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青き薔薇の公爵令嬢  作者: 暁 白花
天高く
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Interlude ーリンク4ー

 わたしは何時もの待ち合わせのコンビニで日向と祐麒くんが来るのをまだかまだかと待つ。


 そのつかの間にスマホを操作して音楽プレイヤーアプリからお気に入りのアニソンを聞く。


 ――こんな重度のアニオタと付き合ってくれるんだから祐麒くんって奇特な人だよね。


 思わずわたしは顔を顰める。目の前の道でゲームをしながら運転をしていたドライバーが通学中の小学生の列に猛スピードで突っ込むという事故が新学期早々に起きた。

 その時わたしは日向にメッセージを写真付きで送り終えたところだった。


 危ない!! と鞄を落とし駆け出したのだけれど、わたしよりも速く、下級生を避難させて自分が逃げ遅れてしまった男子児童の下に駆け付けて助けた他校の女子高生がいた。


 ただ、その女子高生が身代わりになるかの様に車に跳ねられて亡くなってしまった……。


 ただ、それを見た瞬間、身体に衝撃が駆け抜けて胸が苦しくなった。


 ただ、それから何も無いから問題無いのだけれど……。


 ――あれは一体何だったのかしらね?


「おはよう」


 祐麒くんがわたしを見付けて手を振って小走りで駆けて来る。


「おはよう、祐麒くん」


「おはよう、奏那さん。待ちました?」


「今さっきわたしも着いたとこだから気にしないで」


 ―― 一度はやってみたかった恋人同士の待ち合わせのシチュエーションだぁああっ!!


 この状況に舞い上がる。日向となら何度もあるけど、そ、その、こ、恋人とは初めて何だから仕方がないじゃない?


「と、ところで、これ……。約束してたカツサンド」


 おずおずと差し出す。


「本当に作って来て来るなんて、やった!! ありがとう、奏那さん」


 物凄い喜んでくれた。ただのカツサンドなのに笑顔を向けてくれる。


「うん。そこまで喜んでくれるなんて嬉しい」


 あと、これ―― っと差し出す。


「なるほどです。こっちも有り難く頂戴します」


 わたしが渡したのはブレスケアの清涼カプセル。


「奏那さん」


 祐麒くんがちょいちょいと手招きするので、彼の背に合わせて少し屈む。


「ッ!!」


 耳許で囁かれる「大好きです」の言葉と啄む様なキス。


 ――ななななななななななななな!! た、確かに練習優先でお出掛けとか、なかなか出来ないけど、だからこそ「大好きです」って囁かれるけど!!初めてよね! 頬っぺにチュッて!!


 顔が熱い、耳まで熱い。


 ――ひ、日向! 日向ぁッ!! ヘルプ、ヘルプ!!


 わたしは真っ赤になって祐麒くんを見詰める。


 年下の彼がしてやったりと不敵に笑う。


 わたしは彼の肩に手を置いた瞬間――


「思った以上に耐性がないことがわかった。ステイクール奏那」


 襟を引っ張られて祐麒くんから引き離される。


「日向……」


「とりあえず、あんたは行った行った」


 日向が祐麒くんを追い払った。何故?


「あーじゃあ。姉ちゃんも来たし、行ってきます」


「うん、気を付けて、祐麒くん」


 わたしも「好きだよ」と小さく声に出して伝える。


 改めて日向と朝の挨拶を交わして、歩きだす。


「……で?」


 あのタイミング―― つまり、わたしが祐麒くんを補しょ―― お持ち帰―― とにかくサボろっか学校―― と迫ろうとしたタイミングで現れたことに対して、何気無さを装い聞く。


「で? とは?」


「わざと遅れたでしょ」


「朝の逢瀬の一時を二人に過ごさせてあげようという、私の優しさと受け取って頂けると有り難いわね」


「まぁ、有り難いけど? アレはやり過ぎじゃあないかしら? そこんところどうよ、お義姉さん」


「ま、私が仕込んで仕向けたんだけどさ。予想外だったのが貴女の恋愛耐性の低さ。恋愛戦闘力たっての3じゃないのよ」


「こ、これから伸びるわよ」


 日向は絶対伸びない、即堕ちのクソ雑魚ヒロインの台詞ね、という。本当に口が悪くなったわね!!

