四話「地獄」
今回はInfeサイドじゃないです。
…
四話「地獄」
…
『See youworldtocome!!』
今や、それは誰しもが耳に、もしくは目にしたことのある単語だと云えよう。
勿論のこと、それは直接的に言われるそれではない。
生きたものは全て、何かしらで間接的に見るか、人から、もしくは報道で目にし耳にする。そんな単語だ。
然し、その言葉を知る殆どの人間は、その言葉を発した、というか正確には記したものの通称は知っている。
地獄の使者、赤髪の悪魔、こと、Inferno=Divalead…
世に言われる猟奇的殺人犯にして、歴史に残る大規模な殺人を起こしたSpree・KillerにしてMass・murderer。
かの悪魔は、その悲劇を喜劇と称し、そして狂気に溢れ返る嘲笑の表情で、世界を、ゲームとし嗤った、世に言う奪うもの、紅い血染めの悪魔にして、酷く精神が歪に歪んだ人間。
しかし、防犯カメラに唯一映った、唯一つの証拠である、その姿は、その通称にはそぐわない少女。
色としては酷く鮮やかで長く、鮮血をも連想させるような目立ちすぎる赤髪や、
片目を隠した包帯、深くかぶった帽子から覗くのは、悪魔とは呼ばれるには程遠い、整った顔たちに、比較的白い肌。
…ただ、一つ言うとすれば、その見えた右目というのは、人間には先天性遺伝子疾患か何かでもない限り見られることは無いような、緋色の目は、人間らしさいう物からは到底かけ離れているだろう。
ましてや、それがただの赤色だったらいい。その目は、不可解なほどに恐怖を引き立たせる深い緋色であってしまう。
彼女は、もしかしたら「悪魔と呼ばれ石でも投げられるる気質、性質」は持ち生まれてしまっているのだろうか。
だったとすれば、あまりにも哀れで、そして寂しい人間ではあるのだろう。
しかし、あくまでも彼女が忌み嫌われる現状は、少なくとも自分が原因で、少なくとも人として生きる術ぐらいは…いや、この推測はやめよう。
所詮は、悪魔と呼ばれるその殺人鬼、自分が自分の偏見の目を取り除いたところで、根本的な解決にはなっていない。しかも、私はあくまで、その悪魔の味方などでもないしな。
「…ん?musea?どうしたんだ、またもそんなに考え込んで。」
…と、考え事をしていれば、ああ、話しかけられたか。
相も変わらずに明るい笑い顔引っ提げて、こっちを見てくるが、正直に言おう、こいつはうざい。どうも気が散る。
「…いや、何でもない。ただ、また事件に考察を入れていた。」
色々首を突っ込まれるのも面倒なので、そうあしらっておくと、「何の考え事してたんだっ?私もできることかっ?」とも言わんばかりの目で見てきたが、見えてないふりをしておこう。用はないといって拗ねると厄介だ。
…って、ああ、また論点がずれた。
赤髪の悪魔、そいつの話だったか。
赤髪の悪魔は、その狂気じみた残虐な殺人やその、常人とは考え難い殺人量から、血塗れの赤悪魔、孤高に嗤う悪夢、狂い嗤う血染めの緋き少女、などと通称されてはいるが、性格や素行は不明である。
「…。」
推測をしながら、私は一つのタブレット端末を見つめる、其処には延々とその、其奴の唯一の証拠映像が映っている。
そのカメラは、唯一彼女の手によって、破壊されておらず、延々とその現場を映し続けている。しかも、音声機能をつけたタイプのそれに、替えたばかりのカメラに。
…無論のこと、その赤髪の悪魔が、意図的に残したものに過ぎないのだが。
まずは、何もない道から映像は始まっている。
…何もない、そう、異様なまでに、何もないんだ。街頭や、街路樹、駐車場などは、確かに映って入るが、何と形容すればいいか。
…まるで、その区域がぽっかりと穴をあけたかのように、人の気配がない。
それは、何時ぞやの、ゴーストタウンへの調査の時の気配によく似ついている…
