白銀の翼
「……レイゼール、 か」
真っ白な髪を腰まで伸ばし、 胸の辺りには翼のエンブレムが施されている。
そして、 レイゼールの耳は何処と無く尖っている。
ファンタジー系ではあるあるのハーフエルフとかだろう。
特徴的なのは、 その真っ白な髪に似つかない真っ赤な瞳と、 禍々しく施された『瞬毒牙槍』だ。
「下がれ、 お前達では勝てる相手ではない」
その一言で、 辺りを囲っている他のヴァルキリー達は即座に場を開ける。
ヤバイ。
隊長クラスの奴と闘って勝てる経験値は積んで居ない。
どうやってこの場を避けるべきか……。
「……ゆくぞ」
禍々しい槍を俺の方向へと向け、 体勢を構える。
何も考えずに挑むのは馬鹿がする事だ……しかし何も得策が浮かばない……。
レイゼールは、 そんな俺などお構い無しに駆け出した。
が。
「----待ったァァ!!」
突如建物の屋根から現れたローブの人間は、 俺とレイゼールの間に割り込んできた。
……誰だ。
「何処の誰かは知らないが、 邪魔をしないで頂けるか?」
寸での所で攻撃を止めたレイゼールは、 その美しい顔に怒りを滲ませる。
「まぁまぁ、 そんなに怒るなよ……美しい顔が台無しさ」
そう言って、 パチンと指を鳴らすと、 あろうことかグングニルが徐々に石化し始める。
「……な、に?」
無詠唱……。
魔法を使う際は、 必ず詠唱が必要だとロキは言っていた。
しかし、 目の前の男(?)は何も発していない。
一陣の風によりローブのフードからその顔が顕になる。
赤毛が無造作に跳ねており、顎鬚を生やしている。
顔年齢は推定40といった所だろうか。
「……あ、 貴方は……っ!!?」
ローブのおっさんの正体を知って、 一番最初に反応したのは以外にもロキだった。
「よォ、 おっひさー」
きさくな態度で手をヒラヒラとロキに振るおっさん。
「この勝負、 悪いけどおじさんに譲ってくれないかな?」
「なっ……何を言うておるかっ!!」
レイゼールよりも先に反論したのは勿論、 豚……もとい貴族だ。
「そやつの首を刎ねるまで終わらせぬぞっ!!」
「だまれ」
----一言。
その、 たった一言で、 場が凍る。
「おじさんはねぇ、 気が短いんだ……」
マンガなら、周囲から 正に『ゴゴゴ……』と音が出てそうな程に覇気を出している。
「き、 貴様……一体何者だ!!?」
よくぞ聞いてくれた豚。
「……シヴァ」
また神かい。




