Interludeー獲物ー
エロジカの殲滅戦は順調に進んでいる。
そんな中、私は保護した人狼の女の子(今は狼姿)を抱き、高みの見物を決め込んでいる。
ライフルの狙撃―― 弾丸の雨はエロジカを蹂躙し、死体の山を築いていく。地面は一面真っ赤に染まり、血の海と成り果てている。
それでも中には運良く生き残ったモノもいるが、這ってでも生き延びてやると背を向けたモノには、ライフルに装備された剣槍で刺し貫き、切り裂き確実に斃していく、青百合隊(仮)の女性隊員たち。
エロジカ本隊の深くに一際立派で雄々しい角の巨躯のエロジカを見つけた。
「あれがシコルノスキーね」
しかし――
――聞いていたほどの驚異は感じないわね。
むしろ混乱して周りに喚き散らしているように見受けられる。
「サラお姉様!! シコルノスキーの隣にいるエロジカを射って下さいませ!!」
「ええ!! 我が心の妹よ!! このお姉様に任せなさい」
――今、サラ、私を妹って言った!? 妹って妻や恋人を指す言葉ではなかったかしら? いや、女同士が友人や妹を呼ぶときも……。しかし、今の言い方は前者に近い響きがあったような気がするのは気のせい……ではない……輪よね……絶対……。
物凄く張り切って側近らしきエロジカを射殺していくサラがいた。
側近を討ち取られたことでさらに冷静さを失ったシコルノスキーは撤退を始めた。
しかしその先には潜伏した狙撃隊がいる。
「……」
私は席を立つ。
ホーホーと梟が鳴く鬱蒼とした森の中を歩く。
エロジカが潜伏した狙撃隊に一掃されていくのは見るに絶えない光景だった。私が提案したライフルはその威力、効果を最大限に発揮して見せ、有用性、脅威を示した。
訓練さえすれば、詠唱もないため魔法より扱いやすい。
初めての戦場だった。魔力を持たない私は当然魔法貴族の務めを果たせない為に、お母様にお供させてもらえない。魔モノ退治も賊に狙われて討伐する場にも居合わせることはない。
今回も成りゆきを見守るだけだったけれども、私が提案した兵器で命が散った。これからは敵―― 人間の命も奪っていくことになる。
――それは……それは私だけの罪だ。この銃さえあれば……ハーティリア家の一員として、魔法が使えなくとも役に立てる。認めてもらえる。あの目の前に広がっていた死体で出来た道が、これから私が歩んで往く道だ。
何より、試作機の人工魔力炉もある。必ず完成させて認めさせる。
そのためには先ずは手柄が必要だ。




