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日和村事件 香川北山村通信基地局 追跡

 実際この基地局の名前は長すぎます。何という名前にしようかと考えて考えて考え抜いた末にこれですから自分は思考力が足りないです。

 雅はスターレットをかつてない速さで走らせた。山里のくねった道も果敢に攻める。向かっている先は先の爆破されたと思われる通信基地局だった。実際は此処をやられても屍生島の様に直ぐに通信手段がなくなるわけではない。インターネットや防災無線もきちんと働けば、被害は最小限に抑えられる。しかし、呑気で優しい、村民性のこのあたり一帯の住民に感染者を隔離、殺害する勇気は無いだろう。平和ボケが故に気付かないなどという事も有り得る。あの村はきっと一瞬でウイルスに占領され、住民は暴徒という名の狂人と化して、国家に消されることになるだろう。義父母を助けたい気持ちもあったが、雅は今、基地局を爆破した犯人に追いつこうと必死である。もしそこで見つけたのが兄だったら。それを考えると居てもたっても居られなくなる。アクセルを更に強く踏むと、旧車のエンジンが低く鳴った。


 爆破された基地の近くでは煙が空を覆うように昇っていた。地面に影が見えるほど、それは巨大化し、頭上には焦げ臭い匂いを含んだ黒い空気が漂っている。駐車場に車を適当に停めると、急いで基地の電波塔に向かった。

「酷い。」

 建物も塔も完全に破壊され、鉄屑のように横たわっている。この様な事件に精通していない雅にもかなりの衝撃が此処で起きたことは解った。いまだに残った鉄の残骸と周囲の草木が燃えている。恐ろしく熱い空気が皮膚に纏わりつく。直ぐに犯人を追わねばと思ったが、雅は此処に来るまで一台も車とすれ違っていない。つまり犯人は此処から徒歩で逃げた或いは逃げていないという事だ。これはまだ遠くに行っていないと彼女は読んだ。足に自信があるわけではないが、犯人が向かいそうな場所と言えば一つ、あの国有林の奥の印の位置、竹島が事件のカギを握ると言っていたあの場所しかないと思った。


 基地の裏側にある空き地はその国有林に繋がる山道がある。其処は来るまでは入れない狭さだが、確かに整備された道が続いている。印の位置には此方の方が近いのかもしれない。その地図を取り出すと、確かに此処からでもいける事が確認できた。更に、裏側の空き地で奇妙な軽トラックが発見された。此処の近くの自治体の者ではないが、新しい白の軽トラックが止まっている。犯人と思われるその人物がこれで来た可能性は極めて高い。そしてついさっきこのトラックを降り、基地を爆破し、自分は徒歩で印の位置に向かったのだ。そう推理できた。


 雅は勇気を振り絞って山奥へと続く国有林の道に足を踏み入れた。幸運な事に運動靴は結構使いなれたものを履いていた。鬱蒼と茂った森の奥へと進むたびに日光が届かなくなってくる。森林の合間に降り注ぐ光の柱が時々見えるだけで、他は昼間でも夜中の様に暗い。動物の影は今の所見えないが、植物の陰に蝉の声が聞こえ、鳥のさえずりが聞こえる。普段は気にもしない事が妙に大きく不気味に感じられるのは、この状況と気分の所為だろう。

 急いで此方に駆けてきたは良いだろうが、義父母や日和村の住民は無事だろうか。今はそのような心配をしている場合ではないのだが、自然と頭がそちらに向かってしまう。全て杞憂に終われば良いと願ったが、基地が爆破されている時点で有事だ。もう遅かったのかもしれない。犯人にウイルスをばら撒かれれば、それこそこのあたり一帯は屍生島と同じ轍を踏む。


 雅は20分ほどさらに山道を駆けた。そしてついに印と同じ位置まで登ってきた。このあたりは森には行った時よりも木が多く、光の無い場所だ。此処にはゴーストハウスが立っていてもおかしくない。まだ正午頃の筈だが、薄暗い森の中で雅は背筋に悪寒が走った。しかし、ここまで来たのも生半可な決意ではない。此処で犯人と対峙すれば、対決して一連の事件の動機と内容を問いただすまでである。

 雅は恐る恐る印の位置にあるその洞穴の様な人口施設を見た。これが何か雅には解らなかったが、何か尋常ではない気配を洞穴の奥から感じる。目の前に立つだけで吸い込まれそうになった。人工物だと解ったのはその洞穴の形状と奥の方の整備状態からである。もしかしたら自然にあった物を改造しただけかもしれないが、いずれにしろ人間の手が加わっていたのだ。やはり夫が隠していた地図は普通の地図でない、この場所を記す機密の物であったに違いない。

 悪魔の巣窟への一歩が踏み出された。


  

 私は恐怖趣味的な小説のファンですから何処かで読者を驚かせられたらと考えています。その思いとは裏腹に面白くないこの小説を読んで頂き、誠に有難う御座います。

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