遺跡-05
「コウ、分析結果が出ました。」
「何だった?」
「細かい成分は後回しにしますが、完全栄養食です。1個で成人男性1食分に必要な全ての栄養が含まれています。」
「何っ!」
「主な成分は・・・」
「いや、いい。これで、これで飢え死にせずにすむ・・・」
「おめでとうございます。」
「とりあえず食ってみるぞ!」
俺は頭部ユニットの食事用ポートを開け、分析用に取り出していたものを早速口に入れた。
・・・うん、まぁ、そんな事だと思っていたさ。
「いかがですか?」
「とんでもなく不味い。おまけに食感は砂を食っているようだ・・・」
「・・・栄養は完璧ですから。」
「そうだな、飢え死にするよりよっぽどマシだよな・・・」
たとえどんなに不味くてもこれが生命線だ。
防水キャンバス生地につつんでバックパックに入れておいた。
念の為にポケットやポーチにも分散して入れておく。
食料問題・・・いや栄養問題が片付き急いで海まで行く必要がなくなったので、じっくりと時間をかけて調査する事にした。
全ての収納庫を調べてみたが、やはり紙情報はほとんど使い物にならない状態だ。
「キット、読み取れるか?」
「一部の資料は紙質やインクが特別性なのか紫外線照射で読み取れるものがあります。」
「何か分かりそうか?」
「繰り返し出てくる単語などはある程度蓄積できています。日常的な文章なら、そこから推測していく事は時間をかければ出来るかもしれませんが、これはおそらく技術文書ですので何かきっかけが欲しいところです。図面や画像と対応した単語でも見つかればいいのですが。」
「そうか。もう調べられる文書は無さそうだし、端末を起動してみるか?電源が生きている可能性は低いがブレーカーらしきものは見つけたしな。」
「そうですね。まずはここの電源で試してみましょう。キーボードのケーブル経由でハッキングを試みます。ハッキングツールの端子をキーボードのケーブルに繋げておいてください。」
刀だと大きすぎて切れ味も良すぎるので、小柄を使って被覆を剥いだ。
シリアル通信らしくケーブルは4本しか無かったのですぐに作業は終わった。
「よし、繋いだ。じゃあブレーカーを上げてみるぞ。」
ブレーカーを上げた瞬間、照明が点き端末が一斉に起動し始めた。
何百年か何千年か分からないが故障していないとは驚きだ。
やはり地星よりも技術が進んでいるのかもしれない。
「コウ、どうやらログイン画面のようです。まずはこの単語はログインに関連する事が分かりました。」
「よし、その調子で頑張ってくれ。」
「ではハッキングを開始します。・・・これはエラーに関する単語ですね。」
ドカン!
いきなり端末が小規模な爆発を起こした。
殺傷目的のトラップというよりも端末の破壊が目的のようだ。
その他の端末も次々と爆発している。
同時にアラーム音が鳴り響いた。
「撤退する!スラスターフルパワー!」
「了解しました。」
俺はフル加速しながら通路を駆け抜けた。
曲がり切れない時にはハンマードライブで壁を殴りつけて強引に方向転換する。
アクション映画のように飛び出した瞬間に間一髪の大爆発というような事も無く、100mほど離れた岩陰に逃げ込んだ。
そして、俺が飛び出してから5分ほど経ってからようやく大爆発が起きた。
端末と同時に爆発しなかった事や、アラーム音が鳴った事から、中の人間が普通に逃げ出す時間の猶予は設けてあったという事だろう。
しかし、通路は完全に埋もれてしまったようだ。
特務改で焼き切りながらパワーアシストを使って瓦礫を撤去すればまた入れるかもしれないが、もう捜索する価値は無いだろう。
「申し訳ありません。ハッキングを検知されたようです。」
「いや、仕方ない。端末に侵入する以外にもう方法は無かった筈だ。食料が手に入っただけでも大収穫だ。」
「ありがとうございます。今後の予定はどうされますか?」
「そうだな、当面は飢え死にする可能性は無くなったが、まともな食事にもありつきたいからな。予定より入念に探索しながら海を目指そう。」
「了解しました。」
少し離れたところまで移動してから荷物を整理する事にした。
「キット、ミスリル板を装甲に加工して交換する。警戒レベルを上げておいてくれ。」
「了解しました。」
