キカサルとの抗戦
周辺は既に瓦礫と化しているこの街……。
最早原形を留めておらず、 住民は1人も見当たらない。
「……どうしますか、 主」
目の前には、 ぎゃはぎゃはと騒ぐ狂戦士が暴れ狂っている。
「あのバケモンをどーしろと?」
こちとら17年間人間で通ってるんだよ。
秘められた力なんぞなく、 ステータスは貧弱。 唯一の戦闘手段は二対の刃。
しかし、 あちらは拳で鋼を殴ろうがびくともしない。
異世界転移させたヤツ、 せめて特典。
『う~む……彼奴は人か?』
竜人種のニルヴでさえ、 圧巻といったご様子。
「さぁさぁさァ、 まだ勝負は終わってねぇだろーっ!」
「まぁまぁ、 そう叫ぶな少女……」
こうなったら、 人員を増やすことが最優先されるだろう。 1対4となるが、 現状勝ち目がないのでそこは許して欲しい。
かの歴代の勇者だって魔王一人に対して4、5人でボコ殴りに言ってるんだからいいだろう。
「ロキ、 ルルを起こして呼ぼう」
「……実は、 先程から呼びかけてはいるのですが……全く反応がないのです」
「あいつぅ……っ!?」
『我も色々と試してはいるのだが、 同じくじゃな。 変わった様子はない』
「人員だぁ? まだ仲間が嫌がるのか……ほむ、 めんどうだなぁ」
おや?
戦意喪失か?
「まとめてかかってこいよー」
ですよねー。
「主、 ここは一度引き下がるのが得策かと……」
「------誰がさせっかよ」
一瞬にして間合いを詰めてくるキカサル。
その拳の威力は最早弾丸。
「『シールド』っ!」
空かさずロキがバリアを貼ってくれたので、 無傷で済んではいるが……。
「……そう長くは持たないでしょう」
「おらおらおらおらぁっ!」
バリアを貼られているのにも関わらず、 拳を下げることも無く乱打する。
しかもひとつひとつが重く、 直で受けていればタダでは済まないだろう。
「竜の子よ、 あの獣を起こしてはくれまいか」
『がってんしょうち』
むむむむむぅ~……と唸りをあげながら、 顳顬をぐるぐるするニルヴ。
「……何してんの?」
『今から獣娘に電撃を流す』
なんと。
このロリっ子はそんなこともできるのか。
『但し、 その痛みは我も同様に喰らう』
「ハイリスクだな」
すると再びむむむと唸る。
『たあぁっ!!』
「ふにぁうっ!!?」
恐らく電撃を送ったのだろうと思われる合図の後に、 瓦礫の影から声があげられる。
その声は間違いなくルルだ。
「ルル、 良かった。 もう来てたのか……早速----」
……おかしい。
ニルヴ達は『寝ている』と判断し、 幾度となくテレパシーやらを送ったと言っていた。
しかし起きた気配はない、 とも。
なのに何故、 そこにいる。
何故、 キカサルの後方の瓦礫の影にいる?
その疑問は、 キカサルの声に寄って解かれた。
「姉さん、 いたんスネ!」
ほぅ、 詳しく。




