日和村事件 日和役場③ 考察
結構季節や月日に関する描写を省きました。そのような物を意識させたくなかったので。
日和村役場の二階にある談話室は普段誰も居ない寂れた部屋だ。此処は村民が自由に使えるが、この様な田舎に態々此処に来て話す人など滅多に無い。其処で話そうという竹島の堤案に同意し、二階に上がる。
「いや~此処は眺めが良いんですね。」
「そんなことは...」
「もうとっくの昔に知っている。ですか?」
「何処まで私の個人情報を詮索すれば気が済むのですか。」
「何、貴方がどれ程此処に居るのか、さっきの職員に聞いたまでです。」
「全く、田舎民は個人情報管理に疎い...」
「いいじゃないですか。それはまあ置いておいて。」
自分で言い始めた事だが、彼は直ぐに話題を事件の事に移した。
「それで昨日の書類の案件ですが、何か貴方の方から情報は頂けますか。」
「裏に書かれていたことは何か見通されていたようで気持ち悪いですが、確かにその書類、ウイルスに関する研究を私の夫と兄がしていたことは事実の様です。二人は同じ薬学系の研究所の出身なので。」
「ええ、それもウイルス研究であると検討をつけています。二人は一時期共同研究していますし、2人の島での関与の線は非常に濃厚です。因みに貴方自身は自分の兄と夫の仕事と研究に気付いていらしたのですか。」
「はい、でも明確に研究の内容を理解した訳ではないので、まあ、私が文系の出身である事とドイツ語を習得していない事もあって、この書類に書かれている論文内容とウイルス研究が解りません。」
「残念ながら私もドイツ語はよく解らないのです。今日知り合いの一人である京都に居る医学の教授に頼んでみましょう。」
「成程、では渡しておきましょう。あと、疑問に思ったのですが、私の兄が異様に若く書かれているのですが。ああ、その葉山さんですか、兄の年齢を間違えてらっしゃるのではないですか。あの書き方だと28歳くらいの葉山さんの数歳上で、大体30歳くらいに見えます。」
「いえ、葉山さんが私との会話で実際に教えてくれた彼の実年齢は会っていました。彼が非常に若いというのもあるのでしょうか。見た目としても写真で見ただけですが、彼は実年齢よりも若く見えますね。」
「え、ええ。まぁそれはそうかもですが、私の兄は喫煙者なので運動神経はそれ程よくないと思います。」
「それは葉山さんも話していましたが、時々並はずれた力を見せていますね。何か貴方のお兄さんはスポーツを?」
「ああ、バスケットボールをやっていました。」
「そうですか。しかし、この薬学系の論文は見たところ...」
この時竹島は自分はドイツ語に精通していないのでと相槌を置いてこう言った。
「この論文に本格的な研究内容は書かれていないと思います。まあウイルスの概要と一般人に説明着く程度の事は書かれていますが、本物はまた別にあるのでしょう。それはきっと最後のこれにあるでしょう。」
「最後のこれとはなんですか?」
「この他の者とは比べ物にならない丁寧な地図の事です。此れだけは子供達の虫取りの為に使われたもんじゃない。此処まで明確に書かれたのは他人に見せるか、自分の為の物の中でも極めて重要なのかのどちらかでしょう。」
「ああ、確かにそうですね。しかもここに書かれている印は国有林の最奥と言ってもいい位の場所です。」
「行ったことはありますか?」
「まさか、それは無いでしょう。あそこは一般人が滅多に立ち入れない場所です。正確に言えば行けるんですけど、行く必要も無いですし、此処から先はもの道も整備されていないんですよ。」
「ええ、知っています。しかし、私は一連の事件の核心に当たる物が此処にあると思っています。憶測の域を出ない推論しか提供できず、申し訳ないのですが、研究の内容と言い、この事件に関与しているのは貴方の親族に当たる2人でしょう。そして、もっと言えば事件はきっと終わっていない。一度作られた生物兵器が使われずじまいで終われるはずがない。きっと、この地図にはまだ解決されていない陰謀が隠されている。そう考えています。信用しないならしなくて結構ですが、私は必ず解決に達します。これは葉山礼輔との約束なので。」
竹島はそう言い切ると、最後にこう言い切った。
「結果が解ったらまた此処にやってきます。そうでなくても私はもう一度此処に来なくてはいけないと思います。その時またお会いしましょう。」
青い車に乗り込んで一礼すると、手慣れた動作でギアを変え、シートベルトを掛けて、急発進した。どうやら相当急いでいるらしい。
そう言えば、いつ戻ってくるのかを聞いていなかった。
あまりテンポよく物語が進みませんが、もう少し我慢してください。
御付き合い頂き有難う御座いました。