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吉光里利の化け物殺し 第三話  作者: 由条仁史
最終章 吉光里利です
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 結局、そのあとは化け物が現れるなんてこともなく、私は病室でプレイヤーズの解散を命じたのだった。プレイヤーズのみんなの能力はもう使えなくなっていたし、ルートさんの話によるとマークしていた人たちの能力も消えたそうだ。


 化け物を倒した後のことは、正直、あっけないものだった。すべてが砂の山で、するすると消えてしまうようだった。砂上の楼閣。一炊の夢。そんな感じで、全部なかったかのように崩れていった。


 退院したあとは、私はどうやら普通の性格に戻ったらしく、まあつまりは今までと同じく、しばらくの間ぼっちであった。個性がどうとかいうよりも、不愛想なのは私の責任なのでどうしようもない。


 でも、少しは周りに愛想を振りまけるようになっていた。おかげで友達――とは呼べないかもしれないけれど、それなりのともだちは少しずつできてきた。


 ……ヤンキーグループが私に突っかかってきたこともあったけど、持ち前の舌の力で何とかしてやった。あの子たちには悪いけど、ざまあない。悪いのはあの子たちなんだから。


 ただ、そんな様子を見た友達も、私から一歩、遠ざかったみたいだけど。ちょっとまずいかなと思い、遠ざかったならばこちらから近づけばいいとその子たちにはフォローをしておいた。


 紗那は相変わらず私の親友で、その親愛っぷりで嫉妬の嵐が巻き起こったとか、女子の中でイベントが起こったが、私はそれにため息をつけることで何とかした。いや、なんともなっていなくて噂話は装飾に装飾が付け加えられて私のもとにやってきたのだけれど。


 レズだと言われたときはさすがに否定した。冗談で俺の嫁―だとか言うのは許されるかもしれないけれど、さすがにそれはダメだ。名誉棄損だ。人権侵害だ。


 そんなわけで、私は学校内での地位を少しずつ上げていったのである。


 ……勉強のほうは、平均点付近から徐々に上位方向へ向かって行った。最初から苦手なところなんてなかったのだ。単に、点数を取る意味が感じられなかった……なんて、これこそ不真面目か。あと、右腕のリハビリにかなりの時間がかかった。現代の医療はすごいもので、受験シーズンにはそれなりの調子に戻っていった。私の学校内カーストが上がっていくのと同時に、成績順位も上げていった。


 そのおかげで、三年生の時はみんなから尊敬される存在になってしまった。


 ……どうしてこうなった。


 いや、さすがに化け物に出会う以前のように、出会うものすべてにNOをつきつけていったら、そりゃあ何も起こらないのは知っているけれど。そこから肯定的に物事を見ると言ったって、ほんの少しだぞ? 別に私は特に何もしてない。やらなきゃいけない時にやらなきゃいけないことをやっただけだ。


 ……そう言えば、必ず責任感が高いと言われるのだけれど。


 やることをちゃんとやらない……まあ、私はまだまだそうなんだろうけれど。だれでもやってる、手を抜くとかそういうことをあんまりしないんだと思う。まあ、いいけどさ。やることを全部やってたら、大変だよ。疲れるよ。


 ……とまあ、私は私のなすが儘の人生を選んでいたら、いつの間にか大学の受験を決めなくちゃいけなくなって、つまりは進路の希望を取らなくちゃいけなくなったわけで。


 将来の夢をはっきりと見定めなくてはならなくなった。


 ……まあ、周囲に相談して、何をしたいのか、探してみたのだけれど。


 とりあえず、法学部に入ってみることにした。


 それなりに知名度のある大学に。関西にある大学なので大した距離はない。もちろん、それなりに仕送りはしてもらっているけれど、自分で稼がなきゃいけなくなってくる。アルバイトも始めることにした。


 大学の勉強は高校とは全く違って戸惑うところもあったけれど、すぐに慣れた。周りの子たちからは順応早いと言われたけれど。私は別にそんなことはなかった。


 大学のサークルにも入った。文化系で、地味なものだったけれど、それなりに楽しかった。男の人に告白されて、付き合ってみたり、二股をかけられていたことを知ってらしくもなく泣いて、激怒してみたり。嫉妬されたり三角関係だったり。私からも人を愛してみたり。


 そんな感じで、大学生活は楽しんだ。


 そんでもって、次は就活。まったく、人生なんてものは、次から次へと大変なことが待ち構えている。化け物とどちらが大変だっただろうか。……いや、化け物のほうが大変だった。あれは命がかかわってくる。


 そう考えると、就活なんて命のやり取りのない、簡単なもので……そんなに簡単じゃなかったけれど。


 まあ、なんだかんだあって――

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