バックパックに入れておいたミスリル板を取り出そうとして思い出した。
「そうだ、この金属は何か分かるか?」
「ディスプレイケースに入っていたものですね。分析してみます。」
「頼む。」
「これは・・・未知の合金ですね。」
「ミスリルを大量生産しているような文明だからなぁ・・・」
「ちょっと撃ってみてもいいでしょうか?」
「ん?まぁ、構わないが。」
金属ブロックを10mほど離れた場所に置き、特務改の照準を合わせた。
「よし、いいぞ。条件も射撃も任せる。好きに撃ってくれ。」
「ありがとうございます。」
キットが金属ブロックの端の方を条件を振りながら撃ち続ける。
HUDに表示されたレーザー出力と金属ブロックの抉れ方からすると、レーザー耐性がかなり高い金属のようだった。
「コウ、データ取りが完了しました。」
「何か分かったか?」
「はい。少なくともレーザー耐性は、キューさんが基礎研究中のオリハルコンの目標性能に相当します。」
「オリハルコンか・・・もしそうなら、防弾性能も高いだろうな。」
「そちらの方も評価してみてもいいでしょうか?」
「もちろんだ。どうすればいい?」
「コイルガンのAP弾で条件を振って射撃して、弾痕を分析したいと思います。」
「分かった。」
俺はコイルガンのマガジンをAP弾の装填されているものに交換した。
キットの方は射撃条件をコイルガンに転送してたらしく、HUDに承認要請が出ていたので視線入力で承認しておいた。
「じゃあ制御を渡す。」
「ありがとうございます。ではしばらくお待ち下さい。」
キットは装甲機動戦闘服を制御してコイルガンを構え照準を合わせると、金属ブロックにAP弾を撃ち込んだ。
「テスト射撃終了しました。制御と射撃条件を戻します。」
「よし、ちょっと待ってくれ。」
俺はマガジンにAP弾を補充してから通常弾のマガジンと交換し、射撃条件の方は先ほどと同様に視線入力で元の設定に戻すと金属ブロックに近づいた。
「どうだ?」
「射撃条件と弾痕の形状から推定する限り、防弾性能もオリハルコンの目標性能に近いようです。」
「そうか。じゃあ、これの登録名はオリハルコンにしておいてくれ。」
「了解しました。オリハルコンでも装甲を作りますか?」
「加工できそうか?」
「特務改なら、この程度の厚さは問題なく精密加工が可能です。」
「この大きさだとバイタルゾーンの増加装甲分くらいか?」
「そうですね。それ以外の装甲板はミスリルになります。」
「わかった。また制御を渡すから加工してくれ。」
「了解しました。」
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キットが装甲機動戦闘服を精密制御して次々と装甲板を作成した。
その後、胸部と頭部の増加装甲をオリハルコンに、その他の部分をミスリル装甲に換装したが、そのままでは光の反射で目立ってしまうので表面にカモフラージュテープを貼っておいた。
グンマー国潜入用の森林迷彩柄しか手持ちが無かったので現在の景色とは合わないが、反射しまくるよりはマシだろう。
「よし、終わったな。」
「では、パワーアシスト機構チェック用の診断プログラムを実行して下さい。」
「ん?」
「複合装甲とは比重が異なるので、補正する方が望ましいです。」
「あぁ、なるほど。じゃあ、始めてくれ。」
再び音楽に合わせて国民的体操を黙々とこなした。
「診断プログラムを終了します。補正データの作成も完了しました。上書きしてもいいですか?」
「もちろんだ、やってくれ。」
「了解しました。・・・補正完了しました。」
「何か変更点はあるか?」
「装甲重量が増加した為、最大搭載重量がわずかに減少していますが、現状では問題ありません。」
「分かった。一応試してみる。」
基本的な突きや蹴りなどを試してみたが、全く違和感なく今までと同じように動かせるようだ。
「随分防御力が上がりましたね。」
「あぁ、行ってよかったな。それにしても・・・」
「どうしました?」
「謎の施設から持ち帰ったアイテムで防御力アップってゲームみたいだな。」
「ドラゴンが現れない事を祈ります。」
「いや、まずはスライムからだろ?」
キットと冗談を言い合いながら探索を再開した。




