アスガルドにて。
ロキの提案により、 渋々アスガルドへと向かうこととなった訳だが……。
今現在どこの場所にいるか等、 全く不明なので、 どの方向にアスガルドがあるか検討がつかない。
それはつまり、 行かなくても……もとい、 行けないのでは?
……と、 思っていたのだが、 案外そうもいかないらしく。
「アスガルドへの行き方は、 オーディンから直々に戴いた、 このリングがないと行けないのです」
そう言って、 ロキは左手の人差し指にはめてある青い真珠の様なものが嵌ったリングを俺に見せる。
「よーするに……そのリングをロキが持ってるっつーことは……」
「行けます」
「貸せっ! ぶっ壊してやる!!」
「っな!? 」
俺は強引にロキの指からリングを取り外そうと掴みかかるものの……一向に外れる気配なし。
『神と神との贈り物は、 その神のみにしか破壊することも出来んぞ?』
必死の俺を嘲笑うかのように、 宙に浮いたまま尾で口を隠し指摘するニルヴ。
ちくしょう……俺の輝かしいニート生活は何処へ。
……と言えど、 いつまでもゴロゴロだらだらとしていても魔王は倒せない。 ましてや俺を欺いた張本人、 ルルにも仕返しをしてやらねばならない。
「まぁ、 いつまでもやる気のない俺じゃねぇ……やられた分はきっちり借りを返してやる」
ビシッと拳を受け止め、 気合いをいれる。
「それでは……」
俺がやる気になったのを確認し、 ロキは指を鳴らすと、途端に指輪から蒼白い輝が瞬き始める。
どうも、 これがアスガルドへと行くための方法であろう……。
そして、 次第に輝は俺たちを包み込み、 視界を奪う。
……。
…………。
「終わりましたよ、 主」
眩い輝に目を閉じている間にそれは完了していた。
ロキの合図に目を開くと、 徐々にアスガルドが視界に飛び込んでくる。
そこはまるで神秘の都市。
空中て停止している建物、 そして飛び回る無数のドラゴンの上には、 おそらく操縦士らしき人物と少し偉そうに仁王立ちしている人物が多数……貴族だろうと見受けられる。
『ここが噂に名高きアスガルドか……数百年もの間、 この日を夢見てきた』
「……え、 お前歳いくつだよ?」
『800じゃが?』
「とんでもねぇババァじゃねーかよっ!?」
変態ロリは変態ロリババァへとジョブチェンジした。
「竜人種は古来の戦時を生き抜いた種、 その広大な知識は最早 書庫とも言われています」
……そんなことより、だ。
「ロキ、 オーディンは何処にいんだよ」
まぁ、 言わずもがな一際でけぇ建造物に居るであろうことは検討がつくが……。
「どうやら今はこの場を外しているようですね……」
そう言いながらロキが指を指した場所には、 立札があり、 『オーディン、不在』という文字が達筆で書かれてある。
「あのぉ~……」
さてどうしたもんかと試行錯誤中に話しかけて来たのは、 全身を露出度の高い鎧に身を纏った女性だった。
だが1つ、 疑問がある。
「……ねぇ」
「あ、はい?」
「俗に言うビキニアーマーって防御面捨ててるよね」
「……な、何のことですか?」
「いや、 こっちの話。 で、 多分貴女はヴァルキリーかな?」
女戦士と言ったらヴァルキリーしかいないだろう。
「は、 はい! 未だに見習い騎士ですが……見かけないお方だったので……」
「僕の名はロキです」
ロキが挨拶がてらの自己紹介をした途端、 見習いヴァルキリーちゃんは鎧をカタカタと鳴らしながら震え始めた。
「こ、 ここここれはとんだご無礼を……っ!?」
「え、 お前なんかしたの?」
「仮にも神ですよ」
そうだった。
いや、 仮にもとか自分で言っちゃってるけど……あんたれっきとした神だろ?
「そ、 それでは……貴方も……?」
あろう事かそのヴァルキリーは俺を指しながら問うてきた。
「いや、 一般ピーポー」
「…………はっ」
なんやこのヴァルキリー。
一般人とわかった途端の態度の変わりよう……めちゃくちゃ見下した目に代わりやがったぞこいつ。
『おい、 人の子よ。 おぬしは誰の主人に向かってそのような態度をとっておる?』
ヴァルキリーの粗相を見逃さなかったのは以外にもニルヴだった。
……いや、 誰が主人だ。
しかしこの際気分がいいのでそのままにしておこう。
「そういう貴女は何者ですか?」
「こいつ、 竜人種っつー種らしいぞ」
「…………(ガクガク)」
はっはー、 ビビってやがるぜ。
「さて、 お遊びはここまでにして……取り敢えずオーディンの屋敷に連れてってくれや」
「誰が貴方なんかに」
ヴァルキリーの態度に、 ロキが空かさず割って入る。
「……お願いします、 僕達はオーディンに会う必要があるのです」
「はいっ!」
おいこら、 そろそろぶん殴ってやろうか?




