気がつきゃ数ヶ月後 島の名前と集落の名前と、それと牧場の名前は
僕ら無人島開拓団はせっせこ、せっせこ、
開拓を進めていった。
まずはひたすら住宅地域、商業地域、工業地域の建設にあたる。
「どうにか、ここを最初の拠点にしたい。」
それから数ヶ月が経過した。まずは住宅地域、商業地域、工業地域と完成した。それから開拓団の食料を確保するための農地と、牧場も完成していた。
商業地域には、武器屋、防具屋、道具屋、食べ物屋、洋服店、宿屋、雑貨屋と、まあとりあえず、ひととおりの店は建ち並んだ格好だ。
「さてと、これでとりあえずは、形は整ったが、中身がな…。」
ノボルが考えていたことは、なんとか基本型は完成したものの、これではまだ、何の変哲もない、どこにでもあるようなごく普通の集落でしかない、ということだ。
「おい待てよ。数ヶ月も働かせておいて、言うことはそれかよ。」
大工の一人、サジが不満気な表情で言った。
さらに他の大工たち、マジと、バーツも、サジに同調する。
ノボルはなんとか大工たちを制止して、次の説明を行おうとしていたところに、あのイザコ・ドルチェの乗った船が到着する。
「あれは、イザコ・ドルチェの船だな。」
イザコ・ドルチェはさっそうと船から降りてくる。そして集落の完成状況を見るなり言った。
「ほほう、ようやっと、ここまで完成させましたか。いやいや、さすがはノボルさんが見込んだ、開拓団の人たちだ。」
それと、衛兵のマルセロ・ハンス、貴婦人のマルシア・アイーダも、やはり同行していた。
まず衛兵のマルセロ・ハンスが言う。
「やあ、ノボルじゃないか。やっとここまで集落を建設したんだね。」
続いて、貴婦人のマルシア・アイーダが言う。
「なるほど、確かに形にはなりましたが、特徴としてはどうでしょう。
どうせなら、この島のこの集落でしか栽培できないような、特産品とかを考えてみてはいかがかと思いますわ。」
なるほど、マルシア・アイーダは、この島ならではの特産品があった方がいいと、アドバイスを送った。
しかし、特産品といっても、何がいいのか…。
例えば、畑で栽培している小麦とか、野菜類とか、あるいは牧場でとれる牛乳を、チーズや、ヨーグルトや、バターなどにするとか。
そうだ、この牧場搾りの牛乳を使って、アイスクリームを、いや、できればソフトクリームとか、いいかもしれない。
あるいは牧場なら、食肉とか。牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などを、この島の牧場でしか入手できない、ブランド肉として売り出すという手もある。
考えはいろいろとめぐるが、さて、問題は本当にそれが実現できるかどうかだな。
とりあえず、今のところは、頭の片隅にでも置いておこう。
この日はマルセロ・ハンスの他にも、何人かの衛兵が同行していた。
「僕はキム・スネッドン。」
「俺はブルース・ウイル・スミスだ。」
「僕はウイル・テッド。」
「僕はロバート・アルフレッド。」
一人一人自己紹介をしてきたが、そんなにいっぺんに自己紹介されても、いきなり全員の顔と名前と、特徴なんて覚えられない。
ただ、ブルース・ウイル・スミスという衛兵は、この衛兵たちの中ではかなり大柄で、魔法は使えないようだが、かなりの怪力自慢のようだ。
あとの3人は、どちらかというと、おとなしめだな…。
まあ、とにもかくにも、まずは無人島開拓の、いやもはや住人がいるから、無人島ではないな…。
とにもかくにも、この島の開拓を進めていく第一歩を踏み出したわけだ。
「そうだ、思いきって、この島と、この集落と、それからこの牧場と、それぞれ名前をつけましょうよ。」
誰かが言った。そうだな、ここは僕らの島、僕らの集落、そして僕らの牧場もある。
だから、僕らで名前をつけないとな…。
さて、どんな名前にしようかな…。
すると、イザコ・ドルチェが、
「それならば、私がこの地にふさわしい名前をつけましょうか。」
そしてイザコ・ドルチェは、思いつく限りの名前を口にしたが、どれもこれも、イマイチ、センスを感じられないような名前だった。
イザコ・ドルチェ本人もそのことを感じ取っていたようで、
「ううっ、やっぱり私には、すばらしい名前を考え出すことは、無理だったようだ。
まあ、仕方ありませんな。ここはやはり、開拓団のリーダーである、ノボルさんに、名前をつけていただきましょう。」
僕がこの島と、この集落と、この牧場の名前を…。
ということは、僕が名付けたその名前が、この先もずっと、残っていくということになるのか…。
と、ノボルは思っていた。そしてノボルが考えついた名前は、このような名前だった。
島の名前
キングスリング島
「えーっと、この『キングスリング島』という名前は、大陸の名前が『キングスクラウン』、つまり『王の冠』という意味だったので、ここはあえて『王の指輪』という意味で、この島の名前をつけさせていただきました。」
集落の名前
ネオアイランドシティ
牧場の名前
カントリー牧場
さらに牧場の運営会社まで設立させるという。
牧場の運営会社名
オールフードファクトリー
こうして無人島に集落を建設したノボルたち。
しかし開拓が進んだのは、この島全体から見るとまだごく一部だった。
この島には、まだまだ知らないようなことが多いようだ。