07
翌朝起きると、ノアは朝食を食べながら、
「学校行くの?」
と聞いてきた。
今までそんなこと聞き方してきたことなかったのに。
「今日行かなかったら、明日もいけなくなっちゃうから行くよ」
「じゃあ、もう行かなくてもいいよ、学校」
ノアは優雅に紅茶を口に含んだ。
私はじっとその様子を見た。ノアはもう私が学校に行くことを望んでない。
それでもいい気がする。
でもだめなような気もする。
ふと、昨日読んだ本を思い出した。
返さないと、それからもうクリス様とロバート様に会わないと言わなければ、と思った。
ちゃんと言わないと。
だって、あの人達は私を受け入れようとしてくれた大切な存在で、仲間だから。
「ううん。行くよ」
私はそう答えて、カバンを持った。
ノアの方は見なかった。
ノアを見ると行きたくなくなってしまうから。
昨日と同様授業が終わるとすぐに昨日借りた本をもって、クリス様とロバート様の教室に向かった。
目立たないように、教室のそとから、二人を探す。
同じようの廊下を見ていたクリス様とすぐに目が合い、ロバート様と一緒に私のところに来てくれた。
なんだか、この感じに昨日感じたわくわくがあった。
それと同時に感じた。
この二人は目立つ。そこに私が加わることでさらに悪目立ちするのだと。
「あの、話したいことがあって。昨日の教室に移動してもいいですか?」
私がそう言うと、二人はすぐに頷いた。
ドアが完全にしまったところで、昨日の本をクリス様に渡す。
「私、ノアから離れるのやめます。あの、大丈夫です。私、お二人に会うのやめます」
なんとか、そういう。
目線を上げると、困った顔のロバート様と、怒った顔のクリス様。
「意味がわからない。どういうことか、説明しろ」
クリス様ははっきりとそう言った。
私も、自分でなにを言ったらいいのか、分からなかった。
とにかくノアにもう二人に会ってはいけないと言われたから、それを伝えて本を返さないとと思っただけ。
とにかく、言いたいことを整理しないと。
クリス様の言葉で昨日ノアと話してから止まっていた思考が動き始めた気がした。
「ノアにクリス様と会ってはいけないと、私も傷つくし、クリス様にもロバート様にも迷惑をかけることになると言われました。だから、私は私を受け止めてくれた二人の害になるくらいなら、ノアもそばに居ていいと言ってくれてるし、と」
思って…と最後まで言い切る前に、辛抱ならんといった様子のクリス様が
「それがおかしいだろ!」
といった。
怒っている。
そして早口でまくしたてるように、
「ただ友人に会うだけで、迷惑がかかり、害されるということがおかしい。許されることではない。俺たちはなにも悪いことをしていない。考えればわかるだろう、そんなこと」
と言い切った。
ノアの言うことは事実だ。
だけど、そのこと自体許されないことだと、クリス様は言う。
クリス様は魔法使いに違いない。
私が気づかなかったことも教えてくれる。そして私が喜ぶことを平然と言ってしまう。
「友人って。友達ってことですよね?」
「当然だ、ってそっちか。まあいい。俺は友人が少ない。こうして放課後に集まるのは友人のすることだ。そして、未来のことを語り合うのも友人のすること」
胸をはるクリス様。
すごく嬉しい。
ロバート様が呆れたように溜息をついた。
「おふたりさーん。なんか解決したみたいで良かったけど、俺も仲間にいれてよー」
知ってるよ、ロバート様があえて話さなかったこと。
このひとはなんとなく、良く周りをみている人なような気がする。
つい笑ってしまう。ロバート様もにこっと笑った。
「そうだ、特別に、公の場以外の敬語をやめていい。あと、呼び名も、クリスでいい」
「クリス!」
私が試しに呼んでみれば、クリスは頷いた。
「俺も俺も!」
「ロバート」
ロバートも笑う。
二人がどうしてこんなに良くしてくれるのか分からないけど嬉しかった。
この雰囲気がどうしようもなく好きだ。