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吉光里利の化け物殺し 第三話  作者: 由条仁史
第3章 戦場へ帰る
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「……ただいま」


 鍵が開きっぱなしになっている我が家に入る。大家さん、不審には思わなかったのか……まあ、わざわざ見に来たりはしないだろうけれど。そもそも一日しか家を空けていないのだ。そのくらい普通か。働いている人は。強盗とかそんな人に入られているかもしれないとは考えたが、そんなことはなかったらしい。テーブルの上のケータイがそのままになっていた。本当に誰も入っていないようだ。

 ……やっぱり、こっちのほうが安心する。いつものように、座椅子に座る。少し空気が湿っている気はするが……いや、これが私の家か。


「とりあえず……疲れたな……」


 家出をして、口から出てきた感想はそれだった。まさかこれほどまでに疲れるとは思ってもみなかった……まあ、充実はしていたんだけれど。

 とりあえず……向こうでやるべきことはすべてやった。あの人が死んでいたのは意外だったけれど、それはそれでいろいろ動くことができた。神田さんに助けてもらったのは本当に大きかった……というか、この家出で収入が微妙にプラスなんだけど。本当にありがとうございました。この恩はいつか働いて返さないと。こうやって恩とかできていくんだなあ、と思い知る。


「働く、か……」


 とりあえず目先のことを片付けていたけれど、長期的なことも考えなくちゃいけない。化け物のことばかり、ジャックとルートさんに対する言い訳も考えていたが、高校を卒業したあとのことも考えなくてはならない。

 ……それこそ、紗那が言っていたように関東のほうの大学に行き、あのアパートに住むとか。……いや絶対無理。住むにしても神田さんの家に近い場所がいい。懇意にすることになるだろうから。そうなったら、本当に紗那は……離れ離れになるかもしれない。もちろん、ジャックも、ルートさんも。


「それは、仕方ないか……」


 私がどうこうしなくても、いつか別れることははじめから決まっていたことだ。私が化け物に出会おうが出会うまいが、変わらなかった。私の決断は関係ない。


「どうしよっかなぁ……」


 悩むことはたくさんある。こういう悩みを回避するために独りぼっちでいたはずなのに……そうも言ってられない。現実に、社会に、適応していかないと。あの化け物を倒すことも。

 お母さんの二の舞にならないためにも。


 居場所を――見つけないと。

 居場所を、認めてもらえるように努力しないと。

 それが、私にできることで、私のしなきゃいけないこと。


「……とりあえず、明日ルートさんの事務所に行くかな」


 学校には……行っておこう。どうせ、変わらない日々の繰り返しだ。休んでいたから心配されるなんてこともないはず。ジャックとルートさんに対する言い訳をしっかり考えておこう。

 ケータイを開く。

 メールと、電話の着信履歴が、山のように積み重なっていた。

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