ブルモメのメモ5
「役割を頭で理解していても心は別ということもあるわ。色々と考えることもあるだろうし、今の貴女に必要なのは、この様な煩わしき場所などではなく静かな場所での休息ね」
暫く他愛ない話で歓談が続き、お茶会もそろそろお開きという時、アルマテイア様がじっと私を見詰めていたかと思うと、なるほど、と頷くと先王様をペイッと放り出すと座椅子から腰を上げ立ち上がって私に言ったのが先の言葉だった。
「私の離宮へ暫くは移りなさい。彼処ならば静かに心を休めるのに丁度良いわ。アルシアとアリシアに話をして荷物を直ぐに纏めなさい。明日の明朝に出立するわよ」
「ですが、私は――」
「あ、こら! 我とアスランの許し無しに勝手なことは――」
「あ゛ぁん? 何か仰いましたか? 貴方様? これ以上囀ずるなら貴方様を去勢された猫の様にして上げましょうか? ん?」
「い、いや、だからアスラ――」
先王様はとうとうアスランの気持ちを尊重して代弁している風を装いだした。
「今はもう貴方様と話すことはないわ。ソーナは私が連れていきます」
「いや、だからな。その理由をだな……」
ゴニョゴニョと尻すぼみになっていく言葉。先王様、威厳は何処にお散歩に行かれたのですかー? 帰ってきて上げてー。
「今の私は貴方様の妻でも多数の女の内の一人として此処に立ってはいない。一人の義娘を思う義母として此処にいる。では、ごきげんよう」
さぁ、行きましょう――と、私はアルマテイア様に手を引かれ、退出した。
『ああ、冷たい、なんて冷たい目なんだ。もっと、もっとその目で我を見てくれ! ハァハァ……放置遊戯……ハァハァ……ご、ご褒美……アルマ……アルマ、我の女王しゃまぁ!! たまらんブヒィィ!!』
後ろから聞いてはいけない声が聞こえてきた。
「性癖とこの国の女性の地位とは別なのよ」とは、アルマテイア様談である。
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