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私が書いた書類を読み返す二人に私は言葉を紡ぐ。
「私だって始めて直ぐに全てに良い結果が出る、なんて都合の良い事を考えている訳では無いわ。たとえ愚かに見えても、どんな事も愚直に一歩一歩足を踏み出さなければ何も始まらないし、何も産み出せないわ」
私は憂いの表情を作り、だけど―― と言葉を続ける。
「私には道具を扱う術を身につけてはいないの。だから「農具」を作るのを手伝ってほしいのよ」
憂いから一転、主として少し尊大な身振りで書類と私の言葉を吟味しているセバスチャンに言い放つ。
「『時はその使い方如何によって、金にも鉛にもなる』のよ。私は八歳になれば凰都の学園に入らなければならない。その間、私の行いに協力してくれて、信頼出来る者達が必要なの」
「……その協力者―― しかも男手として白羽の矢が立ったのが私……という事なのですね」
「ええ」
そうですか……と再び考え込むセバスチャン。
「直ぐに答えが出せないのも当然よね。けれど良いわ。私の陣営に入らなくとも、見習いとはいえ、この計画に手を貸してしまえば私に付いたと見なされてしまうもの。だからじっくり考えて」
私は目を逸らさずセバスチャンを見据える。
「けれど覚えておいて。『決意は遅くとも、実行は迅速なれ』。心が決まったなら教えて」
私はジッと待つ。
すると同じように私の目を見ていたセバスチャンが苦笑した。
それを見て、答えが出た。答えを出したと感じた私は改めてセバスチャンに問う。
「心は決まったみたいね。では返答は如何に?」
「先程、ソーナお嬢様は『道具を扱う術を身につけてはいない』と仰いましたが、ソーナお嬢様が手を出さなくとも、このくらい私が作りますよ。これでは答えになりませんか?」
「いいえ、十分よ。では、お願いね」
「畏まりました。では私は早速取り掛からせて頂きますので」
見事な一礼を見せ、部屋を退出したセバスチャン。
部屋から出て直ぐ、廊下の窓から何かが落ち、地面を強かに打つ音がした。
「時間からしてセバスチャンね」
「後で叱っておきます……」
顰めっ面を見せるシアンに、程々にね――と、窓から飛び降りたセバスチャンを擁護する。
「いくら感情を抑えても、自分を傷付けたレイフォンに遭遇したくはないでしょ」
窓から飛び降りた事を知っていて、セバスチャンに何のお咎めも無し、というのは他の使用人に示しがつかない。
「彼には指示した事とは別に、私の下でタダ働きをして貰いましょうか」
見習いとはいえ、お給金は出ている。
それに―― と考えたところでシアンが飛んでもない答えに行き着いた。