 しかも物陰から覗き見なんて。


「それより、祐麒に手玉に取られただけで獣に変身しないでよね」


「うん、さっきは止めてくれて助かった。あとちょっと遅かったら濃厚な路チューしてしまうところだったわ」


 味見するところだった。


「まあ、唆した私も悪いんだけどさ……」


 少し、日向の横顔に影が差した気がした。


 それは気の所為ではなく、学校に着いても変わらなかった。




 休み時間になって日向とは話さなかった。ちょっと考えたい事があるから一人になりたいと言って教室から出て行って、授業の開始のチャイムがなる寸前に戻ってくる。


「ゴメン! 嫌な態度取ってた」


「え? ううん、それは良い。そんな日もあるわよ。わたしなんて試合が近付くとそんなことしょっちゅうだしさ」


 日向は笑って頷いてくれる。 


「お昼行こ」


 わたしたちは日向が立ち上げた部活が使用している部室に向かう。


 顧問はセナちゃん。セナちゃんには悪いけれど、何せ彼女はわたしのお目付け役だから。何を思い何を考えたか知らないけれど学校はアイスリンクなんて造ってしまった。


 ――何やら建物を造ってると思ったら……くだらない。


 わたしを入部を考えていたみたいだけど、入るわけがない。皮算用でセナちゃんを顧問にしてしまった。


 本当に何を考えたのやら。 


 コーチも学生レベルに毛が生えた元選手が何人か。結果も出そうもない部活の顧問から今の部活に引き抜いた。


 ランチボックスを広げて、わたしたちは互いに持参したサンドイッチやおかずなんかを相手のランチボックスから好き勝手に食べていく。


「これ、最新号の記事読んだ?」


「まだ」


 乙女ゲームなどの情報雑誌の最新号を広げて見る様に薦めてくる。どれどれ、と日向注目の記事が掲載されているページを見る。


 そこには『スターチスの指輪』の新作と書かれており、わたしは今さら? と思った。


 どうせ、機種変えて新しい攻略キャラクター入れて、スチルも新しく、OP,EDを新しくしただけだと思い、驚いた。


「裏っ!? 裏って何?」


「驚いた? 私も読んだ時、奏那と同じだった。驚くよね。だって『悪役令嬢ソーナ・ラピスラズリ・ハーティリアの真実を描く』だもんね」


 そう、日向の言った通り、新作は『スターチスの指輪』で主人公であるヒロインを苛める悪役令嬢だったプレイヤーの嫌われ者を主人公に据えている。


「それはヒロインだったプレイヤーの反感を買うような裏切り行為になるわね」


 悪役令嬢を主人公―― ヒロインに据えて、その真実の姿を描くというのは『スターチスの指輪』の否定なのだから。たとえ、エンディングがぐだぐだでも歌とスチルで見事に感動に繋げた名作だ。その全ストーリーを新作は真っ向から否定するということが、記事の内容から読み取れる。


 さらに制作スタッフもシナリオライターもイラストレーターも違う人になっていて、ソーナの背景、そのシナリオ―― プロローグはすでに台本は完成していて声優まで決まっているということに本気度を感じる。


「んーまぁねぇ、実際、あのお嬢様の周り美男美女が揃って居るのよねぇ」


 普通なら立ち絵すら無いのが敵役の周囲。もし、あったとしても顔なんて無い筈なのに……。


「『スターチス』のスタッフ、続編かファンディスク作る気満々で、絶対要望がある、ファンを釣れる、売れる、儲かるって計算してたのよ絶対」


 実際、売れた。


 『スターチスの指輪』無印を全てノーマルエンド―― 攻略対象の個別ルートに入らないギリギリの好感度を保ち、クリアしなければならないという、ゲームの仕組み上、難しいことをプレイヤーはしなければならない。


 イベントバトルで絆を上げていくという性質上、何処かで下げて調整しなければならず、下がった文化をまた上げて行くというプレイを強いられる上に、自身のステータスも上げなければならないという苦難がある。


 それを怠ると魔モノ討伐イベントで死ぬ、知力、魔力、体力、精神力が低ければ、魔法学の実験や実技で死ぬ、とにかく死にまくるという、ある意味悪役令嬢よりバッドエンドが多い。ノーマルエンドも何かを得て、何かを失うというエンドがバッドエンドの次に多く、トゥルーエンドは各自一種類。

 しかしこの一種類のトゥルーエンドに中々到達出来ないという鬼畜使用。


 ステータスが1足りないだけで到達出来ないのだから。


みんなずっ友(ずっと友達)エンドのデータを引き継ぎ、ファンディスクのソーナの従者だった者を攻略出来るようになる。無印のトゥルーエンドだけを引き継いで遊ぶことも出来る。


 わたしの夢に出てきたサファリスは『ステータスの指輪2 ~海わたる風~』の攻略対象。


 フィギュアの練習でプレイする時間なんて無くなったから『FD』も『2』も買ってない。内容は日向に教えて貰った。


「それらを否定する物語をゲームにするなんて、かなり強気ね……」


「うーん、それなんだけどさぁ」


 日向は否定に不満に思っていない見たいだ。


「まぁ、うん、各自エンドは良かった筈なのよ。ソーナの従者だったキャラクターの背景やシナリオが確り書けていれば……」


 期待したところが期待外れで、即売りが出たと口を尖らす。 


 その所為か『2』の初期売上は伸びなかったという。中古待ちか、プレイ動画を見て新品を求めるプレイヤーが増えていったという経緯がある。


「ソーナだってさ、フォーリアを責める資格あると思うんだ。最初は優しく諭していて、それでも聞かないから注意、警告、非難となって、婚約者に近付いて横恋慕するから中傷になって、最終的に物理的に攻撃するようになったと思うんだよねぇ」


 わたしの奥で日向の言葉が夢の中で見たソーナの哀しみと共鳴して、痛い。


「そう、考えるとさ……ソーナって悲劇の公爵令嬢なのよね……って奏那どうしたの!?」


 歴史でも時代や動乱、民衆、孤独などから悪とされている夫人に令嬢はいる。


「え? あれ?」


 日向の言葉で自分が泣いていることに気が付いた。


「ちょ、ちょっと本当にどうしたのよ」


 日向が慌ててハンカチで止めどなく溢れ流れる涙を拭ってくれて――


「日向?」


 日向の顔が近付いて――

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― 新着の感想 ―
[一言]  面白い展開になってきましたね……そうか、『スターチスの指輪』の裏バージョンか……。  これはオリジナルなのか、将又異世界のトレースなのか……。
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