インタールードー別れーⅤ
小さな背中。今にも崩れ落ちそうな身体を、両足で踏ん張って支えて背筋を伸ばして立っている。
精霊力の煌めき、属性が循環していく輝き、練成の炎、刀を打つ火花が幻想的だ。
少女はたった一人を想い一心不乱に願い祈りを込めて鋼を打つ。
幼い少女の様々な感情が響き、共鳴し、締め付けられるような痛みを伴い私の胸を強く打つ。
――アウローラは枝の一つと言ったが、最早、アイツという木から別離し、独立した一本の若木ではないか……。
「女の童よ。私を喚ぶなら人ではいられなくなるぞ」
それでも良いのならば、私が祝福してやろう。新たな精霊の生誕を。
“ルミナス”それがお前の精霊名だ。
ルミナス・カデンツァ・ラスヴィニエート。仕上げてみせろ神刀を。
†
†
――ふーん。頑張るじゃない。今にも死にそうなのに。
わたしの一欠片を見る。
汗や涙で可愛い顔はぐしゃぐしゃ。しかも血に塗れてるから余計に可愛い顔が台無しだ。
愚直で不様。だけれど真摯な祈りがそこにはある。
――だからこそ、命は煌めき、気高く尊い。だからこそ我々は人に魅せられる。
時に人をからかい、時に人を試し、時に人と交歓しあい、精霊は共に在った。
中には愛を育み、子を成した。その子がエルフ、ドワーフ、人魚、獣人の始祖だ。
だが、何時しか彼らを人は下に見始めた。亜人と呼ばれた精霊族と人族は袂を別ち、棲み分けをした。
精霊も人とは距離を取り始めた。中には精霊を視て、精霊と仲良くし、契約するものが顕れた。
人は失って久しい力を持って生まれた者を聖なる巫女や聖女と呼び、祀り上げた。
精霊の力に目覚めるのは圧倒的に女の童が多かった。
女王になったりもしたが、武力の男どもが玉座を簒奪した。
男どもが精霊の力を持つ巫女に抗い、勝って見せたのは、男が発現させた魔力が原因だった。精霊の力が希少でも、数の暴力には勝てなかったからだ。
男たちは魔獣の血肉を喰らい、結晶を噛み下だし、力を得ていたのだ。
それが男尊女卑の始まりだ。
――ん? へぇ、届いたんだ。はぁっ!! そこまで祝福するぅ?
天の女神が私と別の存在として精霊の名を授けた。
――軍神に祝福されるなんてこれから大変ねぇ。
それはそれで面白い。独立した元私の欠片がどんな事に巻き込まれるか楽しみだ。
†
†
ソーナの――奏那がどんなに私を想ってくれているのかが伝わってきた。
一緒に居たいと思ってくれている。別れを惜しんでくれている。二度と逢えなくなること、触れ合ったり、笑ったり、時にはぶつかって、また仲良く出来ることが出来なくなることを悔やんでくれている。
私だって同じだ。ありがとうでいっぱいだ。私に声をかけてくれた初めてのひと。親友と言ってくれたこと。諦めていた好きな事を応援してくれたこと。 嬉しかったよ。ありがとう。
今では声をかけてくれたり、かけたりといったお喋りをする人は同僚は出来たけど、それだけだ。
たぶん、私は生涯、奏那へのこの想いを抱いていくのだろう。こんなに誰かを好きになることは、もう無い。
好きだよ。大好き。何時までも私の大好きなひと。




