現状では、機械軍は国際条約で禁止されているNBC兵器を用いた先制攻撃は行っていないが、追い込まれれば使用してくる可能性は否定できない。
バリアで外気が侵入しないのであればBC兵器に対する防御としても有効だろう。
さて、さっそく対物バリアの実験をしてみよう。
いきなり人体実験をするのは危険なので、まずは戦車の残骸にバリアを張ってみた。
最初はコイルガンで1発撃ってみたが、思った通りバリアの場所で弾丸が潰れて落ちた。
次はフルオートで試したがやはり単純に先程と同じ現象が連続して起こっただけだった。
次はレールガンだ。
口径50cmの2トン砲弾を初速マッハ50程度まで加速できる機械軍の対要塞砲だ。
人類軍用に転用する案もあったが、同時に鹵獲した砲弾数が少なかった為、運用するには砲弾の製造ライン新設が必要だったので断念されたのだ。
今回の実験用に提供された砲弾は徹甲弾、装弾筒付翼安定徹甲弾、成形炸薬弾がそれぞれ2発ずつだけだった。
出来れば条件を振りたかったが、止むを得ないのでフルパワーだけでテストだ。
まずは装弾筒付翼安定徹甲弾を試す事にした。
本来は塑性流動により貫通力を得るタイプの砲弾だが、今回は金属装甲ではなく魔法バリアなので、ただの細長い運動エネルギー弾としてのテストになってしまう。
装填用のクレーンなども用意されていたが、面倒なので魔法で装填する。
バリアに照準を合わせていると妙な事に気付いた。
戦車の残骸が凍っているのだ。
考えてみれば当然だな。
気体分子の速度を奪うというのは温度を下げるのと同義だ。
中は相当冷えているのだろう。
自分にバリアを張るときには気を付けないといけないな。
結果は分かり切っているが、取り敢えず砲撃してみよう。
耐爆室に入り発射スイッチを押した。
さすがに機械軍の対要塞砲だけあって耐爆室内であってもそれなりの轟音と振動を感じた。
結果は予想通りでつまらないのだが、細長かった砲弾が平らに変形して落ちていた。
次は成形炸薬弾のテストだ。
先程と同じ手順で発射したが、こちらも予想通りだった。
成形炸薬弾のメタルジェットや燃焼ガス自体はバリアを通過しなかったが、燃焼に伴う熱線は通過したようだ。
どちらも予想通りの結果であり、人間なら肉片すら残らないような砲弾に対しても有効な事が確認できた。
これ以上テストしても砲弾の無駄遣いになるので、デモンストレーション用に取っておく事にした。
このバリアに対する最後のテストは高速粒子耐性だ。
中性子爆弾を使われるリスクがあるので超高速粒子に対する耐性チェックも必須だろう。
高速中性子ビームは装置が大掛かりになるので今回は持ってきていないが、高速陽子ビームと電子ビームでテストすれば大丈夫なはずだ。
レールガンと違い、目視では効果が分かりにくいので一度バリアを解除してから検出器をセットした。
検出器の初期化を行っている間に、研究所から乗ってきた車から高速陽子ビームと電子ビームの装置を運び出した。
本来ならどちらも4人で運ばなければならない重量だが、魔法が使えるので問題無い。
まずバリア無しで照射してみたが、どちらのビームも問題なく照射できているようだ。
次にバリアを張って照射したが、予想通り遮断される事が分かった。
これで対質量兵器バリアに対するテストは終了だ。




