現実世界に戻れる
ヤーウェは僕らに、現実世界に戻れるということを伝えた。しかし僕は、
「断る。今さら現実世界になんか、戻る気はない。」
「なんだと!?この機会を逃せば、二度と現実世界には戻れなくなり、こちらの世界に骨を埋めることになるのだぞ!?」
「それでもかまわない。こっちの世界の方が、居心地がいいと感じたからだ。」
ここで僕は、無性に僕自身のことを話したくなった。いや、話さずにはいられなかった。
現実世界に戻りたくはなかった。
僕の話ではないが、僕以外の、世の中の最底辺にいる人たちの話を何度も見聞きしていた。
そういう話を聞くと、自分なんかが勝ち組でいるのが、申し訳ないとさえ思えた。
いや、一歩間違えたら、本当に僕自身が彼らのようになっていたかもしれないからだ。
現実世界の方は、僕なんかがいなくなったところで、何事もなかったかのように成り立っていくよ。
だって実際にそうじゃないか。直接それを見たわけではないが、なんとなく、それを感じていた。
僕自身も、最底辺の引きこもりニートの気持ちなんか、本当の意味ではわからない。
だって、僕はむしろ、そんな引きこもりニートのような人たちを、見下してバカにするような、エリートの家系に生まれて、英才教育を受けてきた、いや、受けさせられてきたといったらいいのか。
僕の親父なんか、まるっきりそうだった。おふくろもそんな感じだった。
「引きこもりニートだと!?
そんなやつらは、単なる穀潰し、社会の最底辺のクズだ!」
僕の親父はそう言って、引きこもりニートを見下して、バカにしてきた。
じゃあエリートってのは、そんなに偉いのかよ。他の人間とは違うのかよ、ってな。
そして僕は、そんな親父やおふくろに、いつも反発してきた。
そしてこっちの世界に来て、今まで無人島の開拓をしてきて、開拓団のリーダーは自分だ、自分のおかげで開拓がここまで進んできたんだと、思い込んでいた。
僕は今まで、僕の力で開拓を行ってきたつもりでいたが、気がつけば、世界の方がどんどん拡大していって、僕はいったい何をやっているんだろうと、むなしい気持ちになってきた。
思えば、この無人島の開拓というのも、特にやりたいからやっているわけでもなく、特に目的意識なんかも無いままに、
ただなんとなく、流れに流されるままに、義務だから仕方なくみたいな感じで、やってきていたと、今になって振り返ってみて思った。
そういえばよく、引きこもりニートが異世界に転生して、それこそ現実世界では世の中のカーストと呼ばれる階層の、最底辺の社会のダニとか、社会のクズとか言われていたような人たちが、
異世界に転生してから、見違えるように大活躍をして、しかも『チート』とかいう力を使って、展開を自分の有利に進めていって、努力とかしないで、ある意味裏の手みたいなことを使って成功して、活躍していくみたいなのが、多数出回っている。
自分とは関係のない話だと思っていたが、まさか自分が直接それに関わることになるなどとは、その時は思いもしなかったなあ…。
異世界ファンタジーのチート勇者たちは、それぞれの世界で輝いていると感じた。
だから、僕もそんな異世界ファンタジーの物語の中で冒険をして、チート勇者になってみたい、というような願望はあった。




