現れた大陸は…!
住居跡は思いのほか高地にある。そこから見えるのは、ついさっきまでは無かった、別の大陸だ。
「はて、つい昨日まではこんな大陸は無かったと思ったけどな…。」
僕はいったん集落に戻り、新たに出現したその大陸の様子を見てみることにした。
集落までは瞬間移動の魔法で戻ることにした。
実は僕は、瞬間移動の魔法だけは、こちらの世界にやってきたその時から使えるようになっていたのだった。
なぜだかは知らないが…。
「瞬間移動!」
キュイーン!
いったん集落に戻り、あらためて、突然現れた大陸を見てみる。
集落の人々も、この大陸の出現に驚きを隠せなかった。
「ノボルさん、ノボルさん、見てくださいよ。
昨日まで何も無かった海に、突然あの大陸が姿を現したのです。」
あれが……。
ぎょえええええーーーっ!
ファンタジー世界では、現実には考えられないことが起こるのである。
さっそく、行ってみることにしたが、何しろその位置は、キングスクラウン大陸のさらに北、しかも、見たところかなり大きな大陸らしい。
これは、キングスクラウン大陸よりも大きいんじゃないか。
僕らはみんなで船に乗り、その大陸の海の玄関口と思われる、小さな港町に到着する。
「ここは、レディーファースト大陸というんだ。」
どうやらそのような名称らしい。
「えっ?前はこんな大陸無かったって?
何を言ってるんだ。この大陸はずっと昔からこの位置にあったんだよ。
あんたらが知らなかっただけなんじゃないか?」
ずっと昔からあった?
僕らにとっては、それこそ、?【ハテナ】マークがつくような解答だった。
さっそく、キングスクラウン大陸、そしてキングスリング島について、その住人に話してみた。
「キングスクラウン大陸?
それ、どこの大陸なんだ?そんな名前の大陸、知らないよ。
それに、キングスリング島だって?
無人島?そんな島があったのか?
そんな名前の島なんて、知らないよ。」
なんてことだ…。逆にこのレディーファースト大陸の人々から見たら、
キングスクラウン大陸や、キングスリング島の方が、知られていない存在だという…。
いったい、何がどうなっているのか、よくわからなくなってきた。
ひととおり、この港町を散策してみることにしたが、あとは特に物珍しいものもないようだ。
「待てよ…?これはもしかして、この数ヶ月間、ひたすら無人島の開拓にいそしんできた成果なのか?
だとしたらいずれ、このレディーファースト大陸からも、移民希望者を募らないとな…。」
しかしまあ、このレディーファースト大陸からは、いろんなものが、海に捨てられて、流されていっているようだ。
それらの物品は、ちょうど無人島、キングスリング島の方角に流れていって、この流れに乗っかっていったら、そのまま海岸に流れ着くことに。
そこで、イザコがあるアイテムを持ってきたようだ。
どうやらそれは、『錬金釜』というアイテムのようだ。
「こんなこともあろうかと、このイザコは、『錬金釜』というのを用意しておいたのだよ。」
たとえば、一見するとただのゴミとも思える、海岸への漂着物なんかでも、この『錬金釜』を使って組み合わせることによって、とんでもないレアアイテムに生まれ変わるということなのか。
ではさっそく、試しに使わせてもらおうかと、僕は思った。
このマネキンの頭と、それと、鉄の鍋で、何ができるかな…。
さっそく釜の中に入れてみた。すると…。
ポン!
マネキンの頭+鉄の鍋=鉄の鎧
なんと、鉄の鎧が出てきたぞ。この調子で、他の組み合わせもどんどんいこう。
ポン!
ポン!
鉄の鎧+魔法石=魔法の鎧
さっきつくった鉄の鎧と魔法石で、魔法の鎧ができたぞ。
ワインの空きビン+折れたクギ=鉄の鎧
鉄の鎧+魔法石=魔法の鎧
さらにもう一着。この二着の魔法の鎧は、僕、ノボルと、衛兵のマルセロ・ハンスが装備することになった。
魔法石+お鍋のふた=魔法の盾
魔法石+お鍋のふた=魔法の盾
さらに魔法の盾も二つ。
これも、僕、ノボルと、マルセロ・ハンスで装備させてもらうことに。
それにしても、なぜかこの世界の海でも陸地でも、
『魔法石』というアイテムが、そこらじゅうで見つかって、しかも錬金釜を使った錬金の材料として、広く活用されているのだな、ということを知ったのだった。