その街並みから、一つの悲鳴が上がったあたりから、異常はさらに進展した。
金髪の女性は、仕事帰りなのかスーツ姿で、半狂乱になり、ヒール靴は片方脱げ、ストッキングはボロボロにそこが破けているにもかかわらず、必死に逃げ走っていた。しかし、それに対して、一つの影が走った。
…影、いや違う、次の瞬間にそれは何かが明らかになった。
血の如き赤髪のロングヘアー、そして、黒い帽子に黒いジーパン、左手には血まみれのナイフが握られており、手馴れたようにくるくるとまわしてから、血を指先で拭い、舐めている。
ゆらり、と一歩近づいていくたびに、金髪の女性は恐怖に顔をこわばらせるのが解る。
必死に助けを求めているのだろうが、誰一人と助けには来ない。
…否、助けにはこれない。この環境下、生存者はいないのだ。
まあ、辺りの静寂も、おそらく悪魔の殺人によるものなのだろうが。
そして、その次の瞬間には、女性の後を追い目の前に立ちはだかった赤髪の悪魔は何の躊躇もなくその肩へと血塗れた刃を突き立てた。
非、現実的な光景が、其処には映し出される。
痛みに皿に顔をゆがめ、悲鳴を上げているため口を引き裂けんばかりに開き、目を見開き、自分の肉までも裂かれた傷と悪魔を交互に見る女性。
悪魔は、口角を吊り上げ、けらけらと笑いながらその様子を楽しむように、女性の四肢を勢いよく掻っ切り、身動きの取れないだるま状態へとしてゆく。
何度もナイフを振り下ろして、血の水たまりさえできてゆく中、悪魔は二ィっ…と笑って、自分の頬へとハートを描き、そして手首をそのナイフで切ってから、死体の頬にハートを描き、
「see you.world to come!!」
囁くように、しかし、はっきりとした声で言った。
その次に、悪魔は何を思ってか、当たりを見渡した後、被害者女性の心臓を抉り取り、そして、その肉片と化したそれを見つめてから、壁に押し付けるような形で文を書きなぐる。
それは、先程悪魔の言ったその言葉と同じだった。
あまりにも惨たらしい光景で、それを見て吐くものも、確実にいることだろう。
流れてゆく時間、悪魔は一つため息をつき、そしてこちら、カメラ方向に視線を向ける。
カツカツと音を立てて、ゆっくりと近付く悪魔。それにより、心なしか空気感の緊張も高まりゆく。
そしていきなり、画面付近に、赤髪の悪魔はアップで現れる。
「よーォ。これを見ている、愚かな奪われる者諸君。今、テメェらのご世間を騒がせる…赤髪の悪魔、Inferno=Divaleadだ。
ヒッヒヒ…ッ、怯えて待っていろよ?殺戮地獄へのお迎えを…ってなァ?
…ま、せいぜい楽しませやがれ、錆びれ荒んだこのゴミみてーな人生をなァ…っ!!」
そういってから、悪魔は後ろを向き歩いていく。その後にカメラは悪魔のなげたナイフで落とされる。
ガシャン、という、割れるような音の後、静寂と沈黙が流れ、そして、カメラがもう一度画面を復旧させるとそこには、赤い髪を月下になびかせる、悪魔の後ろ姿があった…
というものだ。
この話については、非常に有名となったもので、私自身、なんどもなんども、ニュースなどで見ているため、正直記憶に残りすぎる。
「…ふう。」
私は椅子から降りてベッドに倒れこみ、自分の脳内を整理する。
この事件、解決までは時間がかかりそうだ。何せ、私のような頭脳派ではなく、これは比較的、私とは別のタイプの仕事だ。私に適合するはずもない。
…まだ姉さんの方が役に立つんではないかと思ってしまえるのが癪だ。
…私は、私にできることを探そう。私も探偵、解決と推理に、全力をかけなくては。な。
しかし、そう考えた瞬間だった、私の転機となる、とある手紙が送られてきたのは。
「おーい、museaー、お前宛に手紙来てるぞーっ」
誤字脱字あれば言ってくださると幸いです。