一話「悪魔」
一話 「悪魔」
サイレンは、耳から頭をつんざくように響き渡り
赤と青のランプが酷く、酷くチカチカと光り、日中は平和な外観をしている街並みを照らしている。
…非常事態。
その街を見渡せば、誰もがその言葉を連想し、即座にその場を立ち去るか、それか、馬鹿な民衆共は野次馬となりスマホで状況をとるなどして騒ぐだろう。
…いや、違うな、後者はない。
…否、できない。
そんなことをすれば…
「…おォ…?」
悪魔は、不気味にも口角を吊り上げて帽子を深くかぶりなおし、そして、ナイフの刃を、指の腹でなぞった。
「…今日も赤青いねえ…」
等と、意味不明な発言をして、悪魔は宙を舞った。
いや…宙を舞ったの語彙はおかしいかもしれない。
悪魔はその異常な身体能力に身を任せ、跳躍した。
「さァ、今宵も私を楽しませやがれ!!」
悪魔はそういって、ナイフを振りかざし、回し、民衆に抵抗の猶予を与えぬうちに、殺めた。
ただの、頭の可笑しい人間、そういってしまえばそうなる。
然し、民衆、彼らはその「悪魔」を、狂人と呼んだ。
いや、狂人としか言いようがなかったのだろう。
気違い、狂人、怪物…
そう云うしか、なかったのだろう。
この世界に、どこかの漫画に登場するような救世主などは、存在しないのだから…
「ああ、何ともバカバカしい…っ!!」
…煩いサイレンは、まだ耳に残っているというのに、相変わらずのけたたましい音で、鼓膜を刺激し、頭に響く。
悪魔は、其の様子と血塗れの道を見て、愉悦でも覚えたかのように、カツカツと靴音をリズミカルに鳴らし、そしてパトカーに突っ込む。
…と共に、防弾服をきた男たちが降り、悪魔に銃口を向けた。
しかし、その悪魔はそれを見て、ただ嗤っている。
嗤って、気づけば、其処は唯の血の海だ。
男たちの腕は同様に切り落とされ、そして首から上は地に落ちる。
「ッヒヒ…ッ」
不気味な笑い声が自分の口から零れてから、悪魔はやっとその後ろを振り返った。
血生臭い道に立ち、当たりを見渡し殲滅を確認してから、自分の手首を切り、一人一人の頬に、ハートを描いていく。
その、真っ赤な髪色が、何時しか普段よりも遥かに静けさを増した月夜に酷く目立っている。
狂人、Infero=Divaleadは、悪魔である。
気の可笑しい悪魔、そう、悪魔なのだ。
…
私は今、月だけが光になっているといってもおかしくないぐらい、暗い道を歩いている。
いやあ、目がチカチカする道を歩いた故にか、良い感じの目の保養と休息だ。
…それにしても眠い。
そこはかとなく眠い。
しかしそれ以上に腹が減った。
そういえば今日は朝からなにも食ってない。
いや、朝、昨日食べた食べかけの(とはいえもう八割方食べてしまっていたのだが)ポテチを食べたか…?
…我ながら貧乏くさい。
いやいやいやいや、待て、決して私は貧乏なんかじゃない。
ほんとだ、嘘じゃない、ちゃんと金はある。ほんとだからな。
しかしこのどうしようもなく厳しい世界…
流石の私でも人の金に手でも付けようか…なんて思ってしまう。
いや、しかしそれはいけないな。私のstyleとモラルが汚されるからダメだ。
…って、ああ、失敬。
私の名は…えっと…ああ、そうだ、
私は世にいうInferno=Divalead、何か狂人とか言われてるなんかそういう人。
人に対して狂人ってのは失礼な気がしなくもないけど、そんな感じの人。
そしてただいま殺人の帰りなんだが…時間食いすぎたからか、ものすごく眠い。
あんだけ狂人だの悪魔だの好き放題言われてるけど、中身は唯の人間です。
餓死だってしますし過労死も睡眠不足死もします。
…まあ、まだ動く元気はあるし、明日コンビニに行けばいいか。
…というか、そうでもしないと私只の変質者だ。
血塗れで、右手に包丁、ましてや派手な赤色の頭髪、チンピラに絡まれることさえないが、傍から見ればただの変な人だ。買い物なら明日にしよう。
私は、そんなことを考えて家に帰った。
文句つけられるの覚悟で投稿…
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