表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青き薔薇の公爵令嬢  作者: 暁 白花
Beginning
17/228

星霧

 私は眠ってしまったアリシアの頭を彼女が起きないように撫でる。


(ずっと私について回り、護衛をしてくれていたのだから疲れているのも当然ね……)


 彼女達のお蔭で私の貞操は守られていた。

 もし、彼女達がいなかったらと思うと……。


 音を立てないように、客室から出る。


「お嬢様?」


「今は貴方が護衛してくれているのね。……ラファーガも疲れているのに……」


「レインと交代してるからヘーキ」


 客室から出ると、ラファーガが壁に背を預け、簡素な椅子に座り、手に持つ駄菓子を食べていた。


「ソレ、やけに気に入っているのね……」


 ラファーガが手にしているのは、魚のすり身、米粉を加工した物をみりん、砂糖醤油、香辛料と少量の酢で味付けした串に刺さったイカ擬きの駄菓子。

 これをパリパリにしたり、パン粉で揚げたりすればエールの御摘まみから、子供達の駄菓子としてバリエーションが豊富で、アレンジをすれば即席料理に使えたりして旅のお供としても大人気。そんな駄菓子がこの船にはつまれている。


「ん、ああ。まぁ……な。それに何故かこいつに合うだろ?」


 ラファーガが掲げたのはサイダーだった。


「本当はエールとかの方が良かったんじゃない?」


「それはそれ、エールよりお嬢様の方が俺達にとっては大切。それくらいは弁えてるさ。それで、お嬢様はどちらに?」


「甲板に、ね。星空を見たくて……」


「ん~? アリシアは?」


「休ませてあげたいの」


 それじゃあ、とラファーガが席を立つ。


「俺はお嬢様の守護者ガーディアンだからな。少し離れた場所に待機してる」


 そう言って彼は私の後ろをついてきてくれる。


「ありがとう……ラファーガ」


           :

           :


 ミッドナイトブルーの透き通った星空。

 星と星を煌めく糸で結べば、星座の絵物語が広がっていく。そこには恋の物語もあるの?

 ちりばめられた白銀の星は甘い砂糖。天の川を甘く変えていく。こぼれた雫が私の心を甘く染めていく――



 ――そんな詩の一文が思い浮かぶほど今の私はおかしい。


 原因はわかっている。サファリス様に告白されたのが理由だ。

 封じたはずの感情だった。封じて鍵を掛け、胸の奥深くに沈めた想い。

 浮かび上がって来ることも、再び開くこともないはずだった。


 だから婚約を―― 国や民、ハーティリア領を守る為に、徹底的に政略の道具として私を使って見せた。

 それにハーティリア領の港街メーアの向こうはガーランメリアが在る。

 内憂に対して外征で解決する。これは国の統治の初歩。民の眼を内憂から逸らす為に目新しさが必要だった。それ故に攻めるのは海洋貿易国ガーランメリアだった。

 だが、ガーランメリアは友好国、それを攻めるにはハーティリア領を制圧下に置かなければならず、せっかく実を結んだものを蹂躙される訳にはいかなかった。


「………………」


「よぉ、こんな時間に何をしてるんだ?」


 後ろからかけられた声に私は振り向き――


「星空と……海を見ていました」


 ――声の主、サファリス様に答えを返す。

 直前まで想っていた彼の顔を見ていられなくて背を向ける。


「やっと奴から貴女を取り返したんだ。海に飛び込んで泡沫あわになって俺の前から消えないでくれ」


 切な気な、それでいて焦がれた様な声音。

 

「サファリス様!!」


 彼に後ろから抱きしめられていた。

 まるで捕まえていないと、私が本当に泡沫となって消えてしまうとでもいうように。


 それでも彼に振り返らない様に抵抗を試みているものの――


「……こっちを見ろよ」


 彼の方に顔を向けられてしまう。

 強情な私を振り向かせることに成功した彼は、苦笑を浮かべる。


「漸く、その瞳に俺を映したな」


 そう囁いた彼は無言のまま切なそうに弱い笑みを浮かべ、それでいてその瞳は雄弁に私のことを心配だと語っている。もう二度と離さない、という様に抱きしめる腕の力を強めた。


「今の私は貴方の知っている『ラピス』では無いですよ? 今の私は穢れた――」


「――何者にもソーナを奪わせはしない。だからそんな嘲笑えみを浮かべるな」


 この暗い海の様に私の心は黒い水で満たされている。そんな私は彼に想われる資格は無いと、自分自身に嘲笑を向ける私に――


「たとえ、それが貴女自身ソーナであっても、俺の惚れたソーナ・ラピスラズリを貶めるのは許さない」


 こわいくらい真剣な表情で言われ、私は頷く事しか出来なかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