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青き薔薇の公爵令嬢  作者: 暁 白花
Blooming Days
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9

 『千歯扱ぎ』の扱いについて私は、麦にも使える為、他領にも他国にも輸出出来る事を付け加える。


 ただ輸出それによって真似されてしまうだろうけれど、更に進化させればいいだけの話。


 国力とは生産力。

 

 天下布武―― 真実・・のローゼンクォーツ皇国がどの様な状況に陥っても、戦になったとしてもハーティリアに攻め込ませず、またハーティリアの民が飢えて内側から崩壊させない為、七徳を持って富国強兵の領へとして見せる。


 暴を禁じ、戦を止め、(ハーティリア領・政権)を保ち、功を定め(功績を認め)、民を安じ(気に掛け)、衆《組合》を和し、財を豊かにする。


(綺麗事よね)


 法で定めでも法を犯す者は必ず現れるし、戦をしたくなくとも仕掛けるならば応戦しなければ殺られる。

 既に派閥争いが目の前で起こっている。

 私が魔力を持たないから功績をたてられたくないと、認めようとしない。

 

 民を気に掛けてもいない。


  人が一人居るだけで喧嘩が起き、人が十人集まれば騒動になる。百人集まれば競争に、千人集まれば戦になる。


 今はまだ、それらはお祖父様やお父様に丸投げしてしまいましょう―― なんて考えていると、お父様と目が合い、メッと軽く眉を寄せ叱られる。


 お父様が小さく苦笑を浮かべ、お祖父様と頷き合うと――


「もう良い。ソーナは退出なさい」


 と、言って下さったので、可愛らしく、それでいて大人びたカーテーシーをして見せ、私は議場を後にした。


 議場の扉が閉められる一瞬、足下から這い上がり、じわじわと身体の熱を奪い、凍傷を負わせる様な精密な魔力制御から一瞬にして凍り付かせる様な魔力の奔流を感じた。


(……流石は氷の魔王と謂われるだけの事はあります)


 あれでは抗魔法も役には立たないだろう。何せその上から獲物を凍り付かせるのだから。


 レイフォンが死なない程度の魔力(怒気)に晒されていたのよね。


(……自業自得ね)


 もしかしたら孫・息子にぶつけ切れなかった怒りを、彼等にぶつけているのでは? と思ってしまった。


 私も私で、彼等のお母様への発言は到底許せるものでは無い。


(口先だけのお偉い魔法士様や尊き魔法貴族様は仕事が無くなったらどう存在価値をしめすのかしら? そして一生懸命研究アピールをして研究費を浪費するだけの成果の出せない技研は次の請求を出して、審査を通してもらえるかしらね?)


 扇で隠した口元で微笑を浮かべる。


「お嬢様?」


 廊下で待機していたシアンが、議場から出て直ぐクスクスと笑う私を訝しむ。


「良く造ってくれたわね。後で貴女とセバスチャンには褒美を授けるわ」


「は?」


「可笑しな事では無いでしょう? 貴女達が造ってくれた物が、お母様の負担を軽減してくれるのだから、功績に見合った報酬が出るのは当然でしょう?」


 何を当たり前な事に驚いているのだろうと首を傾げる私に――


「い、いえ……あの……お嬢様……が考案なされた農機具で、私共は――」


「安心なさい。私が出せる報酬なんて限られているのだから大した事は無いわ」


 むしろ足りないくらいだ。


 私は未だに戸惑うシアンを置いて歩き出す。少し慌てるシアンの姿も見れたし言う事は無いわ。


 お母様の命が危険域まで落ちた。


 これであの農機具が魔法貴族達に壊されて、闇に葬り去られてしまう事を、お父様とお祖父様達は許しはしないだろうし無視出来ない。


 ならば領主として、ハーティリアの当主としてどうするか。


(お父様達なら、農機具の開発に関わった者を正しく評価をして報酬を出すわね)


 忠誠心とはある意味、金銭で買うものだ。勿論金銭(それ)だけで完結するものでは無いけれど、忠誠心を高めて持続させるのは、上に立つ者の言葉と行動―― そして決断と実行力。


 しかし家臣や民の根底にあるのは生活だ。

 衣食住、それらを支えるのは金銭だ。その3つだけでは無く、欲を充実させるのも、だ。


(どんな綺麗な言葉で取り繕っても、ね)


 無償の愛―― というか無償の忠誠心を誓われたとしても、その私が金銭を得られなければ、無償の忠誠を誓ってくれている者に何もして遣れやしない。


 霞を食っても生きてはいけない。衣服がなければ、住む場所がなければ雨風を寒さを凌げない。


 裸族って手段もあるけれど、獣と違い毛皮の無い人間にとって衣服は急所を隠して守る物だ。


 魔法士もそうじゃない者も関係無い。人間だろうと精霊族と呼ばれるエルフ族だろうとドワーフだろうと獣人や、それらのハーフだろうと私には関係無い。


 これからの私には欠かせない技術を持った人材だ。だから一つにして見せる。


 そう決意して、真っ直ぐ前を見据え、堂々とブルーローズ城内を歩く。




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