神、従えました。
俺は、 自らの重い足を、 現在の拠点となっているヴァイスシティの宿屋へと急がせる。
「主よ、 この街を離れた後は何処に行かれますか?」
――――――神と共に。
「……お前、 仮にも神だろ」
仮も何も正真正銘の神、 ロキなのだが……。
そもそもこいつは魔王軍幹部の1人のハズでは?
「お前、 幹部はどうすんのさ?」
「そんなもの辞めてやりましたよ」
「えぇッ!?」
幹部ってそんなに簡単に辞めたり出来るモンなの!?
情報とか大丈夫なのかよ……。
「そもそも魔王軍幹部って時給安かったんですよ……じゃないとカジノなんて開いてないですし」
「時給なのッ!?」
久しぶりの現実感だな。
まさか、 あの幹部が時給制だったとは。
そうこうしているうちに、 ルルが待つ宿屋へと着いた。
「ただいまぁ」
カードキーをスライドさせるとランプが光り、扉が開く。三日間も無断で帰らなかった訳だが、 ルルは大丈夫だっただろうか。
まぁ、 アイツも相応の歳だろ。
それくらいじゃ――――――
「…………っえぐ……ぅぐっ」
「誰か泣いているようですが? 先日ご一緒されていた獣人種の少女……ですかね?」
――――――号泣でした。
ルルは、 現実でいうリビングの済でで、 膝を抱えて周辺を涙で濡らしていた。
「ル……ルル?」
「……ッ! マスタぁっ〜!?」
「うわっ! 汚ねぇこっちくんな!!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたルルは、 俺に気が付いた途端に、 俺の胸元に頬擦りを交わしてきた。
「離れ……ろっ!」
「にゃっ!」
取り敢えず顔面を剥がし、イスに座らせる。
「3日も何してたんですかっ! すぐ勝負してくるだけって…………うにゃあっ!」
俺のとなりに存在する、 異形の人物に気付き、 驚きの声を上げるルル。
「な、 なんで神が……っ!?」
だよねー。
神だもんね。
「んー……説明はなんか面倒いんで、 コイツの主になった……らしいけど」
半信半疑の顔のルルに、 さらに追い討ちと言わんばかりに、 ロキが自らの袖を捲ると、 禍々しくも赤い文様が広がっていた。
「ホント……なんですね」
「――――主よ、 まずは何処の街へ向かいますか?」
「私の事は無視ですかっ!?」
自分の事を無視された事に対し、 腹を立てているようだった。
「何を言いますやら……僕が認めたのは主のみです」
「うぬぬ……なにぅお〜……」
やめて。
その喧嘩フラグ……。